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二人の夢




 夢。


 そんな一言で、少し頭がピン、となった。



「わたし、戦で兄を失って。目の前で、剣で、こう、貫かれて……。それ以来、剣なんて大嫌いになったんです。世の中にはびこるのが剣じゃなくて、こう、魔法の杖になればいいのになって……そしたらみんな怯えずに暮らせるのになって」


 なかなかに重たい設定が語られる中、ツルギは、なんとかこう切り返した。


「そ、そうなら、みんなが怯えずに暮らすことが夢で、剣を破壊すること、っていうのは、手段に過ぎないんじゃないのか」




 何マジメに返してんだ、とツルギは自分の中で突っ込みを入れたが、彼女の顔はハッとしたように明るくなった。



「そう、、ですよね!そうですよね!」



 彼女は立ち上がった。


「ありがとうございます!そしてすみませんでした!」



 立つや否や、深々、頭を下げた。



「お、お、おう」


 すぐに彼女は、ペタンと座る。



「あなたの……えっと、お名前は」



「ツルギだ。あと、かしこまらなくていいよ。タメ語で」


「タメ語……?」


「ああ。ですます、とか付けないってこと」



「はい……ツルギさん」


「それもツルギ、でいいぜ」


「はい。じゃあ、ツルギ」





 彼女が聞く。



「あなたの夢、聞いてもいい?」



「オレの夢?」




「ああ、オレの夢は世界最強の剣士になることだ、この剣でな」




 そうして剣を高々掲げ、見えを切る。




「それが夢……なんですね」




 本気だった。自分なら、世界最強の剣士になれる。



 そう、思っていた。



「俺は最強の剣士になるんだ」



 ツルギはもう一度言って、剣を高々と掲げた。



 


 それは剣ではなかった。



 正確に言うと、剣先がペンだった。




 そして刃の部分も、ペンの外郭だ。



 だからさっき斬った賊も、みんな死んでいはいない。




 その様子を見て。



 金髪の彼女が嬉しそうに微笑んでいるのを、ツルギは気づいていない。



 



「素敵な夢だね!」



 ツルギはそう言われ、はっとして彼女を見た。



 彼女はもうどこかに視線を移していた。


 彼女の言葉にちょっとドキッとしたのは、事実だ。



 



 そういえば、と、ツルギは彼女に聞いた。



「そうだ、そういえば君の名は……」



「わたし、ですか」




 すると。



 辺りの視界が猛烈に輝いた。



 輝き、消えていく。





 まばゆい光とともに。



「わたしは………………ラフィ…………カ…………」




 彼女は、ゆっくりと、消えていった。



 この世界とともに。



























 ツルギはそこで、目が覚めた。



 自分はどこかの掘っ建て小屋の中。それは昨日と変わらない。



 もろに不法侵入なので、誰か入ってくる前に出ていかないといけない。



 ツルギは剣を……正確には剣の形したペンなのだが、ツルギがそれを剣だと思ってる得物を握り、起き上がる。




 ふとツルギの胸に。ある感情が込み上げた。




 それは、3話もかけて引っ張ってきた話が夢オチで読者をガッカリさせたかもしれないということへの申し訳なさではない。



 ……。









 彼女の名は。


 ラフィカ。



 確かにそう言った。






 ラフィカともう少し。



 話がしたかった。


 もう少し、一緒にいたかったんだ。 










~~~~~~~~~





ツルギはペンを持って、小屋を出る。




今日は実は、ツルギの運命を決める大事な日なのだ。




とある剣術道場。




翔火尊塾しょうかそんじゅく



毎年、この国一の剣術学院・アルバトロスへ必ず全員を合格させるという、凄まじい道場である。



全員を合格させるとあって、道場に入れるのもわずか少数だ。




それでもツルギは向かう。



今日、翔火尊塾へ。



道場破りをしに。



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