死の特訓の始まり
嵐食堂に風人、裕子、フェニックス、パックンチ、ジームが集合。いや、裕子は元からいたが。
「何の用だンチ? 自称最強」
「自称ではない、虫。俺の最強ぶりは宇宙が認めている。そんな事より、今日お前らをここに呼んだのは……だ」
「呼んだのは?」
フェニックスが首を傾げる。風人は、一気に言いきった。
「フェニックスが弱すぎる、という話をするためだ」
フェニックスが「図星!」というような顔をする。あまりに図星なのでズボシッ! という効果音が聞こえてきそうな程である。
パックンチは、ただただ目を丸くした。
「ふぇ……フェニックスが弱すぎる……?」
「あぁ、これは予想以上の大問題だ。俺に勝てないのは仕方がないとして、まずは現場に来るのが遅い」
フェニックスの頭にズボシッと矢が突き刺さる。
「まぁこれはフェニックスだけの問題ではないだろう。お前らが抱えているあの機械、あれは反応が遅すぎる。作り替えろ」
「あ、あれは最高の技術を使ったスーパーコンピュータ以上の機械ですよ!?」
一瞬、風人が固まった。ここに来て謎の存在に気付いたのだ。今までフェニックスやパックンチと一緒にいたのに、なんか空気みたいだった奴。
「……誰だっけお前」
「あ、私はジームと申します。どうぞ宜しく」
「……おう」
風人の咳払い。
「では、機械の件は置いておこう」
「それ以外に何かあるのか?」
「当たり前だ。これはモグラ男戦の後に風が教えてくれたことだが……お前、リキッダー倒すとき急所を狙っただろう?」
「あぁ、コアだろ? でもそこを狙うしか……」
「お前、良くそんなので地球最強を名乗れていたな。良いか、リキッダーの倒し方は一度体を消滅させ、それが復活する前にコアを消すのが普通だ。おかげでこの前、リキッダー・コアレスと戦うハメになったぞ」
リキッダー・コアレスとは、コアの無いリキッダーである。コアを失った肉体は水に返るが、その水はコアが無くても一度だけ再生するのだ。
モグラ男と戦ってからウサギ女と戦うまでの間、風人はこのリキッダー・コアレスと戦ったのだ。まぁ、イチコロだったが。
「でも、フェニックスはリキッダーと戦うのは初めてだったンチ! 対処法なんて……」
「俺だって奴を見たのは初めてだった。だが対処法はすぐ見抜けた。フェニックスにはな、何もかもが足りないんだよ。攻撃力、防御、スピード、判断力、ものを正確に見る眼、その他もろもろ。と言うわけでだ」
頭に図星の矢が何十本も刺さったフェニックスの首根っこを掴む。
「俺が直々に特訓してやる」
パックンチとジームはおろか、当のフェニックスすらもポカンとする。そして風人に質問しようとした瞬間、風人はフェニックスごとその場から消えた。
「おー……寒い。風人、ここどこだよ……ん? 風人?」
北極。フェニックスは一人ポツンと、氷の上に立っていた。