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34.『明確な不死の敗北』

「ひゃはははは! ああ、どのアクタも良いアクタ! 殺せば殺すほどいい記憶(味)がするじゃない! もっと殺しましょう」

『ご主人様! 殺し回ってもキリがないですよ! と言うか無限に増えるデカ女にどうやって勝とうとか思っているのですか!』


 街中に蠢くアクタを殺し記憶を奪い走り回るアオケシ、鉈から伝わる記憶は、幸せな夫婦の記憶から、それを追い込む借金取りの記憶、そして最後は必ず、アクタになり自分を求めて増え続ける烏合の記憶。

アクタを探しながら、アオケシはどうしてか楽しんでいた。


「勝つぅ? この世界で、アクタをぶっ殺しまくって、普段は、メハジキとの契約で、民間人は殺して記憶が奪えないけどサ! みんなアクタになって私を襲うなら正当防衛よね! こいつら全員ぶっ殺して、世界は平和、私は、記憶奪い放題! 一石二鳥なんだから! 全員ぶっ殺す! それだけでしょう!」


アクタと飲み歩いた屋台街に蠢くアクタ達をアオケシはまるで、ヤキトリの串を食べるような感覚で、殺していく。


『全く、タガのはずれた狂人……あーははは、最高ですね。あの女、ご主人様が自分を追って駆け回ると思っているのに、当の私たちは、屋台街でデートしているなんて思わないですわ! ジャンジャン殺しましょう!』

「レッツバイキング!」


酒を飲んでいるアクタ、アオケシを襲うアクタ、商売をしているアクタ。

アオケシは、皿の上の食事を一つ一つ入念に殺す(味わう)。

アクタの悲鳴は、今のアオケシには聞こえない。

黒いローブや緑色の仮面は、すでに返り血で赤く染まっていた。


「アオちゃ……」

「アナタは、アクタじゃない。美味しいヤキトリ」


鉈は、肉の山を積み上げアオケシはゆっくりと歩いていく。

心地い気分。

楽しい気分だった。……今の今までは。


「アオちゃん! 私を見なさい!」

「なに? 有象無象が……あーね。流石アクタ、私が的確に嫌がる事を」


アオケシは、少女の首に当てて、脅すアクタを見て、顔が歪む。

少女は、以前アオケシに花をくれたアサガオと言う名前の少女であった。


「さあ、アオちゃん! 私のモノに……」

「『取り出し』『収集』」

「きゃああ!」


刹那アオケシは、脅迫をしていたアクタの首のあった空間に鉈を出し、収集で元に戻す。

アクタの首は吹き飛び、少女は怯えたような目でアオケシを見る。

背後でマリーが、小さく息を呑んだ気配がした。


『(あれは、普通の子なら一生モノのトラウマね)』


しかしアオケシには関係が無い、走って、アサガオの元に走る。


『ご主人様ったら全く……』

「アサガオちゃん……だっけ? 大丈だった? ごめんね、怖かった? あれ、お兄ちゃんは? はぐれちゃった」

「ありがと……う、ございます。ヒック、うええぇぇぇぇぇぇん! おに、お兄ちゃん! お兄ちゃん。わた、私を」


泣いて話にならないアサガオであったが、アオケシは、アサガオを人質に取っていたアクタの記憶から全部を知る。

その記憶は、アサガオを守りアクタに攫われる兄を見送る、人質を取ったアクタ。

そして、アクタの言葉であった。


『私たちの故郷のゴミだめ、また親の居ない子供が集まっているんだって、ここで私が全員私にしてあげる。いやなら早く来てねアオちゃん。夕方には、私たちしかいなくなっているかもだから』


