日常の崩壊
人間の世界では、動物が家畜、またはペット
ではその逆の世界もどこかにあるのかもしれないね。
序章
崩壊する日常
「うん、じゃぁーまったねぇーっ」
「バイバイ、アケミ」
十字路で私は、友達と別れる。
別れて間もないその時だった。
口と鼻に布を押し付けられ、嫌で臭い匂いをとっさに嗅いでしまった。
………
軽い頭痛の中、揺さぶられ目を開けると、そこは薄明かりの廃墟のような小屋だった。
「な……何?」
「早くこっち見ろよっ、なぁ?」
私は、床に寝そべっていて、この声の主に足で腰辺りを揺さぶられていたようだ。
……手は背中組んで縛られていて、足も膝と足の根本と二箇所縛られて、殆ど抵抗が出来ない状態だった。
「や、やめて!……」
とっさのことで必死に記憶を探りながら、私は振り向いた。
あわてて振り向いたので、床の何かが私の手首に刺さった。
痛かったけど、痛くなかった。
それよりも、悔しくて、苦しかった。
そして、視界にうつったのは、30代ぐらいの中年で少し肌が荒れ腹の出た男だった。
「なんで……助けてください……ごめんなさい」
『なんでこんなことをするの』と言いかけた、でもそんなことを問いただしても事態は好転しない。
だから私は、ただ許しを請うた。
「なんで……?そりゃぁ、君がボクにぶつかったからさ」
「ぇ……?」
「嗚呼ー、覚えてもいないんだね、君本当最低だよ、まぁ……ボクも今から最低なことをするからおあいこかなぁ?良かったねぇー」
「やっ……やだぁ……やめて!!」
「ねぇねぇ、巷で有名な、行方不明事件って知ってる?」
「ぇ……」
背筋が凍るほど、気持ち悪い寒気が全身を撫でた。
そうだ、私は、もう逃げれない、そして絶体絶命の状況にいるのだ。
「あ……あ……嗚っ……呼っ」
「知ってるのかな? にしても、君すっごいそそるねぇ……チューしても良い?」
「……ぅ……」
今からこの男に犯されるのだろうか? そう考えただけで吐き気がした、でもそうなるとまだ助かる可能性はゼロではないのかもしれない。
大事な初体験を奪われることになるが……。
それでも生きれるならいいのかもしれない……。
私は懸命にポジティブに考えた。
「いやいや、冗談冗談、口の中って雑菌いっぱいいるからね、見ず知らずの人とチューするのは凄くリスクが有ることなんだよ、因みに、手にも雑菌はいっぱいいるからね」
「……」
鼓動がうるさいぐらいに体中に響く、結局この男の望みはなんなんだろう。
「というわけで」
そういうと男は、服で自分の右手を拭いてから。手のひらで皿を作り。
「っぺ……」
「ぇ……」
私は、何言われるか予想した、気持ち悪いのもあったが抗ってわいけない恐怖がそれを勝った。
「んっぺっ……ほら、これ飲んで」
「……っ……」
「嗚呼ー、拒むなら、痰でも入れようか? 唾じゃ味気なかったかなぁー?」
「っ!!……」
それから私は、唾には、手には雑菌がいっぱいいるという話も分かっていても好感度をあげるため、貪るように男の手のひらの唾液をすった。
「うわぁーっめっちゃ良い子、じゃぁ……始めようか?……」
その後頭を撫でられた、私は初めて知った。
生理的に無理な人や恐怖を抱いてる人に頭を撫でられるのは、吐き気が出るぐらい気持ち悪い行為だということを。
「……はい……」
何をされるかわからなかった。
「ぁ……忘れてた、ちょっとしたゲームをしよう」
「……な、なんでしょうか……」
恐怖で涙は収まったが、暴行を加えられたり、過度な恐怖を与えられたらいつでも涙は溢れ出しそうなぐらい私はぎりぎりの精神状況だった。
「君、ドラスト知ってる?」
「……? ド、ドラゴンストライクですか?」
巷でブームのスマホゲーム、ドラゴンストライク、通称ドラストである、今何故このゲームの名前が出てきたのだろう?
「そうそう、やったことある?」
「少しだけ……勉強が忙しくてそれからは……」
「そっかぁ、それは残念だねぇ、途中から面白くなるのに」
「……そ、そうなんですか……だ、大人気なだけありますね」
「でさ、今から君に、ボクのIDで10連ガチャしてもらう」
「えっ?」
「タイミングは君が決めて良いよ、多分、10連ガチャしますか?『yes』『no』のボタンを押す瞬間何が出るかが決まると思うから」
「はっ……はぁ……?」
そういって男はポケットからスマホを取り出すと、何やら操作を始めた。
「んー、つまりさ、超激レアキャラが出たら、君の待遇も良くしてあげようって思ってさ」
「……」
男の説明は少し不足しているように見えた。
でもこの話をする以上、男の中で何かルールがあって、それに従わないわけではないだろう。
「超激レアが出れば、私にとっても良いことがあるんですね……?」
男が何をどうしようとしているのかは分からない、だから私は適当に復唱した。
「うん、じゃぁ、君のタイミングで『yes』を押してね」
そう言うと男は、手の拘束だけ解いてくれた。
正直凄く肩が痛かった、背伸びや軽いストレッチをしたかった。
でも私はそれすら抵抗に値するのではないかと思い、ただ言われたとおりスマホを持った。
(どうせ殺されるならこのスマホを破壊してしまおうか)
と一瞬だけ思えたが足が拘束されている今逃げることは出来ない。
仕方なく私は、受け取ってから10秒ほど待ち、震える手でボタンを押した。
『10連ガチャをしますか?』
『yes』 『no』
仮に超激レアが当たったとしても……としても……私……どうなるんだろう……。
ドラストのBGMは、私に恐怖を与えながらもガチャBGMに切り替わっていった。
押したのを確認すると、男はワクワクとした表情でスマホを私から取った。
『バチバチッ』
雷のようなSEが聞こえた。
「おっ、激レア確定キタ━(゜∀゜)━! どうなるかな? どうなるかな?」
「ぇっ……」
不幸中の幸いという状態だろうか? でも激レアと超激レアでは、ワンランク違いそうな気がする。
「ふむふむ、激レアは、ダイル将軍か……微妙だなぁ……もう一枚来るか?来るか?」
「……」
私は、ドラストをまともにやってないので分からないが、あまり良い激レアカードではなかったようだ。
冷めつつも恐怖に震える私と、やや興奮気味の中年の男
逃げれるなら逃げてしまいたいが、顔を動かさず、目の玉だけ動かして廃墟全体を見渡すが、ここは人気のない森かどこかだろうか?
足が縛られている状態では逃げれそうになかった。
「嗚呼ー、ダイル将軍だけか………ぬぉぉーーっっ!!大目玉、ツクヨミたんキタ━(゜∀゜)━!」
「ぇっ……」
「わーい、嬉しいなぁ、ありがとね、あ、うん君もおめでとう」
「ぇ……あっ……はいおめでとうございます」
よくわからないが、幸運が起きたようだ。
助かるのかな? ほっとため息が出ようとした時だった。
「じゃぁ、特別に一緒に逝こうね?」
「ぇ……」
…………。
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chips その1
人と獣人は通常言葉を理解し合えることはない。
※本文で人間のセリフは『』になっているが獣人にとっては動物の鳴き声のようにしか認識できない
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