134、ごちそうさま。結構大事な言葉ですよ?
「あふはハルばふぁんと…んっぐ…会うんっすね…。」
キンはケイヴラットの串焼きを食べながら話す。
「そうですね、何回か話題に出て来ましたけど、どんな人…っていうのは会ってからのお楽しみでしたね。」
「そうっすよ、シナ婆さんが楽しみにしてるっすからね。」
「あれはどっちも驚くことを楽しみにしてるんだろうね…。」
「某はハルサメ様を見たことが無いのですが…。」
「ヨギリんはハル婆さん見たことなかったんっすね。」
「ハルサメさんって、私達が子供の頃にはどっかに家を移しちゃったからね。」
「そういえば、スダレたんがハル婆さんが居なくなったって泣いてたっすね。」
「私が来た時には村には居なかったんですね。」
「そうだね、森の中に家はあると思うんだけど…私もハルサメさんが村を出てから見たことないんだよね…。」
「狐人、それもシグレさんとスダレたんしか場所は知らないっす。」
「スダレは教えてくれないもんね、シナ婆さんはさすがに知ってると思うんだけど…。」
「シナ婆さんとハルサメさんってどんな関係なんですか?」
「さぁ?自分も良く知らないっす、友達で師弟?って感じっすかね?」
「友達で師弟ですか?」
「カノンちゃんとヨギリん…とはちょっと違うね、カノンちゃんとキンみたいな感じかな?」
「ああ、自分はカノンちゃんの孫弟子っすからね♪」
「あぁ…どっちが師匠か分かりませんけど、どちらも師弟とは思ってないってことですね。」
「そんな感じ。」
「それは某には該当しないですね、キンが妥当です。」
「なんか酷いっすね、あっ、ギルさんこれいつもの臭いがないっすね♪腕上げたっすか?」
「あん?キンは何様なんだ?と言いたいが…それは俺じゃない、おそらくお嬢ちゃんの血抜きってやつのお陰だな。」
「なんだカノンちゃんのお陰っすか…。」
「だからお前は何様なんだ?つってんだ。」
ギルの言葉に少し不快感がある。
「え~っと…。」
「あははは♪気にしなくていいよ、いつもの事だからね、キンは素直にギルさんに美味しいって言えないからあんな言い方で、ギルさんは…照れ隠しみたいな感じかな?」
「「ナン!」」
「あ~納得しました。」
「そんなことがここでは繰り広げられてたんですね…。」
「ん?ヨギリは…というより猿人族自体が滅多にここに顔出さないからな。」
「…そうですね。」
「でもな…昨日の模擬戦の影響か、今日の昼に何人か来た奴らが居たんだぞ?」
「そうなんですか⁉」
「まあ3人だけだがな…。」
「3人でも珍しいっすね。」
「だよね。」
「ああ、狩りが出来ないときならいざ知らず、普通に来たのは今日が初めてだな。」
「そうですね…。」
「きっと昨日の模擬戦の影響で狩りに行けなかったんっすよ♪」
「そういえば今日はお休みって言ってましたね。」
「ちょ、キン!」
「お休み?なにを…。」
「ギルさん!」
「な、何だ?急に大きな声出して。」
「きっと昨日の宴の料理が美味しかったからここに来てみただけっすよ♪」
「そうかもしれんが、それを言ったらダメだろキン。」
キンはにこにこと軽口を言い、ギルは呆れた感じではあるが目が優しい。
「あ~…。」
「どうしたんですか?お師さん。」
「いや…何でもないです。」
「ん?カノンちゃんは何か気になったことでもあったの?」
「いえ、何でもないですよ。」
「何っすか?ギルさんの料理が不味かったっすか?」
「おいキン!つっても何かあるんなら言ってくれ。」
「いえ、料理は別に関係ないですよ?」
「そうなのか?」
「はい、ただキンたんはギルさんに甘えてるんだな~って思っただけです。そしてギルさんはキンたんを大事にしてるんだな~っと。」
「ちょ、ちょ、ちょ、カノンちゃん!冗談はやめるっすよ!」
「あははは、さすがカノンちゃん♪良く気が付いたね、私も気付くのに何年もかかったのに。」
「似た感じの子が居ましたからね、何を言っても、何をやっても受け入れてくれる、逆の場合も…気の置けない関係ってやつですよ♪」
「気が置けないって逆じゃないの?なんか警戒してる感じに聞こえるんだけど?」
「いえ、そっちの方が私の国では間違いなんですけど…ここではどうなんですか?」
「どうなんだろ?そんな言い方しないよね?」
「そうですね、聞いたことないです。」
「そうですか、まあ…キンたんとギルさんの関係って思ったらいいですよ♪」
「「ああ…。」」
