さようなら先代ヒーロー
メスドラゴンが口から炎を放ってきた。フェニックスは自身の前に巨大な火の玉を作り、そこに敵の攻撃を吸収する。
「炎なら効かないぜ!」
巨大な火の玉をドラゴンに放つ。しかしドラゴンも、火の玉を作りフェニックスの攻撃を吸収。
「マジか!?」
これでは、永遠に応酬が続くだけだ。なるほど、フェニックスの特訓にはもってこいだろう。ただ攻撃するだけでは、勝つことは不可能。
「どうすれば……くそっ!」
ドラゴンが火の玉を放ってきた。フェニックスがそれを同じ方法で受け止める。が、今度は相手に返さない。火の玉を、自分の元に待機させる。
「どうにか方法を考えないと……」
フェニックスがメスドラゴンを見つめる。ドラゴンは口から火の粉を吐き、フェニックスの攻撃を待っている。
「相手も火の使い手か……。力量に関しては俺の方が弱いし、倒すには風や水の力を使うしか……あれ? これ勝ち目無くね……?」
フェニックスが冷や汗を流す。その直後、フェニックスの真後ろに風人が現れた。
「…………」
「風人! 俺にはあのドラゴンは……」
「無理か。まぁ確かに、相性の問題もあるだろうしな……だが奴の倒し方を見抜けたのは上出来だ、下がれ」
フェニックスが悔しそうに、だが言われた通りにする。風人はフェニックスを一瞥すると、聞こえないように呟いた。
「これは、特訓とかそんなやり方でどうにかなる弱さじゃないな……。だがいつまでも俺一人で戦うのも面倒だしな……、と」
メスドラゴンが火の玉を風人に放つ。風人は鼻で笑うと、フェニックスが抱える巨大火の玉に手の平を向けた。
「スチールウィンド」「うわっ!?」
フェニックスの火の玉が勝手に風人の前まで動く。そして、メスドラゴンの攻撃を吸収。そのままメスドラゴンに火の玉を放った。
「風人、それは効かな……」
「そんな事は知っている」
風人はフェニックスの忠告を遮ると、火の玉の陰に隠れてメスドラゴンへと近付いていく。
メスドラゴンはそんな事は露知らず、得意気に火の玉を粉砕。そして、目の前の風人に気付いた。
「よぉ」
慌てて火炎を放とうとするドラゴン。しかし、風人の方が早かった。
「ウィンディ・エクスプロージョン」
オスに放ったのと同じ技だ。メスドラゴンは、一瞬にして大爆発を遂げた。
「相性の問題もあるとは言え、こんな脆い龍に手こずる元地球最強……か。もしかすると俺は、奴等と同じく地球人じゃないのかもな……」
風人がフェニックスを見る。フェニックスは風人がドラゴンを瞬殺したのを複雑そうに見つめていた。
嵐食堂。
「天丼だ」
「あら? 風人ちゃん、フェニックスちゃんの特訓は?」
「……アイツは駄目だ。たとえ俺が全力を挙げて特訓しても、奴等を倒せるようにはならんだろう。言っちゃ悪いが、フェニックスの戦闘の才能はあくまで地球規模。俺や奴等とは……違う」
遠慮なくフェニックスの弱さを暴露する風人。言い終わってから少しして、フェニックス、パックンチ、ジームが嵐食堂に入ってきた。
「おい、ジーム。俺の天丼代を払っておけ」
「……はい」
「すいません、ウチの風人が……」
「それはもうやった。それよりフェニックス、お前何を言いに来た?」
「……え?」
「風は全て知っている。お前は何か、俺に言いに来たな? さしずめ……別れといったところか」
「……!」
フェニックス一行が驚きの目を風人に向ける。フェニックスは、静かに頷いた。
「俺、武者修行に出ることにしたんだ。今の俺じゃ、完全に風人の足手まといだ……。だから、強くなるまで旅に出る」
「ほう。家来はどうするんだ?」
風人がジームとパックンチを見る。
「パックンチ達はここに残るンチ。お前との契約は続くンチ」
「なるほどな。一人で旅に出るのか」
「あぁ。悪いな……役に立てなかった上に、急にこんな事を言って……」
「構わん。お前がいようがいまいが、俺のすることは変わらんからな」
「だろうな。……じゃ」
フェニックスが嵐食堂を出る。ジームとパックンチがそれを見送る。
風人は、何も気にすることなく食堂の中で天丼を食べていた。
「風人ちゃん、見送らなくて良いの?」
「何故そんな事をせねばならん。俺は風、見送る側ではなく見送られる側だ」
「そーですか。でも、大丈夫かしら。風人ちゃんが全力を挙げて特訓しても駄目なんでしょ?」
「俺の知ったことではない。だが、奴も元地球最強だ。多少の意地は見せるだろう」
「だと良いわねー……」
裕子が店の奥に入る。一人になった風人は、天丼を食べながら呟いた。
「主役は任せろ。……フェニックス」
もう作者自身何が書きたいのか分からなくなって泣きたくなったので、大幅路線変更です。
風人とフェニックスのWヒーローで行きたかったけど無理っす。風人オンリーで参ります。
なんか伏線投下したところがあったので、それはまたいつか(笑)
さようなら、フェニックス。また会う日まで。