第17話 世界最強
色々あって時は過ぎ、いつの間にか3年が経過していた。
その間に、兄様と姉様は学園に入学し、俺は13歳になった。
日課を毎日こなした甲斐あって、魔力の量は最初と比べておよそ54倍。魔力の質も、満遍なく育てた結果、どの属性の魔法も、第四級魔法が使えるほどにまで成長した。元から適性のあった火と土の属性は、第五級魔法が使える域にまで達した。
そして今、俺は父の書斎に居る。
なんでこんな所にいるのかと言うと、3年前の姉様と同じように、自分の夢、学園へ何を為すために入学するのか、それを父上に伝えるためだ。
これを伝えろと言われたのは今朝。学園は寮生活なので兄様と姉様は居らず、父上と母上、そして俺の3人で朝食を食べていた時だった。
姉様や兄様の時とほとんど違わない言葉で呼び出されて、俺は事前に考えていたので、それを伝えるべく家庭教師の時間が終わってからすぐに父上の書斎へやってきたのだ。
「で、なんだリオン。もう考えたのか?言ってみろ」
父上は書類から目を上げ、真剣な眼差しで俺に問いた。
「はい。私は、学園を卒業して宮廷魔術師になりたいと考えています。宮廷魔術師になる為、先ずは学園で高い成績を収めるのが目標です。具体的に言うと、毎年行われる実力テストで上位の順位を取り、卒業試験で首席を取る、と言うのが目標です」
俺が言い終わると、父上は目を瞑ってしばらく考えはじめた。
3分ほど経って、父上は俺に向かってこう言った。
「うむ、よく考えられているな。最終的な目的と、それのための目標がはっきりしている。目標がしっかり最終目的と繋がっているし、具体性がある」
父上に褒められて、とても嬉しいのだが、どうしてこんな当たり前のことを言うのだろう。
「ここでお前を褒めて終わりにしたいのだが、そうもいかない。リオン、お前の最終目的は宮廷魔術師と言ったな?宮廷魔術師になってお前は何を成す。なって終わりか?それとも、宮廷魔術師にしか出来ない何かをしたいのか?宮廷魔術師はお前の人生では一つの通過点に過ぎない。お前の人生の最後まで、目指し続けるものを作れ。また、私に伝えにこい」
そう言われ、俺は退室した。そして、目的地はなくブラブラと屋敷の中を散策しながら、父上に言われたことを考え始めた。
人生の最後まで目指し続けるもの、か。
父上の言う通り、確かに宮廷魔術師というのは人生において一つの通過点に過ぎない。
兄様や姉様の場合、あの夢は人生を通して叶えるもので、終わりがない。しかし、俺はどうだろう。ドールのように若い段階で宮廷魔術師になったとしたら、残りの人生は何をして生きていくのだろう。ぼんやりと目的もなくただ虚無に生きるのだろうか。
そんなの、勿体無さすぎる。
目的を決め直すとしても、どうしようか。
せっかく決めた目標は変えないまま作り直して、何がいいだろう。
今、俺が何をしたいか、そこから考えるか。
俺はずっと魔法を鍛えているな。なんでだ?
魔法が上手く使えるようになるためだ。魔法が上手く使えるようになるってなんだ?
強くなると言うことだ。じゃあ、強くなり続けたら何になる?
世界最強
それだ、世界最強になるには、学園のテストは高い順位を取ることなんて当たり前だ。
首席で卒業できれば、つまり学年で最強ということだ。
宮廷魔術師になるのも、世界最強への一歩となるだろう。
天啓が降りたかのようにすんなりと決まった俺は、その場でUターンして父上の書斎へと走った。
◆◇◆◇◆◇
「そうか、それならいいだろう。これで、お前を心残り無く送り出せそうだ。入学に向けて、精進しろ」
俺が考えたままを話すと、父上はそれを認めてくれた。
「ありがとうございます。これからも努力を続けていきます」
そう言って部屋を出ようとすると、父上に呼び止められた。
「2日後のパーティーに、ユバル公爵がお前を招待している。公爵令嬢がお前と話したいのだろう。準備しておけ」
年に2回ほど、ユバル公爵家がパーティーを開くのだが、3年前に初めて会って以来ミューがその度に俺を招待してくれているのだ。
そのおかげで、彼女とはかなり仲良くなれた。
ドールが言うには、この年代の貴族の子供は学園に入るまで友人ができることはほぼないらしいので、俺たちは運が良かったようだ。
パーティーでは、もっぱら魔法についての談義をして、どちらが強いか比べながら互いに切磋琢磨している。
「分かりました。では、失礼します」
用事も終わり、父上ももう何もないようなので、退出した。
そう言えば、ミューには何か夢はあるのだろうか、丁度明後日に会えるのだ。聞いてみるのもいいだろうな。
今日はもう特に予定が無い。しばらく暇だし、読書でもしようかな。
たまにインスピレーションが湧くことがあるので、読書は趣味になっている。本は元々家に大量にあるので、飽きることはほとんどなくて助かる。
読書で時間を潰した後、日課を済ませて俺は部屋に戻り、ベッドに転がって寝た。




