112、従魔。私の従魔にな~れ♪………はい、オッケーです。
キョロキョロと周囲を確認しているガルドラに花音は申し訳なさそうに説明する。
「ごめんなさい、召喚を使ってみたんですけど、召喚の際のイメージがこんがらがってガルドラさんを召喚しちゃったみたいです。」
「カノン殿は召喚も使えるのか…それで何の為に召喚をしたのだ?」
「ヴァフトンスライムというスライムを召喚して従魔にしようと思ってまして…それで召喚しようとしたんですけど、何故かガルドラさんが召喚されてしまいました、すいません。」
「いや…従魔か……運が良かったと言うべきか?」
「運が良かったですか?」
「うむ、良ければ我と従魔契約をして欲しいのだが。」
「ガルドラさんが良ければ、私の方は構いませんけど…何でですか?」
「うむ、カノン殿は既に従魔を従えておるのか?」
「いいえ、まだです。」
「尚のこと都合が良い、従魔は主となる者と我らとの間で契約によってなされるが、従魔たちの中では従魔になった順番が序列になる場合もあるからな。」
「序列って…私は別に序列なんて考えてませんよ?」
「む?…序列は従魔の中で勝手に決めたりするからな、順番だったり強さだったり寵愛だったりとな、それ故に主が知らない場合もある。」
「そうなんですか…それで何で従魔にして欲しいと言い出したんですか?」
「その前に礼を言っておこう、カノン殿から頂いた回復のメダルでラニア、我が妻も無事に回復しておる、感謝する。」
「無事に回復してるんですね良かったです♪」
「ただな…無くなった足が少しずつ回復する様はちょっと気持ち悪、い、いや!何でもない!感謝しておる!」
「あ~足…無くなってたんですか…。」
「う、うむ。それで後10日程で回復すると思う、回復すれば我が家族全員でお礼をという話をしておってな…。」
「別にお礼は必要ないですよ。」
「いや、こちらの…恩義のあるカノン殿には正直に話しておこう……こちらの都合でもある。」
「ガルドラさん達の都合ですか?」
「そうだ、カノン殿は強い、知らずに襲えばこちらが返り討ちになるだろうから、カノン殿を見て確認しておくことと、忌み子か我々を狙っておる者も居るようだからな、娘をカノン殿の従魔にしてもらえば…その…守ってもらえるのではと……思った訳だ。」
「成程……それで最初は娘さんの予定だったのに何でガルドラさんが従魔になるって言い出したんですか?」
「さっき説明した序列だ、我が最初の従魔になっておけば、娘たちが後で従魔になったとしても序列という柵が少なくて済むからな。」
「そうなんですか…分かりました、それじゃあ従魔契約をしましょう。」
「すまん助かる。」
それでナビちゃん、従魔契約ってどうすればいいの?
(花音様がガルドラ様に従魔になりますか?と尋ねられてガルドラ様が了承した後に、花音様の魔力をガルドラ様に流せばそれで従魔契約は完了です。)
魔力を流すの?
(はい、魔力を流します。)
え~っと、大丈夫かな?
(……心配でしたら、花音様の魔力が宿った物でも大丈夫です。)
私の魔力が宿った物?
(創造錬金で作成された物には花音様の魔力が宿ってますから、それで大丈夫です。)
あれ全部私の魔力が宿ってるの⁉
(そうです。)
うっわ~…何だろちょっと恥ずかしくなってきた…。
(恥ずかしい…ですか?)
いや、うん、まぁ…ううん、気にしないでいいよ、ありがとう。
花音はナビちゃんから説明を受けて、収納から木を出して創造錬金で腕輪を作り出す。
「準備が出来ました。」
「その輪は何だ?」
「魔力を流すのにまだ自信がないから、代わりに私の魔力が宿った物をといことになりました。」
「自信がない?…ということになりました?」
「気にしないでください、魔力の制御がまだ上手くないから直接魔力を流すと何が起こるか分からないですからね…。」
「そ、そこまでなのか?…うむ、分かった。」
「それでは始めます、ガルドラさんは私の従魔になってくれますか?」
「うむ、我、ガルドラはカノン殿の従魔となり主の力になることをここに誓おう。」
「それではこの腕…足輪?を着けてください。」
「うむ。」
ガルドラは右前足を花音の方へ差し出す、カノンはさっき作った腕輪を差し出された前足に通すと腕輪は自動的にガルドラの足に合うように縮んで丁度良い大きさになる。
それと同時に花音とガルドラの体が淡い光に包まれて契約が完了する。
「これで終わりですかね?」
「うむ…。」
『カノン殿』
「え?ガルドラさんの声が頭に直接聞こえるんですけど⁉」
「無事に契約は出来たようだな。」
「今のは?」
「念話というやつだ、主と従魔、それと従魔間で交信ができる。」
「これはまた便利な能力ですね。」
「突然我が消えて娘たちも心配しておるだろうから、我は戻るとする。」
「すいませんでした、それとありがとうございました。」
「カノン殿はもう我の主なのだから、そのように畏まられると我の方が困ってしまう。」
「そうですね、それでは…。」
ナビちゃん。
(何でしょうか?)
召喚出来たんだから帰還も出来るの?
(帰還というか送還ですね、出来ます。)
どうやればいいの?
(帰っていいよ~で出来ますよ。)
何か適当だね…その後の召喚は最初と同じでいいの?
