ツルギvsブレン②
雷撃の鎧。
正しくそう形容するしかない。
蒼い稲妻が、ブレンの体表を奔っている。
それは剣から生み出されるのか、それともブレンの内から生み出されるのか。
そんなことはどうでもいいが、ブレンも決めに来る気だ。
こちらも。
いや、それ以上に。
ツルギは、次の攻撃に、賭けていた。
俺の刃圏魔術で、必ず決める。
そう念じると、不思議と、ツルギの体を、紅い粒子が覆った。
ペンと剣。
蒼い稲妻と、何に変わるかわからぬ紅色の粒子。
二つの力が、野原の風を変える。
「「……行くぞ……」」
どちらからともなく、そう、口にした。
状況が動いた。
ツルギもブレンも、ほぼ同時に動き出したはずだ。
蒼い稲妻の群れと紅い粒子の塊が激突……。
することは、無かった。
蒼い稲妻の方は問題なかったのだが、紅い粒子の方が、
いきなり、爆発した。
自爆。
失敗。
そう形容するしかない。
ツルギは、自分の魔力のコントロールに、明らかに失敗した。
刹那の時間で、ブレンの思考はそれでもはっきりと動いていた。
彼は今、稲妻の装甲の中にいる。
電気が常に体を奔っている状態なので、思考の速度もこの刹那を動く体の加速度に追いついていた。
そんな異常ともいえるような加速度の中で、ブレンが思うことはただ一つ。
この程度か。あっけなかったな。
もちろん、目の前のツルギの、魔力のコントロールの失敗に関して、そう思った。
まあ良い。
僕が彼に負けるはずはない。
それは信じて疑っていない。
だからブレンが見たかったのは、大師匠・剣聖ダルキオが振るっていたという伝説の剣、聖剣筆の秘めたる力だった。
が、やはり使い手が問題か。
荷電により熱くなる体とは完全に別に、頭は状況に対して冴えるように冷めていた。
やはり彼に……ツルギと、言ったっけか。
素人程度の実力しかない彼に、伝説の剣を意のままに操るよう求めるなんて、荷が重すぎたか。
仕方ない。
あの剣の真価は、自分自身の手で確かめるしかない、ということか。
目の前では、黒い煙がもうもうと立ち込めている。
自爆同然の攻撃の結果だった。
ブレンが剣を振る。
終わりだ……!
彼には、剣をふりながら、聖剣筆を手に入れたその先の未来しか考えていなかった。
つまりこの勝負に、もう集中などしていなかった。
電閃が、黒い煙を払った。
払ったというより吹き飛ばすような剣閃が、中にいたツルギを斬り捨てたはずであった。
しかし。
剣を振るこの動作は一瞬であるにせよ、そこに僅かでも感じる手ごたえがなかった。
何だ……?
焦燥に駆られる。