少々残念な人でした。
「母様、兄様はまだですか?」
「ついさっきも言ったじゃない、もう少しよ」
私と母様は屋敷の広間で兄様を待っているところです。
広間と言ってもダンスホールのようなものではなくて、家族が揃って食事をする時やちょっとした客人をもてなす時に使われるようなところです。ダンスホールは別にあります。お金持ちしゅごい。
「お?2人とも早いな」
「あら、あなた。公務は終えれたのかしら?」
「あぁ、何せ息子の帰省だからな。急いで終わらせたさ」
扉が開き、兄様かと思い振り返ったところ父様でした。仕事をさっさと終わらせて一緒に出迎えに来たようで。
「ふふっ。あなた、ルークが“なぁーんだ、父様か”って顔してますよ?」
「なにっ?!」
「そ、そんなことは……」
急に振らないで!ほら、視線逸らしちゃったから父様がなんか落ち込んじゃってますよ!
「息子よ……、誤魔化すなら目を逸らしてはいかんよ……」
「ふふふっ」
母様が楽しそうだし、ばあやもニコニコしてるし、平和だなぁってことでいっか。
しばらく母様と父様と私の3人で(たまにばあやも)日頃のことについて話していると、屋敷の外から馬車の音が聞こえてきた。
「母様!兄様が帰ってきました?」
「ええ、恐らくそうね!外までお迎えに行きましょう!」
「はい!父様も!」
「ああ、もちろんだ。」
親子3人で屋敷の玄関まで行く。
すると、こちらが扉を開く前に向こうから勢いよく開かれた。
「アーノルド、ただ今戻りました!!私の可愛い弟はどこです?!」
そこには父様そっくりな青年がいました。しかし言動がなにやら残念な感じが……
「おかえりなさい、アル。母様との約束、たったの5年程度で忘れちゃったのかしら?」
どんな約束なんでしょう??これまでの行動に関するものですかね?それより、母様、笑顔なのにものすごく怖いです。見たことないくらい怒っているようです……
「は、母上っ!ちゃんと覚えております!」
「あら、じゃあどんな約束だったかしら?」
「扉は思いっきり開かない!です!」
「でもおかしいわねぇ、今、思いっきり扉が開いたように見えたのですが……気の所為ですかね?」
兄様、そんな約束させられるってことは相当酷かったんでしょうね……。それより父様、先程から兄様がチラチラと視線を送ってますが。
あ、知らぬ顔ですか。父様も怒った母様は怖いのですね。仕方ありませんここは私が……。
「兄様!はじめまして、ルークスです!!」
「ん?おお!これはこれは!天使がここにっ!!」
兄様は私を抱き上げ頬をスリスリしてくる。
「はぁ……。ルークに免じて今日は許しますが……アル、次はありませんよ?」
「は、はいっ!」
「さ、さて!広間へ移動して昼食でもとろうか!アルもまだだろう?」
父様は逃げたくて仕方がないみたいな雰囲気だ。自分から助けに行ってなんだが、私も逃げたい。
「兄様、母様、行きましょ?みんなでご飯です!」
「ええ、そうね。きっとコック達も料理を作って待ってるわね」
「そうだな!初めての一家揃っての食事だな」
そう言いながらみんなで広間へ移動する。
あの、兄様?抱えていただかなくても歩けますよ?え?自分が抱えたいだけだからいいって?いやいや、私が恥ずかしいからやめてくださいよ!
私は兄様に抱えられたまま広間へ移動し、兄様の席の隣に降ろされた。私は普段ならば母様の横に座っている。
「私が滞在している間はめいいっぱいルークの近くにいるぞ!よろしいですよね?!母上、父上!」
「今まで会えてなかったですからね……。私はいいですよ?」
「俺も構わないぞ。」
なんとなくですが分かりました。兄様はブラコンですね。きっとそうです!やはり残念なイケメンだったのですね……
それと、私の意思は無視でしょうか?
兄様、瞳の色は遺伝ではないらしいですが一緒だからって運命ではないですよ?捜せば同じ色くらい居ますからね?
いや、「私と同じキレイな深紫だ!」って同じはいいですが覗き込まれると視界が……。小声で運命とか言いながらほは染めないでくださいよ。身内にやられると鳥肌が……
もうこの兄イヤだ……
次の投稿は2日後になりますm(*_ _)m