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6 帰り道、影狼に触れる距離

店に戻るまでの道のりは静かだった。


月が高く、舗装のない道の土が白く光っている。


「冷えるな」


朧が言う。


「はい。

帰ったら温かいスープを作ろうかな……」


「そうですね。

朧さん、食べます?」


「……食う」


(食べるんだ……かわいい)


朧は普段めったに「食べる」と言わない。

妖は味より気に執着があるから。

でも“薬膳”は彼らにとって特別らしい。


しばらく歩いていると、朧が突然、私の腕を軽く引いた。


「危ない」


影が、道の端に揺れていた。

イタズラ好きの狐妖の残り香。


「今夜は“境”が薄い。

戻るまで気を抜くな」


「朧さんが守ってくれるんじゃないんですか?」


冗談めかして言うと、予想外の返答が来た。


「守る」


即答だった。


私は一瞬、足が止まる。


「……今の、“仕事”じゃなくて?」


「違う」


月の光が、朧の横顔を縁取った。


「俺は、借金取りとしてではなく―――」


そこで朧は言葉を切った。


少しだけ迷い、けれど確かな声で続ける。


「お前自身に興味があるから、守る」


一拍遅れて、胸がどくんと鳴った。


周りの空気が一瞬だけ止まったように感じる。


「そ……それ、どういう意味……?」


「まだ言葉にする必要はない」


朧は歩き出す。


「半年ある。ゆっくり考える」


(朧さん……?それって、もしかして……)


月と影が揺れる帰り道。


“半年”という言葉が、今までとは全く違う響きを持って私の胸の奥に沈んでいった。

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