14、ガルドラお家に帰る。
ガルドラは花音たちと別れて家に向かう。
ガルドラは花音たちが認識できなくなるぐらいの距離を走ってスピードを落とし、周囲に他の気配がいないのを確認てからその場で倒れる。
グッ…な、なんとかもったか…痛い、痛いぞー!
ガルドラは如何に花音と獣人族の忌み子たちに悪意がないとはいえ、他者に自分が弱っている姿を見せることは出来ない…弱った者から殺られるのが当たり前の世界で生きてきたから。
しかしカノン殿は…忌み子たちと戦闘中で不意を突かれたとはいえ、あの一撃は…クッ…、その後の様子から本気ではなかったのであろうが…本気であったなら我は死んでいたであろうな……
タイラントボアはただ花音にぶつかっただけでお亡くなりになったのだ、途中でスピードを落としたとしても、スピードがのった花音の体当たりで死ななかったのは幸運だったのか、不運だったのか。
我、がんばった、頑張った…カノン殿は泣くし、自己紹介なるものは脱線していくし、やっと離れられると思ったら呼び止められる…肉を分けて貰えたのは有り難いが…
しばし休むか、正直今の状態で襲われても何もできん。
無事に帰り着ければよいのだが…。
ガルドラは休む体制をとる。
・
しばらくお待ちください。
・
クゥ〜ン
・
ガルル
・
グルルゥ~
・
ガルドラが休息に入って4時間ほど経過した。
クゥアーーーン、ある程度休めたか…む?…これは⁉
痛みがかなり引いておる、カノン殿は回復のメダルといっておったが…これほどの効力があるものだったのか⁉
これなら無事に戻れそうだ、有り難い、有り難いが……ラニアには…。
ラニアというのはガルドラの妻の名前で、ガルドラは襲撃者を追う前に見たラニアの姿を思い浮かべ落ち込む。
ナビちゃんの推測はある意味正解で、ある意味外れていた。
ラニアは子供たちを逃がすため最後まで襲撃者たちと戦った結果、右前足と右耳の半分を尻尾も1/3を失っていた。
しかし、ここまで回復するのなら早くラニアに渡してやらねばな。
ガルドラは急いで家まで戻る。
しばらく走るとガルドラの家…住処にしている洞穴が見えてくる。
洞穴の入り口に着くと…
「おとーちゃんおかーり。」「お父さん、お帰りなさい。」
「おとうさん、おかえりー。」
「うむ、今帰ったぞ、でラニアは奥か?」
「うん、お母さんは傷が酷いから奥で休んでる…。」
「そうか…。」
ガルドラは奥に向かって歩き出す、子供達も一緒に奥に向かう、ガルドラの咥えた肉を見ながら。
「土産だ、先に食べてなさい。」
「わ~い♪おにく♪」「にきゅ~♪」
ガルドラはラニアの傍へ行く。
「あ…なた……」
「喋らなくて良い、ラニアよこれを首にかけるのだ。」
ガルドラは自分の首にかけてあるメダルを地面に置きラニアの方に差し出す。
「これ…は?」
「うむ、これは回復のメダルだそうだ、回復が早くなるみたいだぞ?これをつけて休みなさい、話は後でしよう。」
ガルドラはラニアの首にメダルをかけるのを手伝って、娘達の方へ向かう。
「肉は美味いか?」
「おいち~」「おいしいよ。」
「美味しいけど、これどうしたの?いつもの苦いところも臭いところもないよ?」
「カノン殿たちが解体して、肉の部分を分けてくれたのだ。」
「カノン殿たち?」
「話はラニアが回復してからだな、我も疲れたから休む、我はともかくラニアの分の肉は残しておくのだぞ。」
「分かりました。」「あ~い」「はーい」
娘達の返事を聞いてガルドラは休む。
ガルドラが休息をとって13時間ほど経過した。
「あなた…あなた……、あなた達お父さんを起してあげなさい。」
「あ~い」「はーい」「はい」
3人の中で一番体が大きい娘が、
「お父さん、起きてください。」
とガルドラの顔をペチペチと叩く。
2番目に大きな娘と1番小さな娘が、
「おとうさん、おきろー」「おっきー」
とガルドラの背中へダイブする。
