彼らの関係
ラフィカ……。
金髪の背中が見える。
自分が昏睡状態にあって、ここが多分夢の中であるというのは想像できる。
だから、彼女に会える。
そのことが、この夢の中での何よりの幸せだ。
ラフィカ……。
彼女は気づいているのか?
あの金髪の背中にもう少しで。
手が、届きそうだ。
~~◇~~◇~~
ここで眼が覚めた。
え、もう終わり?
ウソだろ?
ツルギは信じられない面持ちで、目をぱちくりさせる。
あんだけ大変な死闘を経て、ラフィカに会えないのか。
うわ……。
ちょい落ち込む。
気まぐれな展開をする夢である。
落ち込んでいると、ドカドカドカッ!と、ツルギの寝てる部屋に人が入り込んできた。
翔火尊塾の面々だ。
ほぼ全員。一人を除いて。
「おいこら道場破……新入りィィィィ!」
胸ぐら掴まん勢いで迫ってくるのは、イヴァンだ。
「てんめえ、ブレンを倒したって?一体どうやってだ、まさかインチキしたんじゃねえだろうなァァァァ!」
ななななな!?
寝起きにこの揺さぶりは結構きつい。
「はいはい落ち着くですッ!」
「んぎゃあッ!」
ゴッツンッッ!!
「がああああああ痛い!」
「ご愁傷様……」
……何が起こってるのか説明すると、興奮してるイヴァンをレトナが剣でカンチョーして、悶絶したイヴァンの額がツルギの額にぶつかって、まだ全然けがの治ってないツルギは当然死ぬほどの痛みに襲われ、それを見てジェスがご愁傷さまと呟いてる感じであった。
「ほら、行くぞ!」
「どこに?」
「あ、てめ、本気で言ってんのかああああああ!」
イヴァンが怒鳴る。
いや、一体何のことかツルギは皆目見当つかない。
むしろ目の前のイヴァンを見ていくら何でも短気すぎてキャラの味付けがお腹いっぱい過ぎると冷静に見られるくらいには、何のコトだかわからない。
構わずイヴァンは喚く。
「稽古だよ稽古!てめー師範に入門を認められたんだろ!」
入門……?
「ほら、凄いケガしてるのはわかるんですけど、時間を過ぎたら師範が怒ります!早く仕度を~!」
そんな感じで、まだ痛む体をレトナに引っ張られる。
……あれ?
ツルギは、思う。
もし稽古に送れる、と思えば、わざわざツルギを起こしに来ないでも、勝手に行けばよいのではないか。
ロゴスもツルギの容態は知ってるから、稽古に来るよう無理強いはしないだろうし。
つまり、このおせっかいは。
「おいコラ、はやくしろよ!」
イヴァンが急かす。
「もう剣術学院への試験まで、時間ないですから~!」
レトナが手を引く。
ジェスもいる。
そうか。
ツルギは異世界転移してきて初めて。
そこに何か、繋がりのようなものを感じた。
部屋を出たとき。
「そうだ、ブレンは!」
仲間たちはすでに、先へ向かっていて聞こえていなかった。
気づいた。
昨夜の戦いの時、無我夢中で、彼がどうなったかなんてわからなかった。
もしかして。彼は。
「ここにいる」
背後から、短いつぶやき。
でも声でわかる、明らかに彼は。
ブレンだ。
「……君だけは、必ず倒す。覚悟していてくれ」
眼の色が、殺気を帯びていた。
紅色の眼光が、そんな風に鋭くツルギをさしていた。
ツルギが振り向く。
そこにブレンはいなかった。
同門にして、最強のライバル。
ツルギは今、最大の敵を背後に抱えることになった。