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第8話 わからせ希望



 人がいない空間に放り出されたルート君が魔法を使うと、そこには一級魔法の『着火』が揺らめいていた。


その魔法を見ると、観衆はざわめきだし、ヒソヒソと話し出した。

 

「魔法の発動が早く、素晴らしい。今年は全体的に魔法の腕が高そうだ」


 声の聞こえた方を見ると、先程のおじさんが1人で唸っており、笑顔で拍手していた。

 彼の拍手につられたのか、次第に拍手の音は多くなっていき、最終的には群衆のほぼ全員が拍手していた。


拍手が鳴り終わると、次の家が呼ばれた。


「次、ダリン男爵家のご子息、コーライ・ダリン」


 名前が呼ばれると、男の子が1人人混みの中から飛び出してきて、意気揚々と魔法を使った。

 それは風属性の『風鳴』で、ハンカチを浮かばせた後、彼は退場した。

 正直、彼の魔法はただ一級魔法を使っただけでそれで良いのかと思ったがそれでも構わないと拍手が鳴り響いた。

 


 しばらくして、拍手がなり終わると次の家が呼ばれていき、さらに5、6人ほどが終わったところで俺の名前が呼ばれた。


「次、ヒュード伯爵家のご子息、レオン・ヒュード」


 先に呼び出された子達をよく見て、何をすべきかはわかっていたので、俺は落ち着いて観衆の前に出た。


 一度深呼吸をして緊張していた体を落ち着かせてから、手慣れた動きで事前に決めてあった魔法を使った。


 ゴウ!


 魔力は『着火』の1.5倍くらい。相当な数練習していたので、このくらいの魔力でも『着火』と比べると2倍以上の火力となって魔法が発動した。



「この年齢にしては魔法の発動が早いな」


「これは『着火』を改造した二級魔法では?かなりの才能があったんだろうな」


「しかし、1人だけでは魔法の改造には至れないだろう。彼についている宮廷魔術師も、相当腕が良いのだろうな」



 俺が魔法を使うと、さっきまでよりもさらに増して観衆がざわめき出した。人々の丁度真ん中にいるので、話し声が聞こえやすく、耳を澄ますとそんなことが聞こえてきた。


 しかし、その中に一つだけ、俺を見下すような声が聞こえた。


「ふん。あの程度、簡単よ。大人達はなんでこんなことで騒いでいるのかしら」


 は?馬鹿にしやがって。

 その声がした方を覗くと、如何にも偉そうな態度をした銀髪の美少女が立っていた。


 すぐに殴りかかろうかと思ったが、俺は一応精神年齢は16+10歳の大人だ。

 それなのにたった10歳の子供にキレるのはナンセンス。


 心を鎮めて殴りかかりたい衝動を収めた後、そんなことを言うメスガキは俺よりもすごい魔法を使えるのか確認するため、俺は彼女が魔法を使うのを虎視眈々と待った。




 俺が魔法を使ってから30分後、最後の1人になってやっと例のメスガキが呼ばれた。


「最後、ユバル公爵家のご息女、ミュレイ・ユバル」


 公爵家?まじでか。それに、ユバル公爵家ってこのパーティーを開いた家の名前じゃなかったっけ。


 俺が焦っていると、彼女は堂々と人前に出て、魔法を放った。


 それは、何と火属性と風属性の合わさった俺の知らない魔法であった。


 そもそも、属性の複合なんて難しそうなのはドールから聞いたこともないし、出来ることも想像すらしていなかった。


 その魔法は炎でできた竜巻を形成し、彼女の周囲をぐるぐる回った後、ブワッと破裂して消えた。



 魔法が消えた後、しばらくほど全ての人間が黙って動かなくなり、衣擦れの音すら聞こえなくなった。


 数秒ほど経つと、爆発するように拍手が鳴り始め、それはしばらく止まる兆しを見せず続いていた。




 ◆◇◆◇◆◇


 ワイワイ、ガヤガヤ


 子供達による魔法の披露が終わると、直ぐにパーティーが始められた。

 その空間は子どもと大人で領域が分かれており、それぞれが思い思いに社交をしていた。



 周りを見渡すと、メスガキちゃんを見つけたが彼女は1人でポツンと寂しく孤立しており、そこには誰も近寄ろうとしなかった。


「どしたん。話し聞こか?」(下心ナシ)


「別に。あんたは関係ないでしょ」


 つい気になってしまい、彼女に声をかけると、ムスッとした顔でそっけない返事をされた。


 つれないなあ。こっちは1人で寂しそうにしてたから話し相手になってあげようかと思っていたのに、冷たくあしらわれたせいでこっちは悲しくなってきた。


「別に良いじゃん。俺は君のことが気になったから話しかけただけで、関係の有る無しは今ここに必要ないでしょ?」


 頑張ってツンデレ(デレなし)メスガキを口説こうとするが、中々相手にして貰えない。

 何か共通な話題がないか思案すると、一つ思い浮かんだ。


「さっきの魔法、凄かったね。どうやったの?教えて欲しいな」


 魔法の話を振ると、彼女は目を光らせて津波のように話しかけてきた。


「あなた、私の魔法に興味あるの?良いわよ、教えてあげる。その前に、自己紹介しないとね。ミュレイ・ユバルよ。私の家族はミューと読んでいるわ。特別に、あなたもそう呼ぶのを許してあげる」


 自己紹介されたのなら、こちらも返さないとな。


「俺はレオン・ヒュード。特に愛称とかは無いから、レオンって呼んで。ミュー、よろしくな」


 お互いに自己紹介は終わったので、ミューから魔法の話を聞くことにした。


 「そういえばあなた、他と比べたら魔法上手だったわね。それなら、私の言うことが試せるんじゃないかしら。ええと、ええと、まずはこれをしてみて・・・」


 彼女の話はとても面白く、話を聞いていると沢山インスピレーションが湧いてきた。

 


◆◇◆◇◆◇


 

 しばらく彼女に魔法について聞いていると、いつの間にかパーティーが終わる時間となってしまっていた。


「あら、もうこんな時間なのね。あなたと話すのは楽しかったのだけど、寂しくなるわ。じゃあ、またいつか会いましょうね」


「うん。じゃ、また会おうね」


 互いに言葉を交わした後、俺達はそれぞれ別れた。


 

 

 

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