……嫌悪感がアオケシを支配する。


「おねえちゃん?」

「ああ、最悪。ねえ、君は私が怖くないの?」


アオケシの優しい声に、アサガオは細々と答える。


「こわいけど……お兄ちゃんがいない方が怖い」

「そっか。ならこれを持っていて」

アオケシは、トリカブトからもらった携帯電話をアサガオに渡す。

「こ、これは」

「頼れる大人が助けてくれるわよ。だから、ここに隠れていなさい」

「うん」


アオケシは、大きな廃材入れの中にアサガオを入れると、一直線にゴミ山の方向へ走り出す。


『うへー、やっぱりご主人様の子どもへ向ける感情は萌えですね』

「うるさい!」

『照れてます~? 可愛い』

「違う。怒っているの。本当に怒っているの。子供は知識の可能性、可能性を読み切る前に打ちきりなんてありえない!」


アオケシの顔から、笑顔が消えていた。

仮面を被っていて本当によかったとマリーは思う。

アクタの顔は、今まで見た中で一番、恐ろしいほど感情が無く、それでいて。


『(私好みでございましたわ~)』

マリーの性癖を壊しに行っていた。

そんなやり取りをしながらもアオケシは、故郷のゴミ山に一直線で向かっていった。

道中現れるアクタになど目もむけずに。


*********************


「あー、痛いな。賢者ちゃんは、あのフキとか言う暴力の塊に殺されているし、アオちゃんは相も変わらず……健吾たちはうーん、望み薄かな。アセビ君はどう思う?」


 アクタは、ゴミ山の上、アサガオの兄、アセビの首に、緑色に輝く謎の液体の入った注射器を自分の膝の上に座らせ独り言のように話をする。

アセビは、怯えて声も出なかった。


「あ、やだ……やめ」

「はいダメー。ママの言う事にはちゃんと答えるの。ちゅうー」

「あああああああああ! 痛い! 痛い!」


アクタは、注射器の液体をアセビの首に差し少し入れるとアセビは、全身の血液が沸騰するような痛みに絶叫をする。


「うふふふ。全く、そんなに褒めても、駄目ですよ~。あ・せ・び・く・ん」

「はぁ……はあ……いた、いたいよ」


アクタは、苦悶で泣き叫び失禁までしてしまうアセビの絶叫を聞くたびにまるで好きなものを食べるような喜びを感じる。


「ほーら、まだまだ、頑張らないと……きゃあ!」

「……見つけた。お前が本体だな」


飛んでくる鉈に右腕を飛ばされたアクタ、右腕は新しいアクタとして生まれ代わり、なくなった右腕も、見る見るうちに回復している。

アクタの目の前には、何も感じない冷たい魔女、アオケシが立っていた。


「わーいアオちゃん! 本当の意味で久しぶりぃー! 本当の意味での本体の私アクタでーす。いやー、アオちゃん、大きくなった? おっぱいとか」

「『収集』『使用』」

「あーブヘ! あははいくら殺しても私の分身は、この世界に軽く5万人はいるよ。殺したって無駄だって……ぎゃ!」

「死ね。私は、お前を許さない」


アオケシは、収集で武器を引き寄せアクタの首を落とし、すかさずよみがえったアクタの額に使用により何もない空間から出てきた手斧がアクタの首を再度切り落とす。

物の10秒、すでにアクタは二度の死を経験していた。


「やだなー。許すも何も私は、故郷で親友と会うために今までいろいろ手回しをしたのに~。ひっどーい」

「手回し? どうせ、私を最初に殺した憲兵たち、菫三色は、私が裏で~とか言うのでしょう。つまらない。相変わらずワンパターンな女」

「むー、そのネタバラシが良いんじゃない!」


アクタはいたずらに頬を膨らませるがアオケシはそんなことを一切無視して、ゴミの山を一気に駆け上がる。

そして、今までの出来事のほとんどは、アクタが仕組んだ出来事であった。その事実を聞いてもアオケシは動揺しないどころか、鉈を握る強さが強くなる。


「死ね。今すぐに。私の記憶に居座るな」

「やだ~。全力で、アオちゃんに私は、トラウマを与えて一生あなたの中に居座るんだから~。ね、私はあなたがだぁ~い好き」

「……貴女が好きなのは私じゃないでしょう」


アオケシは、アクタの死体が積み上がった山の上、無表情な仮面を脱ぎ去り、見せるその表情は嘲笑であった。


「ローズ」

「はぁ?」


刹那、アクタの余裕そうな表情は、一瞬で崩れる。

感情。

怒りと言う感情であり、アクタにとって、呪いでしかない名前。呪いでしかない前世。


「やだぁ~転生した癖に転生前のこと忘れちゃったの『ローズ』私は、『ポピー』あなたを愛してやまないのよ」


アオケシは、アクタの歪む表情を見て、嗤うのを必死に我慢する。

ああ、アクタってこうやって怒るんだ。

それを知れたアオケシは、楽しくてたまらなかった。


「私は、アクタ。アクタ! ローズじゃない! ローズ、ローズ、ローズ。なんで、私はアクタよ! アクタだからアオちゃんが好き! だからローズがポピーに惹かれたようなものじゃなくて、これは、わた、私の、私のモノなの!」