(従魔契約してますから、名前だけでも召喚出来ます。)
そっか、ありがと♪
「それではガルドラさんを送り返しますね。」
「頼む。10日以降に改めて礼に訪ねさせてもらおうと思う、その時は念話で報告する。」
「分かりました、送還!」
花音の送還の言葉でガルドラの足元に魔法陣が現れてガルドラはその場から消える。
「ガルドラ召喚!」
花音の言葉に魔法陣が現れガルドラが現れる。
「つは………カノン殿。」
ガルドラは呆れたような声で花音の名を呟く。
「すいません、ちょっとした確認でして…直ぐに送還します。あっ♪それとついでにこれ持って帰ってください。」
花音は収納からワイバーンの尻尾を1つ取り出しガルドラに渡す。
「これは?」
「ワイバーンの尻尾です。」
「ワイバーンというと…ああ…あの飛んでる奴か、あれはなかなか狩れないからな、感謝する我が主殿♪」
「急に呼び出したお詫びだと思ってください、それじゃあ行きます…送還!」
再びガルドラの足元に魔法陣が現れてガルドラはその場から消える。
魔法陣が現れて身構えたキンたちは現れたのがダークネスウルフに驚く。
「娘っ子はヴァフトンスライムを呼び出すんじゃなかったのか⁉」
「あれ、ガルドラさんっすね。」
「みたいだね。」
「ガルドラさんですかにゃ?」
「ほら、前に村に向かって来たダークネスウルフだよ。」
「にゃ⁉にゃーが直ぐにやられてしまった奴ですかにゃ⁉」
「…ありゃぁ、確かに俺1人じゃ無理だな。」
「そうじゃな、わしも無理だろうな…。」
「だから言ったんっすよ、師匠とゴルク爺の2人でどうにかって。」
「…そうじゃな。」「ああ、確かに…。」
「あれ……ダークネスウルフじゃニャいニャね、見た目はそっくりだがニャ別物ニャ。」
「そうなんっすか⁉」
「あ~確か自己紹介の時に…ガルドラさんは狼である!って言ってたけど…。」
「ギルルドにゴルク、わーで戦っても勝てるかどうか…あれはサナトスダークウルフニャ!」
「………何だそりゃ?」
「ダークネスウルフの上位種ニャよ、わーが旅をしてた頃に街を滅ぼしたとか、領主の軍隊を全滅させたとか噂になってた魔物と同じニャ。」
「それは物騒っすけど…。」
「あの姿を見たらね~。」
「…そうですにゃ。」
「た、確かに……お座りして、尻尾をぶんぶん振ってるニャね。」
「そうじゃな…それで何で違うと分かったんじゃ?」
「それは俺も気になるな、見た目は普通のダークネスウルフと区別がつかねぇぞ?」
「ぱっと見たら分からニャいがニャ、耳の先端の色が黒じゃニャくて赤黒くニャってるニャよ。」
シナ婆さんに言われて全員がガルドラの耳を確認する。
「確かに…少し色が違う…っすかね?」
「言われないと気付かないよ、あれは…。」
「わーも直ぐには気付かなかったニャ、それほど分かり難いから普通のダークネスウルフと思って戦った者たちは死んで逝くのニャ。」
「そうだな、普通のダークネスウルフより強いってぐらいは分かんだが…それにしても本当に会話できるんだな…。」
「そうっす!カノンちゃんは凄いんっすよ♪」
「キンがまたドヤ顔してる。」
「拝んどきますかにゃ?」
「そうしたいがニャ、カノちゃんが近くに居るからニャ、今は我慢ニャよ。」
「分かりましたにゃ。」
「あっ、カノンちゃんが何か取り出したよ?」
「大きな輪っかになりましたにゃ…。」
「光ってるっすね。」
「あれと従魔契約を結んだみたいだニャ…カノちゃんは本当にわーの考えの斜め上を行くのが好きだニャ。」
「送還したようじゃな…。」
「ってまた召喚しったっすよ⁉」
「今度は…ワイバーンの尻尾を取り出したね。」
「カノンちゃんがワイバーンの尻尾を渡して…尻尾が千切れそうな勢いで振られてますにゃ…。」
「消えたな………今度こそ終わったみてぇだな。」
一方、ガルドラファミリー
ガルドラが突然消えたと報告を受けるラニア。
「何を言ってるんですか?」
「本当に急に消えたんだよ!」
「きえたー!」「えたー!」
ラニアは娘たちに言われてガルドラが消えた場所まで如何にか辿り着く。
「クンクン………本当みたいですね、臭いが忽然と消えてます…いったい……。」
ラニアが試案し出して直ぐにガルドラが送還されて現れる。
「あなた⁉」
「すまん、実…。」
ガルドラが喋ってる途中で、ガルドラは花音によって再び召喚される。
「き、消えた⁉」
「また消えた!」「きえたー♪」「えたー♪」
ラニアと長女は驚き、次女と末娘は今回はガルドラが消えたことを楽しそうに飛び跳ねて喜んでいる。
しばらくするとガルドラがさっき現れた場所に再びワイバーンの尻尾を咥えたガルドラが現れる。
「あ、あなた⁉」
「お父さん⁉」
「ごはんー♪」「めしー♪」
「ああ…何を聞きたいかよく分かる、分かるが………取り敢えず飯にしよう。」
「そ、そうですね…。」
「はい…。」
「ごっはっん♪ごっはん♪ごはーん!」
「めっし♪めし♪めしー!」
ガルドラさんが従魔になった♪
ということで…魔力を流さない、創造錬金で作った物を…スライムはどうすれば…(。´・ω・)?




