夢、現(うつつ)
金髪。蒼い瞳。美しく可憐な顔。
隣にいる。
「ラフィカ……」
「ツルギ!」
ラフィカとツルギ。
どこかの原っぱ。
また二人だけの空間だ。
現のような夢。はたまた、夢のような現か。
「良かった、……あのさ、正直、俺、君はずっといないんだって、なんか俺の頭の中の理想ってだけなんじゃないかって……」
ツルギはもはや上面の羞恥など捨てて、ずっと感じていた、不安にも似た疑念を吐露した。
「ツルギ、おもしろいね!わたしちゃんとここにいるじゃない!ずっといないって……理想の、存在って……」
しまった、とここにきて羞恥がツルギを襲う。
「あ、あ、ええっと、さっき言ったことは忘れてくれー!うん、だよな、ここが本当の世界で……アレ……?合ってるよなあ……」
なんだか混乱してきた。
そもそもツルギは、現代日本からこの異世界へ転移してきたのだ。
そこからさらにこの世界だ。
どこかの原っぱのような場所に、ラフィカと二人。
なんだか頭がおかしくなりそうになっても、不思議ではない。
「ツルギ」
ラフィカが、ツルギの名を呼ぶ。
「だいじょうぶ?」
微笑みながら、問うてきた。
なんか、これが本当の世界かどうかなんてどうでもよくなってきた。
今、目の前にいる彼女は、圧倒的な臨場感を持っている。
それで良い。
「おう!」
ツルギは力強く答えた。
「なんか、元気ないように見えたか?」
「うん、さっきもちょっと、心配した!」
さっき……イヴァンとの戦闘の直後か。
ん、さっき……。
そこに、ラフィカの腕が伸びた。
「大丈夫。わたし、ここにいるから」
にこっ、と、彼女はツルギのそばで微笑んだ。
そのまま世界がまた眩く光り輝いて、
視界が全て黄金に満たされて、何も見えなくなった。
辺りは夜だった。
ツルギは、夜の原っぱに寝転がっていた。
もちろん一人。
ラフィカはいない。
そうだ。
俺は、お腹が空いて、飯を求めて外を彷徨っていたんだ。
寝ていた部屋に食べ物はなかったので、ツルギは僅かな路銀を胸に抱いて外に出てきたのだった。
ググーッ。
お腹の音が、夜の原っぱに響き渡る。
だめだ、飢え死にする。
ツルギは体に残る最後の力を振り絞り、立ち上がる。
街はどこだ。そこでまずは飯を食うんだ。
銀貨は……いや、銅貨1枚しか持ってなかった。
これじゃ……、飯……。
バタリ。
飯を求めて動けば動くほど体力を消耗し、力尽きるという顛末。
ぐはっ。
そこに、
ひょいっと、何かがツルギの頭の近くに転がった。
パンだ。
「ほら、これを食え」
目の前に現れた金髪の男。腰に剣を下げ立つ姿は、穏やかだが並々ならぬ自信を滾らせているとわかる。
ロゴスだ。
「腹が減ってるんだろう」
「あ……ああ。ありがと」
「部屋を見てもいないから、みんなで探していたぞ」
すまねえ、と呟きつつ、ツルギはパンを頬張った。
「お前に、一つ話がある」
ロゴスはツルギに言った。