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君に会うために俺は幾千の剣林を駆け巡る





 剣が奔り、鉄火が舞う。



 遠目から一瞬見るだけなら、無数の剣戟が生じる合戦の最中かと錯覚するが、実際は、一本の矢の如く奔る剣閃が、有象無象の剣林を薙ぎ払うだけであった。



 キズ持ち、頭巾をかぶる、眼帯は当たり前なならず者集団が、たった一人に次々打倒されていく。

 筆望ふでもちツルギは、その流れの中心にいて、前へ前へと突き進む。

 


 



 女の子に絡んでいる連中を見かけた。


 

 連中が強引な迫り方だったため、ツルギは声をかけ辞めさせようとした。


 すると逆にこちらに刃を向けてきた。この異世界のならず者を相手にすればお約束の展開だ。



 速攻で数人倒すと、討ち洩らした一人が仲間を呼んで、気づけば敵が雪だるま式に増えていた。

 



 しかし敵が増えれば増えるほど。



 ツルギの剣速は倍加していく。


 


 ツルギの意に沿って動く剣の軌道が、また一つ弧を描くたびに、彼の周りに雑草が如く茂る白刃を一つ、また一つ倒していく。



 しまいに、彼に刃を向ける者はいなくなった。


 全員地に伏したからだ。





 

 筆望ツルギは、別に特別な経歴や特別を持つ人物ではない。


 ただ猫を助けようとしてトラックに轢かれて異世界転生し、なんやかんやあって救けてもらった人に一振りの剣を譲り受け、そこから意のままに操る努力を積んでいつの間にか剣士になった以外は普通の高校生だった。



 それが今、お約束のように敵を倒し、お約束通りに綺麗に救って見せた。




 そして救った女の子は、お約束以上にかわいかった。




 敵をすべて倒し、前を見れば、さっき絡まれていた女の子がいた。




 目を見張るような金髪、ぱっちりと見開かれた大きな瞳は深緑に染まり、鼻筋はきれいに整っていた。



 ……かわいすぎる。



 行為の善悪は置いておくとして、ならず者たちが執拗に絡む理由も分かった気がした。



 「あ、あの……」


 女の子が、胸の前に小さく手を結び、何か言いたげにするも言葉にできなさそうな雰囲気を出す。



 まだおびえているのだろう。それはそうだ、ならず者たちに絡まれて、次に斬り合いが始まったのだから。



 だから、ツルギは彼女の不安を消し飛ばすように、つとめて明るく言った。



「ああ、大丈夫、大丈夫!」



「え……」



「もう大丈夫だから!」



「本当ですか??」



「おう!もちろん!」



 話していくうちに、彼女の瞳が少しづつ明るく開いていくのが分かった。



 良かった。

 賊を退治したこと以上に、彼女の不安を除けて良かった。


 ツルギは心からそう思えた。



「それじゃあ……」



 そう言ったのは彼女だった。

 突如、彼女の背後に、


 魔法陣が浮かび上がった。




 赤、青、緑、黄色、虹を描くように光るそれらは、膨大な魔力を滾らせている。



「その剣、壊しますッッ!!」



 な?と口を半開きにしたツルギは状況に一歩取り残され、



 ――――そして、空に浮かぶ魔法陣から、光弾が放たれた。


初回投稿から少し変えています。

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