倒し方を見抜け
「風人ー!」
探し続けてはや一時間。元々が炎使いなので軽減されてはいるが、それでも寒いものは寒い。フェニックスは、鼻水を垂らしながら北極を歩いていた。
「直々に特訓とか言いながら、放置かよ。あと十分探していなかったら俺帰ろ……」
突如背後から爆音。フェニックスが振り向くと、リキッダーらしきものがそこにいた。だが、馬鹿にでかい。
「何じゃ……ありゃ? 戦えってか?」
フェニックスが戸惑いつつもコアに光線を放とうとして、思いとどまる。
「違う。確か、まず体を消滅させるんだ」
フェニックスが小さな火の玉をリキッダーに向かって投げる。
「ハイパー・エクスプロージョン!」
その火の玉は大爆発を起こし、リキッダーの体を消し去った。そしてそれが再生する前に、
「滅世禁炎之舞!」
コアを攻撃。倒したと思われた……が。
「あれ?」
コア、肉体、両方が完全復活。再びフェニックスと対峙する。
「おいおい……俺は言われた通りやったぜ? ……まさか、別のタイプ!?」
リキッダーが体の一部を投げ付けてきたため、空へと退避するフェニックス。リキッダーまがいを見下ろしながら、眉間に皺を寄せた。
「自分で考えて倒せって事か……。でもどうやって……」
風人ならば一瞬で倒し方を見抜くのだろう。悔しさに歯軋りをするフェニックス。
「俺だって、やってやる。アイツに追い付くんだ!」
着地、それと同時に滅世禁炎之舞をリキッダーまがいのコアに向けて放つ。コアが消滅、肉体は水に返ったが、すぐにリキッダー・コアレスまがいを形成。
「やっぱそうなるのか……くそ!」
風人が嵐食堂にいた時に、「リキッダー・コアレスと戦うハメになった」と愚痴を吐いていた理由。それは、コアレスの図太さにある。
「ハイパー・エクスプロージョン!」
コアレスが消滅。しかし、すぐに再生。
「テラフレア、Z!」
また消滅、そしてまた再生。
リキッダー・コアレスには50回の再生能力が秘められている。故に、たとえ風人であろうと50回倒さなければならない。それが愚痴の理由だ。
フェニックスは今、それを見抜いた。リキッダー・コアレスを倒すには50回消滅させる……それを直感で感じたのだ。
「なんか分かった気がするぜ! 一気に決めるぞ!」
現在フェニックスは、二回倒した。あと48回倒せば終了……ではなかった。
一時間後。フェニックスは100回以上コアレスを消滅させていた。倦怠感が体を襲う。
「何でだよ……倒し方分かったと思ったのに……」
敵は目の前にいる。しかしフェニックスは、ウトウトとし始めた。
「眠い……」
座り込み、氷の地面を見る。その瞬間、フェニックスはあることに気が付いた。
「影……? そう言えばリキッダーには……」
リキッダー・コアレスまがいには、影は無かった。それは果たしてどういう事か。
「考えてみれば、リキッダーからは一度も攻撃を受けていない……俺も直接触れた事は無いし……まさか!」
上空に飛び上がり、辺りを見回す。誰もいるはずがない、リキッダーと戦う前にくまなく探したのだから。しかし、氷の下にそれはあった。
「映写機?」
3Dホログラムを作り出すハイテク映写機が、リキッダーの真後ろの氷の下に見えた。それがリキッダーを映し出していたのだ。
「人を弄びやがって……滅世禁炎之舞!」
光線が映写機を破壊。その瞬間、リキッダー・コアレスまがいの姿は消えた。
「やったぜ! これで俺も倒し方を発見出来るように……」
「遅すぎるわ!」
喜ぶフェニックスの真後ろに風人が出現、頭を思いっきり叩く。
「いってぇ……何すんだよ!?」
「お前は映写機見付けるのに何時間かけている? あんな物は1分で見付けろ」
「えぇ……」
「それに何だ、100回以上もがむしゃらに攻撃して。もっと早く気付け」
「いや、あの時は50回倒したら勝てる事に気付いてそれが正しいと信じ込んでいたから……」
「馬鹿らしい……」
風人が呆れてため息をつく。そしてフェニックスに言った。
「もう良い、実戦経験を積め」
「いや、俺結構戦って……」
「俺に比べたらまだまだだ。丁度今、ロシアに化け物が出てる。ほら、行くぞ」
次の瞬間、二人はロシアの某都市にいた。
「ドラゴンが……二匹?」
「いわゆる夫婦だ。俺が強い方、オスを倒す。お前はメスを殺れ」
そう言うと、風人はオスの前に瞬間移動、『何か』をしてドラゴンを瞬殺した。大空で大爆発を起こし、オスドラゴンは塵となった。
「今……何を?」
「さあな、自分で考えろ」
それだけ言い残すと、風人はその場から消えた。