出会い
ラベンダーの香りがする。点滴やベッド、花入りの花瓶がある。数年前からそこで医療機器に生かされ続けている青年、怜は数年前、リンクにいた。
「…スゲー怜もうトリプルアクセル出来るんだ」
「へへっ」その時、友人の驚いた表情を見た怜はそう言いその愛くるしい顔に得意げな表情を浮かべた。数年前、アスリートになると言う夢を抱いた怜は夢を叶える為、ハードなトレーニングをし始めた。
数年後、努力の甲斐あって一目置かれる存在になっていた怜は数年後、病院で我が目を疑った。
「エ…」
その時、生き霊と化していて自分の体があるベッドの傍にいた怜は点滴がつけられている自分の細い腕を目にし自分の努力が水泡に帰した事を知った。
「オレの努力が…」怜はそう言うと冷たい病院の床に腰を下ろした。
数年前、不慮の事故に遭い意識不明になった怜は後日、唯一の肉親である父親を亡くした。
その時、植物状態故に父親を亡くした事を知らなかった怜は生き霊として目覚めた後、その事を知りその目を見開いた。
「…エ…?」
コーヒーの香りがする。くつろいでいる看護師達の姿がある休憩室内。そこで自分の父親の死を知った怜は少し前、自分の体がある病室から出、病院内をさまよい始めた後、迷い込んだそこで霊が見えない看護師達がしていた自分の話を聞き言葉を失った。
「父さんが、父さんが死ぬなんて…」
子供の頃から父親を慕うと同時に尊敬していた怜は泣き始めた。
ほどなくして自分が泣いている事に気付いた怜は「生き霊でも出るんだ…」と言いその顔をほころばせた。少しだけ元気を取り戻した怜は視線を病院内に移した。
生者は勿論、死霊や生き霊達の姿が少なくない。そこは静寂とは無縁の場所でその時、静かで誰もいない場所に行きたいと思っていた怜は静かで誰もいない場所を求め病院を後にし始めた。
数日後、怜は比較的静かで人影が少ない公園の中にいた。
片隅にヒガンバナガ咲いている。そこで暫くの間ヒガンバナを眺めていた怜はほどなくして「エ…」と言いその目を見開いた。
その時、その目力がある目で怜を見据えたまま「何でお前は自分の体に戻って生きない?」と言う言葉をかけた男は生者で男らしい美貌の西洋人だった。
「…お、お前オレが見えるのか?」生き霊になって以来、誰にも気づかれることなく街をさまよったりし続けていた怜は動揺を隠すことなくそう言い男と視線を合わせた。