「それで納得しないで欲しいっす!」
「はぁ…お前ら飯食い終わったんならさっさと帰れ。」
ギルの言葉は少し大きめになる。
「ぁ…はい、ごちそうさまでした、美味しかったです。」
「そうか?ただ切って焼いて串に刺しただけだぞ?まあ、一応素直に受け取っとく、また来い。」
「はい♪」
「「「ごちそうさまでした。」」」
花音たち4人はギルの店を後にする。
「ごちそうさまでした…か、お嬢ちゃんが来るまで飯食う前と後に誰も何も言ってなかったんだがな…ごちそうさまって言われるのはなんか悪い気分じゃないな…。」
「それじゃあナンのん、今日はありがとうございました。」
「ううん、私も楽しかったし、ありがとね♪でも私だけここでお別れって、なんか寂しいね…いっそ私も花音ちゃんの家に住み込んじゃおうかな?」
「ナンも来るっすか♪」
「私は別に…いや、ダメですね。」
「そっか…。」
「何でっすか⁉」
「私は別に構わないんですよ?」
「それなら何でダメって言ったんっすか?」
「ナンのんまで私の家に住み込んだらスダレたんが…。」
「「ああ…。」」
「それで2人とも納得するんですね…。」
「それならしょうがないね、私も明日は師匠と修行と例の受付もしなきゃだから…今日は家に帰るよ。それじゃあまたね♪」
「はい、お休みなさい。」
「え?あ、うん。お休み~♪」
「あ、お休みなさい。」
「お休みっすナン。」
それぞれが手を振ってナンと分かれ、花音の家に到着する。
「私はスライミーさんの分体の様子を見て来ますから、先に戻っててください。」
「それなら某はスズさん達の様子を見てから戻ります。」
「それなら自分もヨギリんに付き合うっす。」
「そうですか、それなら家に戻ったら寝てても良いですからね。」
「今日は一緒に寝ないんっすか?」
「今日からは各自、自分の部屋で寝てくださいね。」
「え~。」
「じ・ぶ・ん・の部屋で寝てくださいね!」
「りょ、了解っす。」
キンの言葉を聞いて花音はお風呂場へ、ヨギリとキンはスズたちの小屋へ向かう。
花音は脱衣所に入り、頭の上が指定席になりつつあるスリーピーに確認する。
「お風呂の水はどうですか?」
「大丈夫…浄化…終わってる。」
「そうですか、あとは…微生物とか魔物の血とか…食べたりしますか?」
「食べれる…でも…。」
「でも?」
「問題…ないなら…そのままで。」
「私の方で保管してた方が良いですか?」
「そっ。」
「何でです?」
「今後の…為。」
「今後?」
「他のスライム…分体、増やす…とか。」
「え~っと…他のスライムを従魔にしたときに分体を作るのに取って置けと?」
「そっ…違う。」
「はぃ??他のスライムは私が他のスライムを従魔にしたときで合ってますか?」
「そっ。」
「それで違うって言うのは…分体を増やすですか…。」
「そっ。」
「分体を増やす…スライミーさんの分体を増やしたかったらスライミーさんに頼めば良いだけだし…。」
「本体、呼ぶ…好ましく、ない。」
「スライミーさんを召喚するのは良くないですか?」
「そっ、周囲、大変。」
「あ~、そういう…それで分体ってことは…微生物や魔物の血でスリーピーさんは分体を増やせる…とか?」
「そっ…でも…量、必要。」
「成程分かりました。特に邪魔じゃないですから、そのまま取って置きます。」
「うん♪」
花音はお風呂場の扉を開け浴槽の水を確認しようとするが…。
「暗くて確認出来ませんね…確認は明日にしましょうか。分体さん達は明日の朝までここで待機しててくださいね、お休みなさい。」
と分体に挨拶して脱衣所から家に繋がる扉を開けて自分の家に戻る。
花音には暗くて良く確認できていなかったが、分体は了解とプルプル震えて答える。
そう、花音にはお風呂場の様子が暗くて良く見えてなかった…。
キンとヨギリはスズたちの様子を確認して、キンはヨギリの荷物をヨギリの部屋に置いてから大人しく自分の部屋に戻って就寝する。
ヨギリも自分が思ってたよりもダンジョン探索で疲労していたのか、キンから荷物を受け取ったら整理する間もなくベットに倒れるように眠りに就く。
ということで、いただきます・ごちそうさまは結構大事です。
食材への感謝とかたくさんの人が走り回って出来た料理にとか色々と意味はありますが、
取り敢えずは料理を作ってくれた人には感謝しましょうね?
言う相手が居なくなった時に、あっ…って思うんです…たぶん(´・ω・`)




