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第18話 婚約



 自分の夢について父上と話した2日後、俺は馬車に乗ってユバル公爵家へ向かっていた。


 付き添いとして父上も一緒に来ていて、父上と雑談しながら時間を潰している。


「公爵令嬢とは仲良くしているようだが、彼女に対して恋愛感情はあるのか?公爵もお前たちの関係は知っている。公爵家とは懇意にしてもらっているからな。頼み込めば婚約させてもらえると思うぞ。私は、一人の父親として、お前を応援したいと思っているからな、協力は惜しまない」


 ミューと、婚約?父上のその気持ちは有難いのだが、俺は彼女に対してそのような感情は持っていない。一応、前世と合わせたら俺の年齢は28だ。俺はロリコンでは無いし、そんな彼女の意思を無視するようなやり方は俺の道義に反する。


 この世界は一部を除いて現代と同じくらい文明が進んでいるのだが、その辺の意識は違うようで、昭和のような価値観が主流だ。


 男女平等、ジェンダーレスが叫ばれる現代においては、そのような考え方は少しモヤっとくる。


 世界が違うからと言う理由で理解はできるのだが、納得はできない。


「ありがとうございます、父上。お言葉は嬉しいのですが、私は彼女の意思を尊重しようと思いますゆえ、彼女との婚約は望みません」


 父上の気遣いを無駄にしないよう、当たり障りの無いよう言葉を選んで言ったのだが、父上にはどうやら違って聞こえたようだ。


「そうか、それならご令嬢にもリオンと婚約したいか聞くとしよう。その上で婚約すれば、問題ないはずだ」


・・・・・・・・・


 問 題 し か な い ん だ が


 どうしてそうなったんだ?俺ははっきり断ったはずだ。

 それなのに、ミューから確認を取れば大丈夫と言っている。


 どうにか諦めさせようと言葉を頭の中でこねくり回していると、いつの間にか目的地の屋敷へ到達していた。


「リオン、もう馬車を降りるぞ」


 父上はそう声をかけると、先に馬車を降りて何処かへ消えてしまった。


 結局、父上の考えを改めさせることは叶わなかった。



 もうどうしようもないので、パーティーが行われているホールに入り、ミューを探し始めた。


 このパーティーに参加しているのは、殆どが公爵家との血縁があったり、親交が深い家だったり公爵家御用達の商人など、大人ばかりだ。

 なので、俺みたいな子供は周囲から浮いて、目立ってしまう。


 そこを突いてミューを探しているのだが、何故かどこにもいない。隠れているのかと思って普段なら覗きもしないような場所も確認したのだが、影も形もない。


 ミューを見つけようとウロウロしていると、遠くから使用人がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。


 どうしたのだろうと眺めていると、ツカツカとこちらに近寄って、俺の耳に囁いてきた。


「ヒュード伯爵家のリオン様ですね?旦那様がお呼びですので面会室へいらして下さい。私が案内しますので、静かに付いてきてください」


 旦那様?ユバル公爵だろうか。


 何か呼ばれるようなことをしたような覚えはない。


 仕方なく、彼の後を追って面会室へ向かった。



「すいません、自分は何の用で呼ばれているのですか?」


 どうしても気になって目の前を歩く使用人に聞いてみるも、はっきりとした答えが返ってこなかった。


「私は伺っておりません。ただ、貴方のお父上とお嬢様もお待ちですので、何か大切な話でもあるのでしょう」


 父上に、ミューまで?ずっと分からなかったミューの行方はやっと判明したが、父上が居るということはさっきの婚約云々に関することだろうか。


 少しだけ憂鬱になりながら、面会室に入った。


「リオン、来たか。ほら、私の横に座りなさい」


 面会室に入ると、ソファに座っていた父上が、俺に座るよう促した。


 大人しくその言葉に従ってソファに腰を下ろすと、直ぐにユバル公爵が話を始めた。


「早速本題に入るが、今日はヒュード伯爵の子息、リオン・ヒュードと我が家のミュレイの婚約を結びたいということで、この場を設けた。伯爵の希望で、当人達の希望を聞いた上で決めたいとのこと。ということで、お前たちはどう思う。教えてくれ」


 彼がそう言うと、ミューは数秒ほど考え込んだかと思うと言葉を発した。


「私は、リオンと婚約を結んでもいいわよ。リオンとはかなり馬が合うし、面倒な婚約者を決めなくていいのなら、リオンを選ぶわ」


 なんと、ミューが俺との婚約を選ぶとは。

 断る理由もそんなにないが、何かしらいちゃもんをつけてきて断られると思っていたので、完全に予想を裏切られた。


「で、貴方はどうなのよ、リオン」


 ミューに話を振られて、俺は自分の考えを話した。


「僕は、婚約しようかなと、思っています。最初は、ミューが断るだろうと思っていたからするつもりではなかったけれど、ミューが積極的なので俺もしようと思います」


 受動的であまり好ましいとは思わないが、俺の考えを伝えた。


 俺とミューの言葉を聞いて、公爵は少し考え込んでこう言った。


「二人とも、婚約することについては賛成のようだな。私も、婚約させることに異論は無い。互いの家にメリットもあり、持ちつ持たれつの関係になれるだろう。では、二人を婚約させるということでいいな?」


「ええ、では数日後に正式に婚約を結びましょうか」


 ということで俺とミューを婚約させるということで話は落ち着いた。この後は大人同士で話し合うらしく、俺たちは部屋を出た。



「まさか、貴方と婚約するだなんてね。昨日まで、夢にも思っていなかったわ」


「ほんとだよ。でも、別に不都合なことがあるわけでも無いし、いいんじゃ無い?」


 ミューとしばらく二人で話して、俺たちは互いの魔法を比べるため、屋敷の練習場へ向かった。

 

 

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