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第1話 どうしてこうなった



嗚呼、家出る時、母ちゃんにちゃんと行ってきますを言っとけばよかった。


父ちゃんや姉ちゃん、ロシアンブルーのミケにも、ちゃんと挨拶をしておけばよかったのに。


そんな後悔をしても、もう手遅れだ。


倒れゆく電車の中、押し寄せてくる人並みを眺めながら、朧げながらそんな思いが浮かんできた。


友達や家族にもバカだ鈍感だと言われ笑われる俺でも流石にこれは死ねると気付いた。


「だ、誰かっ、たすけ、」


固まってしまった口からなんとか声を絞り出して助けを求めようとしても、押し潰されて、思うように声が出せない。


もっと、後悔のない人生を送りたかったな。


高校生という人生のまだ序盤で死ぬことになってしまって、やりたい事がまだたくさん残っているのに。


もし来世があるのだとしたら、今度こそは、絶対に。やりたいことが全部できる人生を、俺は、望む。


自分が死ぬって分かっているのに妙に冷静だなと少し疑問に思いながら、少しづつ意識は闇に呑まれていった。















「◾️◾️◾️◾️◾️」


「◾️◾️◾️◾️」


何かの音だろうか?それにしては、規則性が感じられない。一体なんだろう。


暗闇の中で、俺は目を覚ました。

いや、目を覚ましたという表現は間違っていると思う。しかし、それ以外の表し方は俺は知らない。


とにかく、俺はいま謎の場所にいる。

体の感覚はあるが、何故か思うように動かせないし、何も見えないからどうしたらいいのかもわからない。


時折り感じる不快感には声を上げる事でしか対応できないし、謎の声?音?がたまに聞こえて、それらを和らげてくれるが、何が起こっているのかもわからない。


かなりの頻度で襲いかかってくる睡魔には抗おうにもまともな抵抗ができず、腹時計もまともに機能しないのでどのくらい時間が経ったのかも分からない。


謎の音も、聞こえてくるたびに別の音とすり替わったりして、たくさんの種類がある。


その中でも、最初に聞こえた二つの音のうち片方の高い音は、聞いていると安心感を感じる。



 意識が覚醒してから腹時計にしておよそ1ヶ月ほど経った。

 最近、暗闇が晴れてうすらぼんやりと目が見えるようになってきた。

そこには、忙しなく動き回る物体が三つほどと、定期的に現れる二つの派手な物体が映っている。

二つの派手な物体は時折り、こちらに棒のようなものを向けてくるのだが、それを掴もうと手を伸ばすとクスクスと音を立てる。



「◾️◾️◾️◾️◾️」


この音の意味はわからないが、その中に一つ、多くの音に共通する単語がある。それをカタカナに起こすと、リオンとなり、おそらくこれは何かを表しているのだろう。例えば俺とか。




何度かリスニングしていくと、その法則性がつかめてきたような気がする。前世で俺が学校で学んでいた英語の文法に似たものだ。


学校で英語の成績は悪かったので新しい言語を習得するのは困難だと思っていた。しかし、どこかで聞いたが赤ん坊は学習能力が高いらしく、俺もその例に漏れず5年程度で言語の大体を覚えた。


え?5年もかけてやっとかよ。遅すぎるって?


それには、たいして深くないが大事な理由がある。魔法を見つけたのだ。


この世界に生まれ落ちて3年ほど経って、俺は魔法の存在に気付いた。

それは前世で読んでいたラノベの魔法と同じようなもので、誰でも使えるらしい。


誰でも使えると言ってもそれは最低限だけで、どこまで強い魔法を使えるかは完全に才能と努力に左右されるらしい。


周囲の人たちの会話から聞こえて俺が理解できたのはここまで。しかし、それだけで俺の興味を引くのには十分だった。


半年くらいかけて、周りの目を盗んで家の中を這いずり回ったが、何も成果は得られなかった。

よく考えたらそりゃそうだ。3歳と少しの赤ん坊の手が届くような場所に、魔法の手掛かりが落ちているわけない。

しかも、それは多分本に書かれている。その時はまだ言葉もおぼつかなかったので本なんて読めるわけがない。


半年這いずり回ってようやくその真理に気づいた俺は、無駄な事をやめて、言葉の勉強を再開した。


そんなことがあったり色々俺の興味を惹くものがあったりで、言語の習得に5年もら時間をかけてしまったのだ。


「して、リオン。お主話を聞いておるか?」


ヤバい、そうだった。回想に夢中で話を聞いていなかった。


「申し訳ありません父上。聞いておりませんでした。」


俺の返答に父上は額に手を当てて、深くため息を吐いた。


「まあよい。リオンがこうなのは今に始まったことじゃない。それなら、今一度言うぞ。お前は今日10歳となった。貴族の家に生まれたものは10歳となった日に、魔法の才能を神官に診てもらわなければならない。その理由はお前には理解できないだろうから省略するが、早速お前はこれから才能を見てもらう。神官どのには、決して、絶対失礼な真似をしてはならんからな。分かったな?」


「は、はい。分かりました父上。」


最後の方はかなり圧が強かったが、なんとか乗り切った。


「よし、分かったならいくぞ。ついてこい。」


そう言われて、俺は急いで父上の後をついていった。


父上に連れられて馬車に乗り、体感時間にしておよそ30分程度揺られていると、馬車が止まった。


「着いたぞ。降りなさい」


「はい。父上」


どうやら目的地に到着したらしい。馬車から降りると、昔長崎へ旅行した時に見た教会と似たような建物がそこにあった。


「ここに、神官様がいらっしゃるのですか?父上」


「そうだ。くどいようだが、くれぐれも失礼の無いようにな。」


中に入ると、そこには白のみで装飾のないシンプルな服を着た老人が椅子に座っていた。


「ようこそいらっしゃいました。どうぞ、伯爵はそこの椅子にお掛け下さい」


「失礼します。」


父上はそれだけ言って老人の言葉に従ったけど、この人は何者なんだろう。


そんなことを疑問に思いながら、老人に誘導されて別の部屋へ連れられた。



 

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