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おとぎ話の時間です  作者: 小鳩子鈴
本編

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7.5 球技大会の一幕(旧 拍手小話)

 

 〈1〉真央ちゃんはバスケ



「はるちゃん! こっちこっち!」


 早く早く、と手招きするほのかちゃんの側へと急ぐ。山盛りの生徒の間を潜り、クラス応援席にたどりついた頃には、体育館の中央フロアで球技大会バスケットボールの決勝戦が始まろうとしていた。

 自陣コートの中程で油断なく試合開始の合図を待っているのは、我らが真央ちゃん……今日もかっこいい。あの背番号のついたビブスがこれほど似合う女子もなかなかいないんじゃないかな。そして、何がすごいって、このチームは男女混合。しかも真央ちゃん、両チームで紅一点。素敵すぎる。


 この学校の球技大会は学年無視のクラス対抗戦。バレーボール、バスケなどの球技でそれぞれトーナメント戦を行い、結果に準じた点数がもらえる。その総合計が総合順位になるという仕組みで、なかなかに盛り上がると聞いていたが、これほどとは思わなかった。


 日程は1日だけだが、朝から放課後までずっと球技大会。給食ではなくお弁当で、観覧の保護者こそいないが、クラスでお揃いのハチマキやバンダナを用意したり応援旗を作ったり、運動会より気合が入っている感じ。

 二、三年生は “負けたくない” クラスがあるようで、ライバル心むき出しでやり合っている様子があちこちで見られる。先生たちまでかなり本気で楽しそうだ。


 唯一のルールは、部活と同じ種目には参加できないということ。たとえば「学校では卓球部だが、サッカーの校外クラブチームに所属している」人は、卓球には出られないがサッカーには出場できるという……逆にレベル上がってないか。いいのかそれで。

 ルールでは男女別とかの規定はないので、各クラス、自分たちが持ち得る最高の布陣を本気で組んで来る。

 その結果、真央ちゃんは男子メインのバスケチームのメンバーにになったということだ。さすがだ。

 試合数が少なくなる決勝戦はギャラリーも多く、周りを見れば一年生女子が体育館の外まで溢れている。うん、分かる。見たいよね。


 小学校の時は少年団に入っていたという真央ちゃん。体育の授業で見た、低いドリブルで相手ガードを抜く姿は、もう、惚れそうにかっこよかった。対戦相手の三年二組はもちろん全員男子……威圧感がちょっと怖いかも。


「三年生はやっぱり背が高くて大きいね」

「ああ〜、近藤先輩がいるっ、去年あの人に散々やられたのっ。まあちゃん、負けるなーっ!」

「お前らっ、三年なんてやっつけてこいっ!!」


 おおう、池田先生も張り切っている。ほのかちゃんの声が聞こえたらしい真央ちゃんが、ちらりとこちらに目線をよこし軽く左手を上げて不敵に微笑む……一瞬ドキッとしちゃった。こちらサイドにいた一年生の悲鳴のような歓声とともに試合スタートの合図が鳴った。






 〈2〉遥はドッジ



「お、十和田、こっちこっち」

「なに境……ドッジボール?」

「ほら、子リスちゃんが出てる」

「………お前な、」

「わっ、あっぶねー。見た今の、かなりギリ……おい、怒るなよ」

「別に怒ってない。当てたらダメだろう、あれ」

「いや、あのね、十和田くん? これドッジボールだから。当てなきゃダメだから」

「……」

「っとぁ! ああ、セーフっ。うん? なあ、あの外野さあ、遥ちゃんのことばっかり狙ってない?」

「お前、名前呼び?」

「え、そこ!?……あ、当たっちゃったぁ。ざーんねん……しかしアイツ嬉しそうだな。わっかりやすい。なあ十和田ー?」

「……加賀美は向こうか。呼ぶか行くか選べ」

「わ、分かった、悪かったってっ、うわ、待って十和田ぁ」



 **



「はるちゃん、残念だったねぇ」

「みんな、ごめん……わたし、一番に当てられちゃったよ……」

「いいっていいって、大丈夫! 遥、可愛いかったから!」

「そうそう、はるちゃん、ケージの隅に追い込まれたハムスターみたいだったよ」

「えええ……」

「それにしてもアイツ……遥の仇は取るからね。四組は私がバスケでぶっ潰す! ふ、ふふふ…」

「あー、もしもし、まあちゃん? ダブルスコアくらいで抑えてあげてね?」

「真央ちゃんのオーラが黒い……」


 真央ちゃんは有言実行。ほのかちゃんはストッパー。



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英語翻訳で書籍化しました!
『Ayakashi and the Fairy Tales We Tell Ourselves』
イラスト/ Meij 先生
おとぎ書影

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