第26話 試験
王都に来てから1週間が経ち、遂に入試当日だ。
俺はすでに試験会場である、学園のホールにいる。現在の時刻は朝の7時30分、30分後の8:00から筆記試験が始まる予定だ。
ホールには試験のための机と、椅子が並べられているが、今の時点ではスカスカで殆ど誰も座っていない。
2、3人気の早い人が座っていたりするが、他はお喋りしていたりで騒がしい。
20分ほど経ってもうすぐ試験が始まる時間になってくると、パラパラと席につく人達が増えてきて、残り3分の段階で殆どが席に着き準備を終えていた。
筆記試験の内容は、思っていたよりも易しく、かなり余裕を持って解き終わる事ができた。ケアレスミスを防ぐ為に見直しをしているうちに制限時間が来てしまった。
次は、魔法実技試験だ。ホールは広かったので一度に全員が試験を受けられたが、今回は受験番号順に試験を受けるらしい。
俺の番号は501なので、順番が回ってくるまでしばらく時間がかかりそうだ。
このまま一人ぼっちでいるのも嫌なので、適当に近くにいた男子に話しかけた。
「はじめまして、俺はリオン。よろしくね。早速だけど、教養筆記はどうだった?」
折角、今日の試験と言う共通の話題があるのだ。そこを積極的に活用しないと。
「はじめまして、僕はルート、ルート・レーボル男爵家の三男だよ。筆記試験はね、何とかできたかなって感じ。リオン君はどうだった?」
ルート・レーボルか。どこかで聞いた名前のような気がするが、覚えていないな。
「俺はね、結構スラスラと解けたと思うよ。ルートは、受験番号いくつ?」
「僕の番号は、498だよ。リオン君は?番号が近かったらお互いの魔法が見られるかもね!」
なんと、3つしか離れていない。これなら、確かにルートの言う通り互いの使う魔法を見られるかもしれない。
「そういえば、魔法実技の試験ってどんな内容か知ってる?」
今更だとは思うが、俺はルートに試験の内容を知ってるか聞いた。
しかし、彼は首を横に振って答えた。
「いや、僕も試験の内容は知らないよ。魔法を使うってことだけはわかってるけど、どんななんだろうね」
その後も、ルートと雑談しながら順番を待っていると、遂に俺たちの番がやって来た。
「次、498番ルート・レーボル。先ずは水属性魔法からだ。そこの的に向かって撃て。自分の使える最大限の魔法を使うように」
試験官は的を指し、ルートはそれに向かって魔法を放った。
それは二級魔法の『水球』だ。これは同じ二級魔法である『火球』の水属性バージョンだ。
『水球』はまっすぐに飛んでいき、的に命中した。
「次、雷属性魔法を撃て」
・・・・・・・・・・・・
その調子でルートは魔法を放ち、全ての属性を使い終えた。
その後も順調に二人が試験を終え、俺の番が来た。
「次、501番リオン・ヒュード。水属性魔法から、そこの的に向かって撃て。自分の使える最大限の魔法を使うように」
試験官からの指示を受けて、俺は魔法陣を展開した。
その後、俺は魔法を発動させて、的に向けて放った。
俺が使ったのはオリジナル魔法の、『水槍』だ。ドールが言うには推定四級魔法で、その中では簡単な方らしい。
『水槍』は勢いよく飛んでいき、的に刺さった。的に命中したことを確認した俺は、魔法を解除して、『水槍』を消した。
「おい、あいつなんか凄いぞ。さっきまでのとは、全然違う」
「あれだよ、多分めっちゃ才能があったんだよ」
俺が魔法を使うと、他の受験生達から声が聞こえてきた。耳をすませてみた感じ、どうやら俺の適性に水があると誤解しているようだ。
まあいい、ここから他の属性も使うのだ。それで誤解を訂正して見せよう。
「次、雷属性魔法をを撃て」
次は雷属性だ。また魔法陣を展開し、すぐに放つ。
この魔法は『雷撃』。指定した場所に電撃を発生させる魔法だ。
次の瞬間、的は火に包まれた。
どうやら的の素材は木材だったようで、抵抗により発火したらしい。
「凄いな、適性は水と雷かな?」
「そうじゃない?これだけの才能なら、もう一つあってもおかしくはないけど」
「あいつ、リオン・ヒュードだろ?努力家って聞くのに、魔法は大したことないんだな。嘘を流してるのか?」
オーディエンスの中から、俺を軽視する声が聞こえてきた。馬鹿にしやがって、今までのは適性の無い魔法なんだよ。お前らは適性があってもこれくらいだろうに、偉そうにするな。
すぐに的は取り替えられて、試験官はさらに指示を出した。
「次、土属性魔法を撃て」
土は、俺に適性のある属性だ。ここで、格の違いというものを魅せつける。
魔法陣を広げ、発動させた。
その魔法は地面を盛り上げ、ハンマーを形作った。
「いけ」
合図と同時に俺が腕を振ると、同じようにハンマーが振り下ろされた。
的はハンマーによってペシャンコに潰され、原型を全く保っていなかった。
これは、もちろん俺のオリジナル魔法、『土鎚』。土を操ってハンマーを作り出し、全てを叩き潰す魔法だ。
「なんだよあれ、魔法の動きを操作した?」
「俺達はまっすぐに飛ばすので精一杯なのに、振り下ろすとかいう難しい動作ができるのかよ・・・・・・」
「なんだよあの大量の土は・・・・・・魔力操作が得意ってレベルじゃないぞ」
オーディエンスは大盛り上がりだ。俺が魔法を魅せつけて、彼らは圧倒されていた。
試験官も例に漏れず、俺の魔法に驚いたようで、目を見開いていた。
しかし、試験官はすぐにポーカーフェイスに戻し、指示を再開した。
『次、風属性魔法を撃て』
風属性魔法は透明なので、使うだけでは周囲に見えない。しかし、折角自分の魔法を披露できるとなると、派手に魅せたい。
少しだけ悩んで、俺はどの魔法を使うか決めた。
俺は魔法陣を展開し、発動させた。
すると、的は突然歪み、一箇所に向けて集まり始めた。
その動きが止まった頃には、的はグシャグシャになっていてもはや的としての尊厳を無くしていた。
その光景を見て、試験官含めオーディエンスは言葉を失っていた。
まあ、魔法を使ったと思ったら突然的が潰れていく様を見て、驚くのも仕方が無いだろう。
この魔法は俺が編み出した『真空』だ。この名前を聞いて、概要を察することのできる人間は少なく無いだろう。
空気を操ることで指定した場所を真空にする魔法で、効果はシンプル、それだけだ。
今回は的の中に真空を作り出し、その隙間を埋めようとすることを利用して、的を潰した。
一見すると風魔法には見えない可能性もあるが、試験官はどうジャッジするのだろう。
いつの間にか的は新調されていて、地面も平にならされていた。
しばらく待って試験官が指示を出すのを待っていると、試験官はこう言った。
「さ、最後。火属性魔法を撃て」
その言葉を聞いて、また魔法陣を展開した。
「『炎龍』」
最後なのでカッコつけて発動と同時に名前を言った。
魔法は東洋龍の形を作り、的に向かって飛んでいった。
龍は当たった瞬間爆散し、周囲を燃やすと、消え去った。