「ぐはっ!な、なにごとだ⁉」
「おとうさんおきたー」「おきたー」
「あなた、おはようございます、聞きたいことがあるんです。」
「なんだ?ラニ…ア……⁉⁉」
ガルドラはラニアの方に視線をやって状況がつかめずに硬直することしばらく……
「ラ、ラニア!み、み、耳がもと、元にもどっておるだと⁉」
「えぇ、あなたがくれたメダルというものを着けて休んでる間に…尻尾もほとんど元にもどってます、それに足も…。」
「む、足も治ろうとしておるな、しかし…これは…気持ち悪いな。あっ、いや、すまぬラニアよ。」
「いえ、私も気持ち悪いです、これは…。」
「気持ち悪いね。」「きもちわるー。」「きもー」
その場にいる全員が同じ感想でした。
「しかしこれは…カノン殿にどのような礼をしたものか…。」
「そう、それです!そのカノン殿とは何者なんですか!こんなすごい物をあなたに渡すなんて。」
「む?いや、カノン殿はその場でそのメダルを作っておったぞ、故に我もここまで凄い物とは思いもしなかった。」
「え?…その場で?」
「うむ、その場で作っておったな。」
「「・・・・・・・」」
「ま、先ずはカノン殿のことだったな、カノン殿は強いな本気で攻撃されたら我はおそらく一撃であの世行だな。」
「あなたが一撃…ですか。」
「うむ、そして猫人族の忌み子の恰好をした人族で、我の言葉を解しておった。」
「人族が私達の言葉を理解したのですか⁉」
「カノン殿がいなければ最悪…我はここに戻ることはできなかったであろうな。」
「どういうことですか?」
「何処から話せばよいか…。
襲撃者を追っておったら、獣人族の忌み子と戦闘になってな、最初は10人程で我が蹴散らしておったのだが、その者たちを逃がすために3人が残ったのだ。
2人を倒し最後の1人となったところで、カノン殿が現れて戦闘が中断されたが…強かったぞ、仮に3人を倒したとしても我は逃げた者を追ったであろうから…3人より強い者が1・2人がおった場合、正直どうなっておったか分からん。」
「はぁ~…カノン殿とやらには感謝ですね。」
「そうだな、カノン殿が間に入らねば我と忌み子たちとでどちらかが死ぬまで戦っておっただろうからな。」
「あなた、あまり心配させないでください。」
「う、うむ、すまんな、それでカノン殿が間に入ることで忌み子たちと会話が出来たのだが…どうも嵌められたようなのだ。」
「嵌められた…ですか?」
「我と忌み子たちを戦わせようとした節があるのだ、どちらが標的だったのかまでは分からぬがな。」
「私たちの方が標的だった場合、娘たちが危険ですね。」
「うむ、注意せねばなるまい、そ、それとな…相談したいことがあるのだラニアよ。」
「なんですか?改まって。」
「ラニアのことでカノン殿に礼をせねばならんと思うのだが…何か良い案はないか?」
「そうですね……娘の1人を従魔にしてもらったら良いのではないですか?」
「む、従魔か…しかし…」
「狙われたのが私たちの場合、娘たちも危険です。けど、カノン殿がそこまで強いなら逆に守ってもらえる可能性もありますから…あなたより強いならここより安全かもしれません。」
「そう、そうだな、娘たちに話してから決めよう…3人共は…さすがに我が嫌だぞ。」
「そうですね…3人ともいなくなったら私も寂しいですね…。
まぁ、ある程度誰が従魔になるか話し合って、あとは実際にカノン殿を見てから決めればいいでしょう。
私もお礼を言いたいですし、娘たちも1回は会っておかないと…危険でしょうから…。」
「全員で行くのか?」
「はい、カノン殿を知っているのはあなただけですし、それに知らずに人族だからとこちらが襲って、もしカノン殿だったら…こちらが死ぬことになりそうですから、一度会って匂いを覚えておかないとダメでしょ?」
「そうだな、それは危険だな、ラニアが回復したら全員で行ってみるか。」
ガルドラさん一家のお話しでした。




