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3 火伏せ辣湯という選択
「本日のおすすめはこちらです」
メニュー表を差し出す。
客は視線を落とし、ゆっくりと目で追った。
「火伏せ、か」
「内にこもった熱や、
心のざわつきを静めるスープです」
「医者向きだな」
さらりとした言い方。
「医者……なんですか?」
「一応ね」
“一応”という言葉が、引っかかる。
「それじゃあ、それを」
「かしこまりました」
厨房へ戻ると、朧がすぐ横に立った。
近いけれど、触れない距離。
「……あの客」
低い声。
「少し、気をつけろ」
「理由は……?」
「今は言えない」
それだけ。
私は頷き、鍋に向き直った。