「(ああ、やっぱりか)マリー、お前はすごいよ」

『は、はい。え、なんですの急に』


前世の記憶。

それを扱うかは、転生後の本人次第であった。

マリーは、最も健全な転生であった。生まれた時から、前世の記憶を自分と受け入れ、前世の自分としてふるまう。

だが、アクタは真逆であった。

アクタと言う自我とローズの自我。両方が混在して自分の存在認知を揺るがす。

なによりも自分の存在が壊れる。

これほどに怖いものは無かったのだ。


「私は、アクタ。私たちもアクタ。でも私は、ローズで、私たちはローズ。あれ、私はポピー……アオちゃんが好きで。あ、あああああああああああああ」

「本当に脆い子『ローズ』。私、『ポピー』ちゃんと約束通り帰って来たよ。ただいま」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」


アオケシは、冷たい目でアクタに前世の記憶を話す。

問い、ならばアオケシは前世の記憶をどう思っているか。

回答、過去、情報。武器にできるならする。全部思い出せないからこそ、その先が気になる。

アオケシは、アオケシでしかなかった。だから、前世、ポピーとしての記憶だって怪我して犯して、武器にする。


「『ローズ』ごめんね」

「私はアクタ……アクタ……アクタアクタアクタアクタアクタアクタアクタアクタアクタ」

「ローズ……ごめんね」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


刹那、アクタは、正気を失いアオケシを睨む。


「私はアクタだ! 出し惜しみなんてしない!」


アクタは、体調が悪そうな表情と嬉しいという表情がごちゃ混ぜになった顔で、手を大きく振るとゴミ山の中から、右半身がアクタもう半体が元となった子どもの姿をした生き物とすらいえない何かがアオケシを襲う。


「アクタだ」

「私はアクタ」

「ローズじゃないアクタたちなんだ」


子ども。

知っていた。まだ助かる見込みのある子どもがアオケシを襲う。


「あー、本当最悪。完全に取り込んでくれてれば、助かり見込みがないと判断して殺せるのに……助かる見込みがあるなら私は殺せないわ……」


アオケシは、襲われる直前、マリーとの一体化を解くと、グリモワールの姿にして安全地帯に投げとばす。


「ご、ご主人様も早く脱出を!」



「あとは自由にしなさい。逃げても良いけど……できれば私を助けて……マリー」



「いや、待って! 私は裏切るかもしれないのに、アンタは馬鹿ですか!」


「任せたわよ……」


アオケシは、子どもの牢獄に閉じ込められる。

殺してもいいが、目の前のまだ見ぬ知識の可能性をアオケシは捨てることなどできなかった。

アオケシは、子どもの肉片の集積体に包まれ、そこにはアクタとマリーしかいなかった。


「……これで私は、アクタ」

「おい、デカ女」

「な~に。私、あなたには興味ないの~。逃げてもいいし、戦いにでも来れば? どーでもいい。ほら、ちゃっちゃと決めて」


安心しきったアクタは、マリーになど興味もなく適当にあしらう。


「……いや、この世界、私は、転生ストリートファイトと命名した。そんでこの世界では私が主人公。お前みたいな三下に無下に扱われるとよぉ……むかつくんだよ、その態度ローズちゃん。ポピー軍医は、だから帰ってこなかったんだよ!」


アクタの表情がこわばる。

なぜ無関係な目の前のマリーが、アオケシとアクタだけしか知らない記憶を知っているのか。

はらわたが煮えくり返るような気分だった。


「私はアクタ! アナタはどこまで私の記憶を!」

「全部知ってるよ。だって、私はよぉ! ご主人様と全部一緒に、あの人の前世を見てきたんだからよぉ! ひゃはははははは、ざんねーん、実質、私もポピーちゃんでーす。ざんねーん、愛しているわよ! ローズちゃあぁぁぁぁん」


史上最悪な転生劇。

マリーは、アオケシと前世の記憶を共有しており、同じレベルでポピーを認識していたのだ。

つまり目の間にいるのは前世のポピーその物であった。


「ふざけるな! ふざけるな! 間に入ってくるなよ! 入ってくるなあああああ!」


アクタは自分の体が触れているゴミ山のゴミを自分の姿に変え、マリーを襲う。


「ひゃーはははははははは! 最高よ! 最高の挑戦者じゃないローズちゃあぁぁぁぁぁん」


マリーは、マシンガンを乱発し、アクタの集団に勝負を挑む。


「死ねええエェェェェェェ」

「ラウンド2よぉ! ローズちゃん!」


前世の記憶から始まった死闘は、史上最低の二回戦によって話は進んでいくのであった。


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