第14話 なんじゃこりゃ
「複合魔法ですが、先ずはこれがどのようなものであるかを説明しますね。複合魔法とは、二つ以上の属性を含む魔法の事を指します。例えば、火と風、土と水のようなものが挙げられますね。これらは、魔法陣の属性を司る要素を、一つの魔法陣に纏め、それを発動することが求められます」
ふむふむ、やはり複合魔法を習得するのは難しそうだ。しかし、難しそうであればあるほど使いこなしてみせようという気持ちがどんどん湧いてくる。
ドールが話を再開し、また耳を傾けた。
「複合する属性ですが、幾つか制限が設けられています。先ず、各属性ごとの相性のようなものがあり、対になる属性、火と水や土と雷、白と黒の組み合わせなどは複合魔法として使用することは不可能です。これらは、互いに相反する性質を持っているため、魔法陣を描いたとしても先ず発動することが出来ません。次に、複合する属性の質は、揃える必要があるということです。しかし、片方だけの属性に適性がある場合ですと、魔力の質を揃えることが困難になります。ですから、属性ごとの魔力の質は、訓練して上げた方が良いです」
うお、覚えることが多いな。それだけ複合魔法が難しいということなんだろうが、この後更に魔法陣の作成が求められるはずだ。
先のことに思いを馳せながら話を聞いていると、ついさっきまで説明口調だったドールの雰囲気が変わった。
「ずっと話を聞くだけなのも嫌でしょうし、実践してみましょうか。簡単な火と土の複合魔法の魔法陣を準備してきているので、発動してみてください。魔力の質を揃えないと上手く発動しないので気をつけて下さいね」
おっ、遂に複合魔法を使えるようになるのか。上手くできるかは不安だが、当たって砕けろだ。トライアンドエラーで、何度も繰り返してコツを掴めばいい。
「では、この『熔岩』をお願いします。この魔法は、溶けてドロドロになった土が出てくるものです。危険なので、扱いには気をつけてくださいね」
ドールから渡された紙を見ながら、魔力で魔法陣を描く。
いつものように魔力を発動紋へ移し、魔法を発動させる。
すると、魔法を発動した場所に溶岩が現れた。それは、地面に落ちた途端、ジュウジュウと音を立てて地面を溶かし始めた。
「いいですね、成功ですよ。この調子で繰り返して、魔力の質を揃えることに慣れて下さい。意識せずともできるようになれば完璧です」
意識しないで出来るほどって、まじか。でも、複合魔法なんて将来性しか見えてこないものだし、それをする価値は全然あるのかも?
「うん、頑張るよ。兎に角、沢山練習して頑張らないとだね」
「ええ。わからないところがあれば、いつでも聞いてください。大体のことなら答えられますから」
なんて頼もしいことだろう。最高だな。
「適性のある属性だけでなく無いものとの組み合わせも試してみましょうか、こちらがそれです。交互に使ってみてください」
そう言われ、ドールから『熔岩』以外の複合魔法の魔法陣を受け取ったので、早速そちらも試してみる。とりあえず、今日は四つほど試してみるか。
水と風の複合魔法、『水風』を使ってみると、現れた沢山の水滴が、発生した風によって飛ばされていった。
なんと言うか、夏に自分に向けて放ったら気持ちよさそうだな。勢いもそんなに強くなくて気持ちよさそうだし、もうそろそろ暑くなってくるはずなので楽しみだ。
次に、火と風の『燐舞』を使ってみた。
この魔法は、発動すると火花のようなものが舞い出した。風属性との複合のため、発生した風が火花を煽り、不規則にチラチラと揺らめいている。
幻想的なその光に、見惚れてしまっていると、気づけば授業は終了する時刻となってしまっていた。
「リオン様、今日の授業はここで終わりです、お疲れ様でした。明日も複合魔法を試す時間は取る予定なので、今日1日で全て試そうと頑張りすぎないでくださいね」
「うん、まだそんなに魔法が使えるほど魔力ないし、程々にしておくよ」
「ええ、そうしておいてください」
最後に少し話して、無事に今日は授業を終えた。
とりあえず、今日は、最低でもさっき決めた数を試してから寝よう。
夕飯までに1、2個はできそうだ。
帰宅するドールを見送ってから、早速魔法を試し撃ちしてみる。
次に使うのは土と風の複合魔法、『石撃』だ。
これは、生成した幾つかの石を風で煽って攻撃する魔法で、発動すると目標の的に向かって飛んでいき、鉄板でできているその的を凹ませた。
「おお、そこそこに威力はあるんだな」
その凹みは、目を凝らさずともはっきり見える程深い。それが複数あるわけなので、まともに人にぶつかったりしてみろ。おそらく、タダでは済まないだろう。
この魔法に殺傷力が秘められていることに気づきつつも、特に興味をそそられなかったので次の魔法を使ってみる。
雷と風の複合魔法である『雷風』を使ってみる。いまいち、名前からどんな魔法なのかを想像するのが難しいので、イメージがつかないまま魔法を発動してしまった。
発動すると、魔法がバチバチと激しい音を立てて、小さな稲妻のようなものがチラつきながら飛んでいった。
雷を纏った風という、想像もできなかったその魔法は、何か将来性の様なものを感じさせた。
「興味深い魔法だな。これは、どうやって活用しようか」
工夫すればかなり面白そうな事になる予感がするのだが、どうしたら良いだろうか。
そう言えば、静電気を使ってホコリを取ることができると聞いたことがあるな。この魔法を応用できれば、掃除とかが楽になるのではなかろうか。
訓練棟に掛けられている時計を見ると、かなり時間が経っていた。今日の分の魔法は一通り使い終えたので、そろそろ寝よう。忘れないうちにアイデアをメモして、日課を済ませてから自分の部屋へ戻った。




