第15話 夢
朝起きて、家族と朝食を摂っていると、父上がヘラ姉様に話しかけた。
「ヘラ、お前は2年後、王立学園へ入学することとなっている。しかし、私はただ入学させて3年間を無駄にさせるつもりは無い。私が何を言いたいのかというと、お前が学園で何をしたいのか、なんのために学ぶのか、お前の夢を考えておけ。期日は特に設けないから、考え終えたら私に伝えに来い」
父上がそう伝えると、姉様はその言葉を反芻して、父上に返事をした。
「はい、わかりました。何をする為に学園へ通うのか、私の夢をしっかりかんかしっかり考えておきます」
その言葉に、父上はゆっくりと頷き、そのまま朝食の場を終えた。
◆◇◆◇◆◇
しばらくして、兄様と雑談していると、姉様が俺たちに相談をしてきた。
「アレン、リオン、ちょっといいかしら。先程、お父様に言われたことで相談したいのだけれど・・・・・・」
姉様の言葉に、俺たちは二つ返事で了解した。
「相談?僕たちに出来ることなら、なんでも聞くよ」
「そうだぜ、3人よればナントカの知恵って言うし、みんなで考えれば良い案が出ると思うぞ」
俺たちのセリフに感動したのか、姉様は目を少し涙ぐませ、次の言葉を発した。
「ありがとうね、二人とも。じゃあ、一緒に考えましょう」
そう言って、俺たちは皆んなで姉様の夢は何が良いか考え始めた。
「どんな夢がいいかしらね。どんなことをしたい、どんなものになりたいかを軸に考えたら良いのかしら」
夢を考えるのなら、大体はそうだろうな。姉様が今、してみたいことやなりたいものが無いか聞いてみよう。
「姉様は、今何かしてみたいことってあるの?」
彼女は、オレの質問を聞くとキョトンと首を傾げた。
「今、してみたいこと?・・・・・・そうね、植物の研究をしてみたいわ。ドールが言うには、学園にはクラブというものがあって、それぞれのクラブ毎に特定の分野の研究ができるらしいの。だから、私はそこで植物の研究をしたいの」
なんだ、全然夢がはっきりしてるじゃん。
「それを父上に言ったらいいんじゃない?多分納得してくれると思うよ」
姉様にそう伝えると、少し困惑してこう言った。
「そ、そうなの?夢が、こんなのでいいのかしら」
「それも十分立派な夢だよ!学園で何をするのかも具体的に決まっているし、これなら父上も簡単に学園へ通わせてくれると思うよ」
「励ましてくれてありがとうね。それじゃあ、お父様に報告してみるわ」
姉様を励ますと、覚悟を決めたのか彼女は早速父上の居る部屋へと向かっていった。
その姿を見送って、家庭教師の準備をしようとしていると、つい今まで存在を忘れていたアレン兄様が俺に声をかけてきた。
「なあリオン、お前凄かったんだな。ヘラ姉様の相談を聞いて、さらに説得までしてみせるだなんて」
「へへん、凄いでしょ。そういえば、兄様には夢はあるの?」
褒められていい気分になりながら兄様に聞くと、意外な答えが返ってきた。
「ヘラ姉様が父上に言われてたからな、俺も自分なりに考えてみたんだ。俺ってヒュード家の長男で、父上にも跡継ぎを期待されてるだろ?だから、次代当主、領主として、胸を張れるようになろうと思うんだ」
めっちゃ立派なこと言ってるな兄様。俺が前世で12歳、小6だった頃は将来の夢なんて考えないでゲームばっかりしていたぞ。
「兄様も全然凄いよ。学園を卒業して、更にその後のことまで考えてるんだね。僕も、何か夢があった方がいいだろうなぁ」
何も目的がない状態でのんびり過ごすよりも、夢を持ってそれに向かっていく方が遥かに有意義だろう。
どんな夢にしようか考え始めたのだが、少し問題がある。
兄様は長男なので跡継ぎという具体的な将来が決まっているのに、次男である俺にはそういうのは無い。
なので、一から考えないといけないのだ。姉様も同じような条件だったのだが、持っている情報の量が全然違う。
前世の記憶というアドバンテージもあるが、それをうまいこと活用できるほど、俺は賢くないのだ。
将来の夢を考えるには趣味から広げて考えると良い、とどこかの本で読んだことがある。
今の俺の趣味といえば、パッと挙げられるのは魔法くらいか。趣味と呼んでいいか少し怪しい所だが、まあいいだろう。
魔法から広げるものって何があるだろうか。
魔法関連の職業を考えてみると、最初に出てきたのは宮廷魔術師だ。
王国の中だと、魔法使いとしてはトップで、目的としてはいいかもしれない。
だが、宮廷魔術師という目標だけでは少々味気ない。途中に幾つか目標を挟んだりして、学園に通っている間の目標を考えよう。
どんなものが良いだろうか。
学園生活で目標にできそうなのは、あるかはわからない定期考査での学年一位や、首席での卒業くらいか。
定期考査と聞くと頭が痛くなってくるが、何か実力を測る試験は必ずあるはずなのでしっかり考えないといけない。
とりあえず簡単な目標を定めたので、今は目の前の事に集中しよう。
そろそろ時間なので、授業の行われる訓練棟に向かう。




