114、アラクネとお話。お話………出来てません。
「ご、ごめんね~、怒ってないから、怒ってないからね~、大丈夫だからね~。」
年齢はアラクネの方が全然上ではあるのだが、見た目は10歳の女の子である、さすがの花音も10歳の女の子に泣きながら謝られれば慌てて言葉を和らげる。
花音があやそうとアラクネに近づけば、
「ヒッ!ひっく、ごべん、ぎょめんにゃさいでしゅ。」
とビックッとされ謝られる。
周囲に居るシナ婆さんやキンはタマを庇う形で警戒を解いてない。
ギルルドやゴルク、ナンがキンの方に視線を向ければ、キンはただ頭を横に振るだけである。
「バカ弟子は未だに警戒しておるか…儂でもアラクネを相手にするのは危ういからの…。」
「そうなんですか⁉」
「そうだぞ、俺は問題ないが俺より弱いギルルドじゃぁな。」
「誰がお前より弱いんじゃ!お前も1人では勝てんじゃろうが!」
「俺は1人でも十分だ!」
「ギルルドさんもゴルクさんもこの状況で言い合いしないでよ~。」
「それなら儂は片腕で十分じゃ!」
「そんなら俺は指1っ本で十分だ!」
「はぁ~、言い合いしてたらカノンちゃんにまた怒られちゃうよ?」
「うぐ…。」「ぉ、おぅ…。」
「あはは…カノンちゃんって言うだけでこの2人が大人しくなるんだね~………私も拝んどこうかな?」
そう言ったナンは拝まないでください!という花音の幻聴を聞いた気がした…。
「ぐす、ひっく………。」
「落ち着いてきましたか?」
アラクネに花音が近づくと恐慌状態になるので離れた位置から話しかける。
「はひ、すいませ、ブーーーッ!」
アラクネの口から霧のように何かが噴出される。
これなんだろ?
(毒霧ですね、神経毒ですね…。)
毒か~ってみんなは⁉
花音は慌ててみんなの方に振り向くが、全員が風上に避難していた。
「良かった~、残念ですが猫さんを着ている私には毒は効きません。さて…おいたする子にはお仕置きですね♪」
「ヒッ!」
「最近便利なスタン軟剣のビリビリをプレゼントします♪」
花音は収納から取り出したスタン軟剣をアラクネにぴっととくっ付ける。
「あばばばば…ごごめめ…。」
「あれ?効かない?」
「じょじょどっど…。」
「う~ん…キンた~ん!」
「何っすか~!」
「この子の手足を縛って動けなくしてもらってもいいですか~?!」
「別に良いっすけど!たぶん直ぐに切られるっすよ~!」
「強化しま~す!」
「了解~っす!」
目の前で大声でそんなやり取りをされても、ず~っと電撃で痺れさせられてる為に逃げようにも逃げられない。
失敗したです、弱そうだったから攻撃したです、けど…失敗したです、うちはここで死んでしまうんです、ぐすん…。
「カノンちゃん、これダメっす。」
「ダメですか?」
「ちょっと触れたらビッリっと来たっす。」
「………分かりましたキンたんはスタン軟剣の方をお願いします。」
「それ、大丈夫っすか?」
「大丈夫ですよ、特に専用にもしてませんし、ただ刃の部分には触れないように気を付けてください。」
「刃……っすか?」
キンはスタン軟剣の刃……布の部分を見ながら疑問に思う。
「刃です!軟剣ですから!剣ですから刃の部分です!」
「りょ、了解っす。」
「それとスタン軟剣を離すと電撃が途絶えますから、くっ付けたままにしてくださいね。」
「了解っす。」
キンがスタン軟剣を捕縛は花音が担当することとなった。
ロープの痕が残るのも可哀想だから、布を噛ませるかな?
花音はアラクネの手を後ろで縛って後ろ脚と連動させて後ろ足も縛る。
次の残った足を一纏めにして縛り上げる。
「完成~♪あとは、さっきみたいに毒が心配だから猿ぐつわを…それしたら喋れなくなるね…どうしようかな~。」
「毒はたぶん大丈夫っすよ。」
「何で大丈夫だと思うんですか?」
「だって、逃げられない状態で毒で自分たちを殺したら、あとはカノンちゃんか他の魔物とかに殺されるのを待つだけになるっすからね。」
「ん~それなら…大丈夫なんですかね?」
「聞いてみるっす、毒は使わないっすよね?」
キンに問われてアラクネは痺れながらも全力で頷く。
「分かりました、キンたんがそう言うならたぶん大丈夫なんでしょ…それじゃあ、スタン軟剣を離しても良いですよ。」
「了解っす。」
キンはスタン軟剣をアラクネから離して花音に返してから直ぐに退避する。
「さて…お話しできますか?」
アラクネは頭を横に振って否定する。
「それは…痺れてるからですか?」
今度はコクコクと頷く。
「それなら話せるようになったら教えてください、それまで待ってますから。」
花音はそう言ってみんなの方へ移動する。
「あ、逃げようとしたら次は足が無くなるかもしれませんよ。」
⁉嫌ー!何ですあの娘?恐いです!
