第16話 複合魔法
「では、そろそろ魔法の時間に入りましょうか」
今日の教養の授業を終えて、待ち侘びた魔法の授業だ。
早速、昨日やり残した分の複合魔法をどんどん確認していく。
残りの組み合わせは、火と水、火と雷、水と土、水と雷、土と雷の5組だ。
「どれから試そうかな〜」
この中の気になっている組み合わせは、火と水、土と雷だ。正反対の属性のような気がするので、どんな反応を起こすのか楽しみだ。
好きなおかずは最後まで取っておくタイプなので、先に他の魔法を使うか。
昨日ドールに貰った魔法陣を見ながら、魔法を構築する。
火と雷の複合魔法の『雷炎』から試してみる。
ドールから貰った事前情報によると、これは魔力操作によって動きを操るタイプの魔法らしい。
『火球』よりも操作性が良いが、その分扱いづらいらしく、魔力操作のいい練習になりそうだ。
魔法を発動すると、目の前に炎の塊が現れた。
「これを操るのか。うまく使いこなすには時間がかかるだろうなあ」
早速、魔法と繋がっている魔力を操作してみる。
しばらく適当にグチャグチャしてみると、それに合わせて炎の塊が変形しているのを確認できた。
「よし、動かせた。次はどう動くのか、規則性を見つけよう」
魔力をどう動かしたらどう動いて、質を変えたらどんな反応を起こすのか、しっかり確認しなければ。
先ずはそれぞれ単独で試してみて、基本的な操作を掴む。
その後に、幾つか組み合わせてどんな動き方をするかを確認する。
しばらく確認して、今日はこの時間中にできるだけ確認を済ませたいので、次の魔法だ。
水と土の複合魔法、『泥土』を使う。ラノベでもよく見かける、あの地面をドロドロにする魔法だ。
発動してみたが、何も現れない。もしかしてと思い、少し歩き回ってみると、案の定目の前の地面がぬかるんでいた。
「少し不安になったけど、成功だな。これまでのは具現化魔法で、これは現象魔法という事だね」
魔法は、最初俺がいた場所から2メートルくらい離れた場所に半径1メートルくらいの円状に発動していた。
どのような魔法か大体は掴めたので、さらに次の魔法に行く。
気になっているものを除けば次で最後だ。
水と雷の複合魔法の『雷湧』。水と雷の魔法と聞くと、なんだか危険な気がする。
さっさと使って確認しよう。
発動すると、目の前に水球が現れた。よくみると、その中に『雷風』と同じような稲光がパチパチしていた。
「この魔法は、『火球』と同じように飛ばすことができますよ。試してみてください」
観察していると、ドールが解説してくれた。
「うん、動かしてみる」
魔力を操って動かしてみると、適性の有無の違いで抵抗があること以外は『火球』とさほど変わらないことがわかった。
三つの魔法を試して、ようやく楽しみにしていた魔法を使う時が来た。
最初に、火と水の複合魔法を使ってみる。名前は『炎水』なのだが、正直全く予想できない。
水が燃えるとも思えないし、どうなるのだろう。
早速発動してみる。すると、黒光りして粘りっこそうな質感をした球体が現れた。それはタールのような臭いをしていて、少し息を止めないといけなくなってしまった。
「なんだ?これ」
火属性が入っているはずなのに燃える様子がないし、この球体も水とは思えない。
どうしたら良いのか迷っていると、ドールが助言をしてくれた。
「実は、この魔法は特殊で、少し他とは違うのです。飛ばして何かにぶつけてみてください。そうしたら、この魔法がどんなものか、わかるはずですから」
何かにぶつける?それで最後まで発動するのか。
条件分岐によって魔法の発動を左右するなんて、魔法陣はまるでプログラムみたいだな。
ドールの言葉に従って、金属の的に向けて魔法を撃ってみた。
魔法は的にぶつかった瞬間、突然飛び散り、的にへばりついたと思ったら、発火した。
その炎はすごい勢いで燃え、数秒経つと的は完全に火だるまと化した。
「凄いな、もしかしてこれ、石油だったのかな?しかし、どうして石油なんだろう。この世界にも石油があるのか?」
ブツブツと独り言を呟いていると、ドールがこの魔法について解説してくれた。
「この魔法について解説しますね。これは、燃える水を出して、衝撃を受けると飛び散り、対象を燃やすという魔法です。この燃える水は、かつて魔法実験の失敗で大規模な穴ができた際、穴の底を調査すると発見されたそうです。普通の水と違い、火をつけると燃えるのですが何故か水属性の魔法陣で再現できることが発展されました。複合魔法としてこの魔法が開発され、現在は様々な用途で使われています」
まさか、そんな歴史があったとは。この世界にも石油があったことは衝撃的だが、石油が見つかるほど深い穴を開けられるくらいの威力を持つ魔法があるとは。ロマンがあるな。
『炎水』がどんな魔法か分かったので、そろそろ次に行こうか。
最後は、土と雷の『雷塵』だ。この魔法は、名前を聞くと大体どんな魔法か分かったので、早速使ってみる。
発動すると、薄く膜のように現れた砂が、一瞬バチッと音を立てて、目にも止まらない速さで飛んでいった。
ものすごいスピードで、狙っていた木製の的が穴だらけになった。
何故金属製ではないかだが、金属だと傷がつくか分からず、威力を確認しづらいからだ。
「これで、複合魔法は全て試し終わりましたね。早いですが、これで学園入学までに教える予定だった内容は終わりです。本来は、もっと各技能の習得などに時間をかけて、後半年ぐらいかける予定だったのですが、リオン様がかなりやる気があって早くなってしまいました。ですから、明日からはこの時間は魔力の質を高めるために練習したり、私に質問したりする時間にしますよ」
これで授業内容は終わりなのか。
でも、魔法は自分で改造したり、一人でさらなる高みを目指すことができるから、良いのかも。
「では、今日はここで終わりますね。明日からは、教養の授業を少し伸ばして行いますので気をつけて下さい。では、失礼します」
ということで帰って行くドールを見送って今日の授業は終わり、自由な時間になった。




