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1 昼下がりの千の実

昼の光が、千の実の床板に斜めに伸びる。


ランチの山を越えた時間帯は、店が一番“呼吸を取り戻す”ときだ。


私はカウンターの内側で、湯のみを一つひとつ布巾で拭きながら、深く息を吸った。


スパイスと出汁が混ざった匂いは、朝よりも丸くなっている。


(今日は、静か……)


この前の朝から続く、あの“気配”は今のところ顔を出していない。


何も起きていないことが、かえって落ち着かないのは―――

慣れてしまったからだろうか。


黒板のおすすめを、もう一度確認する。


本日のランチ

・火伏せ辣湯ひぶせらーたん

・柚子とクコの小さな薬膳ピクルス

・蒸し根菜の黒胡麻だれ

・棗はちみつラテ


(よし)


千の実の料理は、派手じゃない。


でも、“いま必要なもの”だけを、静かに差し出す。

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