15、ナン・スダレ・キンの村に向かう途中にて…。
ナンは村に向かって走っている。
スダレに頼まれたけど、まぁスダレが行くより早く到着するし…スダレ体力無いからな~。
それに、スダレは最初キンに頼もうとしてたけど、キンだとカノンちゃんのことが上手く伝わらない気がする…特に問題になりそうなあの恰好とか。
あとは長老に伝えた後の処理とか…あの中では私が適任かな?
と、っと、っと、到着っと。
「長老いますか~?」
「おぉ、ナンよ無事に戻って来たか、してスダレとキンは無事かのぅ?ダークネスウルフはどうなったかの?」
忌み子の村は初代村長が狐人であったこともあり、人柄に問題がなければ狐人が代々村長をしている。
「スダレもキンも生きてるよ、それにダークネスウルフならお家に帰ったよ。」
「無事か…ダークネスウルフがお家に帰ったとは?退散したのではなく?…まぁよい、ダークネスウルフが来ないなら避難中止を伝えねばのぅ。」
「それでね村長、ダークネスウルフから私たちを助けてくれた子がいるだよ。」
「なんと⁉ダークネスウルフからわしらを助けてくれる者がいようとは…して、どの一族だ?人数は?礼をせねばなるまいからのぅ。」
長老はナンに食い気味に尋ねる。
忌み子として長年忌避され続けていたのに救いの手を差し伸べた者がいる、それだけで長老には衝撃であり、嬉しくもあった。
「ちょ、ちょっと!長老!落ち着いて!」
「おぉ、すまん、正直わしらを助けてくれる者がいようとは思いもしなかったのでのぅ。」
「…まぁ…そうだね……先ずは助けてくれたのはカノンちゃんっていう人族なの。」
「人族が⁉本当に人族なのか?人族がわしらを助ける…しかもダークネスウルフから…信じられんのだがのぅ…。」
「だよね~、人族が森に来るってことは、大体が獣人族や魔物を捕獲しに来る時だもんね…。」
「して、そのカノンちゃんとやらはどうしたのじゃ?」
「あ、うん、キンがねカノンちゃんをお持ち帰りしたいって言い出して、村に来てもらうようになったよ。」
「キンが…あのキンがそのカノンちゃんとやらを村に誘ったのか?」
「そうだよ、キンが誘ったんだよ。」
「そうか…キンがのぅ……ならば問題無いかのぅ?キンは抜けておるが勘が鋭い、何か感じ取ったやもしれぬな…抜けておるが…の。」
「あはは、カノンちゃんは良い子だよ、私もスダレもキンの提案に即了承したからね。」
「おぬしらがいうなら問題無かろう、問題無いとは思うがのぅ…念の為、村に滞在する間は3人のうち誰かカノンちゃんとやらと行動を共にするようにして欲しい。」
「了解、スダレは分かんないけど、私とキンはそれで問題無いと思う。
キンがカノンちゃんから離れない可能性があるくらいだもん。」
「そんなに気に入ったのか?キンは」
「うん、キンを知ってる私たちもビックリするぐらい。」
「そうか…なら、避難中止と合わせてカノンちゃんとやらのことも皆に伝えねばのぅ。」
「それでお願いし…あっ、肝心なことを伝えるの忘れるところだった!私もキンのこと言えないね…。」
「して、肝心なこととは何かのぅ?」
「そのカノンちゃんなんだけどね…恰好がその…猫人族の…い、忌み子の恰好を模した服を着てるんだよ。
その恰好でこの村に来たら問題が起こるだろうから私が先に戻ってきたんだけど…危うく忘れるところだったよ。」
「猫人族の忌み子の恰好とはのぅ……しかし、おぬしらを助けてくれたということは、村を助けてくれた恩人ということになるしのぅ…よし、キルトはおるか?」
「ハッ。」
キルトと呼ばれた猫人族の青年がまるで忍者のようにシュタッと姿を現す。
「キルト、話は聞いておったか?」
「はい。」
「ならば話が速いのぅ、何名かで村の皆に避難中止とカノンちゃんとやらの件を至急伝えてくれ。
特に猫人族にはカノンちゃんとやらのことを念入りにのぅ。」
「了解しました。猫人族の方は私が伝えましょう。」
「そうじゃの、それがよいかのぅ、頼んだぞ。」
「ハッ!」という言葉と共にキルトの姿は消えた。
「猫人族の忌み子の恰好か…人族がそのような恰好を好んでするとは興味があるのぅ、早く会ってみたいものじゃて。」
「カノンちゃん可愛いよ、それにダークネスウルフと会話できるみたい、ダークネスウルフの名前がガルドラっていうらしんだけど…内容をまとめると私たち嵌められたかもって話になって…。」
「ダークネスウルフと会話じゃと⁉しかも嵌められた可能性があるとは…もっと早く言わぬか!!ゴホッ…ゴホ…。」
「大丈夫村長?はい水。」
「ゴホッ…すまんのぅ、ングッ…ゴクッ…はぁ~、誰の所為だと…詳しいく話してくれ。」
「ほーい、私が戦闘中に気を失ってから目覚めるまでの話はまだ聞いてないからスダレに聞いてね、私が目覚めたら……。」
ナンは長老に目覚めてから村に戻るまでの話をした。
一方その頃のスダレ。
キンを先頭に花音、少し後ろにスダレという順で村に向かっていた。
スダレは前を歩く花音のお尻を見ながら…
(お尻ではないのじゃ、尻尾を見てるだけなのじゃ)
…スダレは前を歩く花音の尻尾を見ながら、
所々破れたりしておるが、よくできた衣装なのじゃ…遠目から見れば猫人族の忌み子としか見えんのじゃ。
特に尻尾、普通は獣人族に尻尾がないのじゃからここまで再現するのは無理じゃと思うのじゃが…
人族の中で生活しておる忌み子でもおるのじゃろうか?
聞いてみたいのじゃが…う~む。
行動、言動を見る限り悪い娘ではないと思うのじゃが…もうしばらく様子見じゃな。
スダレは花音のお尻…尻尾を見ながら村へ向かう。
一方のキン。
「♪~♪~♪~。」
楽しそうに鼻歌を歌いながら花音たちの先頭を歩く。
楽しみっすね~、わくわくするっすね~。
キンは初めて花音を見たときのことを思い出す。
な、何っすかこの子?つ、強いっすね、圧倒的っすね…それ以上に面白い?面白いっすね♪
キンは初めて花音を見たときに直感で強さを感じ取った、いつものキンならば警戒をするところだが、それ以上に花音と一緒に居れば何か面白いことが起こると勘が囁いたのである。
キンは村の皆が認めるほど抜けているといわれるが、それ以上にキン自身とキンの勘をみんな信頼している、キンは勘で村の危機を何度か救っている、
今回のダークネスウルフ襲来もキンの勘で死者なし、無事全員が退却できた。
集団戦闘はタイミングが大事である…特に退却は…。
こちらが優勢なら多少タイミングが悪くてもそれ程問題ではないのだが、こちらが不利な状況である中での退却はタイミングを間違えると悲惨である。
これから何が起こるんっすかね?時空魔法にダークネスウルフとのお話、それだけでもすごくて面白いっす、なのに私の勘がまだ面白いこと起こるといってるっすよ~♪
楽しみっすね~♪、わくわくするっすね~♪
「♪~♪~♪~。」
キンは楽しそうに尻尾を揺らしながら村に向かって歩いて行く。
スダレの話が短いですね、心境的には色々と話したいけど…どう接すればいいの?という感じですかね?




