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第24話 表と裏



 俺は、一人馬車に乗って自宅である屋敷へ帰り着いた。

 敷地内へ入ると、すぐに屋敷の使用人達が出てきて、甲斐甲斐しく世話をし始めた。

 馬車に転がされていたせいで服は汚れ、所々の糸がほつれていた為、部屋に戻るなり着替えさせられた。


 体の自由を取り戻した頃には、ついさっきまで全身汚れていたとは思えないほどになっていて、俺は彼らの仕事の速さに驚いた。


 今日は騒動のせいで家に帰り着いた頃には日が暮れていて、家庭教師はキャンセル。最低限の日課だけ終わらせて、俺は日記を書き始めた。


 これは去年の夏頃に、ふと思い立ったことから書き続けているのだ。

 ペラペラと日記を捲り、早速俺は昨日と今日の出来事について記した。


 初めて王都へ訪れて、王城に入ったこと。

 その中の塔でミューとの婚約を結ぶための手続きをし、その時の受付にいたおっさんの態度がとてもフランクで面白かったこと。

 手続きが終わるまで待って、その後父上に見せてもらった絶景に魅了されてしまったこと。

 王都の屋敷へ行って寝たと思ったら何故か誘拐されたこと。

 なんとか脱出しようとしたが、ゼルトに阻まれ、結局また拘束されてしまったこと。

 街に入って牢屋に入れられるという直接で父上に助けてもらったこと。

 最後に、屋敷へ帰って身だしなみを整えてもらったこと。


 昨日、今日と起こった出来事をスラスラと書き起こしていき、書き終わった俺はもう一度その文章に目を通した。


「こうやって見ると、この二日間だけでかなり濃い時間だったな。次から次へと出来事が発生して、退屈はしなかったけど、事件に巻き込まれるのはもう勘弁だよ」


 確かに、色々な出来事が絶え間なく発生している様を見るのは楽しかった。しかし、当事者というのはそれだけで疲弊する要因になる。できれば、外から、飛び火してこないぐらいで眺めていたいなあ。


 いやちょっと待て、他人に起きている事故を自分だけ巻き込まれないで眺めたいだなんて、正真正銘クズじゃないか。

 俺は、自分がとんでもないクズな言動をしたことに気づいて、なんてことだと頭を抑えた。


 やっぱり、事故なんて起きて得することは無いな。例外がいるとすれば、それは事故を起こした犯人ぐらいだろう。


 丁度いいと思い、ついでとばかりに今考えていたことを書き上げた俺は、パタリ、と日記を閉じた。


 その後、俺はベッドに転がって窓の向こうを見た。


 時間はもう深夜で、周囲は闇に包まれている。明かりと言えば、扉の隙間から漏れるわずかな光のみだ。そんな状況は振り返りを行うのに丁度よく、布団に包まれたまま今日までの出来事を振り返っていると、意識は次第に闇に包まれていき、気づいた時には完全に寝落ちしてしまっていた。




 ◆◇◆◇◆◇



 同じ頃、ボテはとある部屋の中で独り言ちていた。


「はぁ、やっと終わったか。おや、もうこんな時間だったのか。リオンはもう、屋敷に到着しているはずだが、予定より時間をかけすぎだ」


 腕時計を見ると、時間は深夜の2時頃。彼は息子はもう無事屋敷へ到着している時間かと確認した。


「『竜の目』か、最近よく耳にするが、一体何なのだ?なにかの組織ということしかわかっていないが、分かっているのは、地元のマフィアやゴロツキを雇って誘拐や犯罪行為をやらせて、金を巻き上げているということだけ。その金で何をしようというのかも判明していない。あの魔道具も『竜の目』が男に与えたらしいが、一体どこから調達しているのだろう。あの手の魔道具は王城で厳しく管理されている筈だが、まさか内通者でもいるのか?いや、いるのだろうな。うちの使用人にも滑り込ませていたのだから、そう難しいことでもあるまい」


 彼はそこまでで考察を一旦取りやめ、床に無造作に転がっている男のうち、一人を持ち上げた。


「ここで一人考察を続けていても、何の進展もない。とりあえずは、実行犯のこいつらを処罰しよう。そうだな・・・『竜の目』の名前は出さずに、リオンを誘拐した罪で死罪にするか。家が舐められても困るし、見せしめとして派手に公開処刑するとしようか。教育に悪いからリオンには何かと理由をつけて見せないようにしないとな」


 そう言うと、持ち上げていた男を下ろしてボテは手伝いとして付いてきている男に指示を出した。


「おい、こいつらを捕縛してうちの領の留置所へ放り込んでおけ。罪状は今言った通りに、伝えておけ」


「了解しました。罪状はリオン様を誘拐したことによる死罪ですね。公開処刑を行うこともお伝えいたします」


 彼は、出された指示の内容を復唱して確認した。

 

「相分かった。ではその通りにしてくれ」


 ボテの返事を聞いて、彼は一礼をすると、間も置かずすぐさま床に転がっている男達を拘束し、それを連れて去っていった。


 

 


 

 


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