「またえらいモン呼び出したな。」
「え?でもゴルクさんは指1本で倒せるんでしょ?」
「ぐっ…聞こえてやがったのか…。」
「儂は片腕では勝てません、すいませんでした。」
「あ、コラ汚ねぇぞ!」
「最初に儂は1人では勝てんと言ったであろうが!それをお前は、俺は問題ないとかぬかしおるから!」
「はいはい、2人共言い合いしない!カノンちゃんが…。」
「おう。」「うむ。」
「あはは、やっぱり拝んどこうかな?」
「拝まないでください!」
「あはは…。」
「それであのアラクネも従魔にするのかニャ?」
「話してみてからですかね?嫌なら無理に従魔になってもらうのも…。」
「アラクネってどのくらいの強さなんっすか?自分1人で勝てないって言うのは分かるんっすけど…。」
「だよね~、私アラクネなんて初めて見たもん。」
「そうなんですか?」
「この辺りには居ないニャね、アガルト大陸とルーニア大陸には居るニャよ、他の大陸にも居るかも知れニャいがニャわーは聞いたことも見たこともニャいニャ。」
「アガルト大陸、ルーニア大陸では見たことあるんですか?」
「アガルト大陸は居ると聞いたことがあるだけニャ、ルーニア大陸では見たことがあるニャ。」
「俺もルーニア大陸で見たことがあんな、さすがに若かったから見かけた瞬間に逃げたがな…それから強くなったつもりだったんだがなぁ………まだ1人じゃ勝てねぇな。」
「儂もルーニア大陸じゃな、まあ…こいつと同じ感じじゃったな…。」
「それならあの子もルーニア大陸なんですかね?」
「そこまでは分からニャいニャ、召喚でそんなに遠くの魔物を召喚できるニャんて聞いたことがニャいニャ…でもカノちゃんだからニャ~可能性はありそうで怖いニャ…。」
「娘っ子ならやりそうだがな♪ガハハハッ。」
「カノンちゃんっすからね♪」
「そうですにゃ、カノンちゃんですからにゃ♪」
「だね~。」
「何ですかその変な信頼は!」
「あははは、それでどれぐらいの強さなの?」
「そうだニャ…強さで言えば、ガルドラさんと言うのと同じぐらいニャ、ただ強さの方向が違うがニャ。」
「強さの方向っすか?」
「ガルドラというかサナトスダークウルフは速さ、力それに魔法も使えるからニャ、あれは1体で数百もの人や魔物と戦えるニャよ。」
「そうなんっすか⁉それなら自分たちは手加減されてたっすか……?」
「戦いを見てニャいからニャ…そこまではわーには分からニャいニャよ、10日後ぐらいに来るんニャら本人に聞けばいいニャ。」
「それもそうっすね。」
「アラクネはサナトスダークウルフとは違ってニャ、捕獲やさっきの毒ニャどの殲滅よりも捕獲に特化した魔物ニャ、それでも1体で百程度なら戦える強さは持ってるはずニャ。」
「そうなんだ~…それを簡単に倒すカノンちゃんって、何千、何万でも相手に出来そうだね♪」
「そうっすね♪」「拝んどきますにゃ♪」
「そんなに沢山相手に……出来るかも?それと拝まないで!」
「カノちゃんなら出来ると思うんだがニャ。」
「そうだな、娘っ子ならいける!」
「カノン殿なら大丈夫じゃろ。」
「だから何でそんな変な方向に信頼されてるんですか!例え可能だったとしても私は嫌ですよ!」
「何で…なんとなく分かるっすけど…。」
「そうなのキン?」
「ん~カノンちゃんは…………面倒なんっすよね?」
「そうなの⁉」
「そうですよ!そんな大勢なんてただ面倒なだけじゃないですか!」
「まあ…そうっすね、自分も出来たとしても遠慮したいっすね。」
「ああ~確かに。」
「それにで「あの~、あ・のー!」ん?喋れるようになりましたか?」
「……はい。」
「それではお話しましょうか♪」
「お・は・な・し…です……分かりましたです…ガクブル。」
「そんなに怖がらないでくださいよ、大人しくしててくれればお話だけで何もしませんから…たぶん。」
「たぶんです⁉」
「はっはっは、何もしませんよ、しませんよ?」
「疑問形です⁉ガクガクブルブル。」
「ちょっと遊び過ぎました…本当に私からはお話だけで何もしませんから。」
「ほ、本当です?」
「はい♪本当です。」
「信じ…信じりゃれましぇんでしゅ!」
「しょぼ~ん…虐め過ぎました……でもいきなりそっちが攻撃して来るからいけないんですよ!」
「ぐ…それは…そうなんですけど………分かりましたです、お話お願いしますです。」
召喚編は次で終了かな?




