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ゲームではよくあることだ。

作者: くりゅー
掲載日:2012/10/23

俺はゲームが好きだ、リアルの世界より。


だからリアルなんかよりゲームの世界がいいって、思ってたことは認める。


最近のとあるアニメみたく、ゲームの世界に行ってみたいと思ったのは認める。



だからってまさか……、

まさか本当にゲームの世界にダイブするとは……。




「勇者ソウマ! あっち で 村人 が モンスター に 襲われていましたよ!」


村人Aは俺が話しかけると、さっきと同じことを言う。


同じ村人が襲われていたっていうのに何でお前は平然としていられるんだよ。



でも、まあ…

ゲームでは良くあることだ。


こういう村人Aは、主人公が話かけないと情報を漏らさない。



しかも、今回は俺も襲われている村人を助けるつもりは無いから、村人Aを「非情な野郎だ」と非難できない。



「…なにが、村人を助けろだ。なにが悲しくて最初からあんなレベルの高いモンスターと戦わなきゃいけねーんだよ。」


こっちでゲームオーバーになったら、どうなるのか解らないこの状況で、危ない橋なんざ渡ってられるか。


俺は面倒な村人Aをスルーして、とりあえずは今の自分に相応以下のモンスターを狩りにダンジョンへと足を進ませながらそう言った。



今はもうすぐ正午になる。昼過ぎにはダンジョンに繰り出したいところだ。



そういうわけで、とりあえずは回復系アイテムを買いに店に立ち寄る。



「回復薬を15個買いたいんだが?」



「ほいっ。4500ガネーだよ。」



ガネーとかベリーとか、通貨単位が違うのもゲームでは良くあることだ。



実際はいくらなんだろうか?

日本語が標準語の世界だし、1ガネー=1円ということころか。



そして俺は、腰巾着みたいなアイテムポーチの中に、頂いた15個の牛乳瓶サイズの回復薬を詰め込む。


いや、普通は入るわけない。


でもココはゲームの中。

ポーチの中は15本の回復薬を入れても全然キツくない。


回復薬なら99個まで入れられるというから驚きだ。


でもまあ、ゲームでは良くあることだ。



そんなことを考えていると、


「まいどあり。…ところで ソウマ さん。 向こう で 村人 が モンスター に 襲われて いたよ。 助け に 行かなくて いいのかい?」



「いいんです。」


俺はアイテム屋の店主に一言そういって、店を出る。


しつこくイベントに誘ってくるのも、

この手ゲームでは良くあることだ。










それにしても

初めてこの世界に来たときは驚いた。


って言っても今朝のことなんだが…。



「ソウマ 起きな さい! 魔王 を 倒し に 行く のでしょう!」



なんて言いながら、ドット絵のなんだか良く解らないキャラが、俺を起こしてくれたときは、一瞬頭がフリーズした。



色々とツッコミたいところがあるけれど、一番はじめに俺がとった行動はフリーズだった。


そのドットキャラが“お母さん(役のキャラクター)”だと理解するまでには時間を要した。




本当、俺までドット絵だったら自殺してたわ。




とりあえず、状況をわかり易く説明すると

ここはゲームの中らしい。


しかもレトロゲーム。


ジャンルはファンタジー。


登場人物のグラフィックは、先の村人も店主もそうだが…ドット。

アイテムもモンスターも…すべてドット。

なのに背景は普通だ。三次元みたいだ。




ストーリーは俺が小学校の頃にハマった『マジカルクエスト』とか言うゲームに似ている。


そして登場キャラクターが俺を除き、ドットだ。



誰がこんなことをしやがったんだ。

どうせ飛ばすならラブ○ラスとか○ウきゅーぶとか!リト○スとか、ギャルゲに飛ばせよ!!


大体俺がダイブしたかったのはオンラインだっつーの。


なのに…


オフラインのしかも通信ケーブルとか使わなきゃ他人と同時プレイも出来ない…

…否、通信昨日すらついてないだろうこんなクソレトロゲーなんかに……




…。


まあこんなとこでクヨクヨしても、しょうがない。

頭を優しく撫でてくれるのは角ばった、ただの点キャラだ。


美人美少女と肩書があろうが、

一行に萌えないただの点だ。




だから俺は決めた。

この世界ゲームから元の世界へと帰還する。と…




この世界に来た理由や経緯はわからないが、この世界がゲームである以上…、最終ダンジョンの“魔王ラスボス”を倒したら…、つまりゲームクリアしたら、この世界ゲームは終わる。…はずだ。

この手の最近のアニメでは、良くある話だ。



幸いショボイゲーム。難易度は小学生でもキレないレベルだし、攻略中にゲームオーバーなんてありえない。


だから今は最初の村で、物語は序盤だが…いちいち歩かなきゃならないのが難点だがまあ、今日の午後から始めても二日もあればクリアできるはずだ。



そんなことを自分に言い聞かせながら、とりあえずは始まりのダンジョンへと向かう。



始まりのダンジョンはすがすがしい草原。

空の青と雲の白、草原の緑だけで描かれたような背景に…

ドットの汚らしいモンスター。



…っても、俺の装備も剣も…ドットなんだけどな…。













それからは早かった。

一時間もしない内にレベルは20程あがり、物語の五分の一くらいはクリアしてしまった。


結果、一日目で残すは魔王ラスボスを倒すのみになった。



「…やり始めて9時間か…、そろそろ休憩でも…」


ドットで出来たドアを見ながら、俺は首をふる。



「いや、今日で終わらせる。」



決意を拳に込めて、ドアを開く。





「ハッハッハ…ヨクキタナ 勇者ソウマ ヨ。…ダガ オソカッタナ コノ セカイ ハ マモナク……」



「…うるせぇぇえぇぇ!!」



ザシュッザシュッ とへんな効果音が数回鳴り響く。


台詞の途中で攻撃できるなんて、ゲームには無い。


これは別の世界の住人である、俺だからできることだ。



「ドット風情がっ。仲良く力を合わせて二次元びしょうじょ作ってやがれ…!」


ずっと言ってやろうと決めていた台詞を、断末魔をあげる魔王にぶつける。



魔王は蒸発するように、身体を構成するドットが消えてゆく。





すると真っ暗な背景に、白い稲妻のような亀裂が走る。


差し込む光が眩しい。


背景は亀裂にそってボロボロに崩れ、

真っ白な世界にかわる。



「…やっと……帰れるの……か?」



まばゆい光が俺を包んで、眠るように意識を奪われた。















































気持ちの良い朝だ。


まだ眠くて、視界にはモヤがかかる。



ドン…ドン…ドン…



階段を誰かが上がってくるのが解る…。


どうやら母が起こしに上がってきたらしい…。


ガチャッ…


と、ドアを開けて母はこう言った。



「ソウマ 起きな さい! 魔王 を 倒し に 行く のでしょう!」











ラスボスを倒して、エンディングを迎えると

“はじめから”になってしまうという仕様も……

ゲームには良くあることだ…。


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