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2.5 母と娘の帰り道(旧 拍手小話)


「なんだか、雰囲気のある素敵なお家だったわねぇ」


 絢子さんの家からの帰り道。お母さんがほう、と吐いたため息はときめき色に染まっていた。


「遥から 『絵本みたいなお家』って言われた時はピンとこなかったけれど。本当だったわね」

「だから言ったじゃない」

「やっぱり見ると聞くとじゃ違うのよ」


 あの絨毯が、フロアライトが、などどいうお母さんは実は家具とか部屋のコーディネートとかが大好きで。社宅のアパートにいた時は学校から帰るとリビングが大々的に模様替えされてたりとかもよくあった……コツがあるのよって軽く言うけれど、あの重量級のサイドボードを一人で動かしちゃうのとか結構ありえないと思うんだけど。


「本棚も素敵だったわ。いいわね、リビングの本棚……そうだ、あの本棚をこっちに持って来て……」


 あ、スイッチ入った。一戸建てに引っ越してからは治まったと思っていたんだけどな。


「お母さん、わたし今のリビングが気に入ってるよ。お母さんがすっごく考えて置き場決めたじゃない」

「そうだけど。でも、よくない?」


 お母さん、大事なことを忘れているよ。


「絢子さんのお家の本棚が素敵なのは、背表紙が英語の立派な厚い本がたくさん並んでるからだよ。家に無いでしょう、そんなの」

「う」

「厚い本ってお兄ちゃんとわたしの辞書くらいでしょ。そんなの並んでたってかっこよくないよ」


 そっか、そうだよね、と随分しょんぼりしてるけれど、考えたら分かるでしょうに。うちの家族は本は読むけれど、文庫サイズの小説とかマンガばっかりだから。あんなに賢そうな本は全く無い。お兄ちゃんの本棚なんてカオスだ。


「……諦めきれないわ」

「じゃあ家に帰ったら本、探してみよう? リビングにどーんと置いてよさそうなのがあったら、そうすれば?」

「そうね!」


 その三十分後。辞書以外に出て来た厚い本は『家庭の医学』、そしていつのまにかお父さんが手に入れていたらしい『焚き火大全』……焚き火の種類や材料、テクニックその他焚き火の魅力を余すところなく書き記した本気のハードカバーだった。


「お父さん、何買ってるの……」

「へえ、日本焚火学会っていうのがあるんだ」


 北沢家リビング本棚計画、これにて終了。



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『Ayakashi and the Fairy Tales We Tell Ourselves』
イラスト/ Meij 先生
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