33.「コンプラなる世界でこれはいいのか?」
作者、コンプラを気にしすぎて薄くしてます
「ええい開けろ! お巡りさんやで!」
ドラセナは勢い任せに執務室の扉を破壊すると、そこでは執務室に座り仕事をする健吾と、その横で手伝いをするアクタがドラセナの方に顔を向ける。
「ああ、メハジキさんにドラセナさん。久しぶり、どうしたんだい?そんなに慌てて」
「……健吾さん。こちら、紅茶でございます」
「ああ、ありがとうねアクタ」
アクタにお茶を貰った健吾は優雅にカップの中身を啜る。
相変わらずの笑顔であるが、この喧騒の中でも崩さないその表情は、もはや狂気でしかない。
「なに言いっとんねん! こちとら、街の私物化、および犯罪者誘致の罪で逮捕ゆーとんのに、茶シバくなやボケ!」
「おっと失礼。気にしないでよこれは僕なりのラスボス像なんだから」
「何がラスボスやって? あほ言うな! ボケ!」
「待てドラセナ!」
ドラセナは、メハジキの制止を振り切り勢いよく剣で健吾に切りかかると、健吾は一瞥して、ドラセナに一言を放った。
『人がお茶を飲んでいるのに、騒がないでよ』
「が! なんで体が動かないんや」
「ドラセ……ちい!」
メハジキもドラセナ同様動きを封じられると健吾はゆっくりと立ち上がり日本刀をドラセナ名の首に当てる。
「反省ですよ。僕は、異世界から来たーチート持ち。『反省』なんていうクソスキルから成り上がり、勇者になった男ですよ。じゃあ、さようなら」
健吾が日本刀でドラセナの首元を切ろうとした瞬間、ドラセナの体は勝手に動き出す。
そして日本刀は空を切るとしゃがんでいたドラセナが健吾に蹴りを入れようとするが、健吾はその蹴りに反応して、日本刀でその蹴りを防ぐ。
「おや、反省してくれないんですか」
「あほか! 達人は、常に自分の行動に反省しながら自己研鑽をするんや。オカンに怒られて反省するうちは、まだ二流や! ボケエ! メハジキぃ!」
「『体感時間減速』『加速』『停止』悪いですが、捕まってもらいますよ健吾さん!」
メハジキが健吾に殴りかかろうとすると下の階にいたアクタとは少し目つきや体格の違うアクタが鋭い目でメハジキの攻撃を防ぐ。
「僕の大切な仲間には、指一本触れさせません」
「なんだ? さっきの劣化コピーの一体? 下の地獄(フキ先輩の所)に行ったらどうだ?」
メハジキは、体を人間ではありえない速度で動かし他と違うアクタに攻撃を入れるが、アクタはすべて、素手で受け流し健吾を守る。
「僕は勇者健吾の武道家。名前は……パウ……ああ、そうだ僕は、もう僕たち、アクタと申します。僕たちは、彼女の本体から祝福を受け、彼女になった!」
「なんだよ。喋り方が違うだけでアイツじゃねえか」
「違う! 僕たちは……僕だ!」
武道家のアクタ……武道家は、メハジキに連続で腹や顔など急所を的確に狙い拳を入れる。メハジキは、時間のグリモワールを使っていなかったら、確実に死んでいた。
「ちい……めんどいわコイツら。メハジキ、一緒に協力しようや」
「元からそのつもりだ。俺が合わせるから、ドラセナは、達人の書を好きに使え」
「せやな……ってうぇ! 自分ら何やっとんねん!」
距離を取ったメハジキとドラセナは、お互い魔導書での戦闘のため息を合わせようとするが、距離を取られた、武道家と健吾は、抱き合いお互いの唇をむさぼりだした。
「くちゅ……あふ……ぷは! しょうがないだろう。僕は、他の僕たちに比べてアクタの進行が遅くてね。拒絶反応を起こさないためしかたなく」
「うーんゴメンね。武道家ちゃんは、アクタの浸食が始まる前から僕のことが好きな片思いだったから、こうやって、僕の彼女の一人としてどうかしてくれたからね。たまにご褒美を上げてるんだ」
「やめ! こ、興奮するじゃないか! ご褒美頂戴! いっぱい僕は僕たちを増やしたい」
戦闘前に興奮しきった武道家のアクタであったが健吾はやさしくそれを制止した。
「ほら、彼女が怯えているじゃないか。女の子の体になったばかりで怯えているんだ。そう言う荒い言葉はやめてくれないかい?」
「ぐげぇ! じゃあ、こいつは元々男なんか。きっもおぉぉぉ!」
ドラセナは、ストレートに悪口を言うと武道家のアクタは、嫌悪感を露骨に見せる。
「僕を馬鹿にするのかい? それは、この世界でもちょっと配慮に欠けるよ。僕は、健吾と繋がれない体だったのに、アクタのおかげで健吾と繋がれる。健吾と一緒に新しい僕たちを産むことができるんだ。ああ、なんて素敵なことなんだろう。僕の子ども達は、けなげに今も下の階の化け物と戦っているのに。僕の子ども達、全に比べて、君たち個は、なんともおろかだ」
「そう言う事。僕は、僕が好きな人間が好きだ。性別で区切られる世界はおかしいでしょう。だから、アクタと僕は、みんなを最善な形に調整をしたんだ。あはは、おかげで子だくさんになって大変だよ」
笑って話す健吾であったが、メハジキはそれを聞いて表情がまるで氷のように凍てつく。
「おまえ、正気か? あのアクタたちが全員お前の子ども? 子どもを質に送って何が楽しいんだ?」
「いや、子どもって大げさな。僕は、アクタの一部を勇者として受け入れた。いわば男性版のアクタその物、他のアクタと違って全ではなく個になる代わりに、全のアクタと無限に生殖行動を行い、大量の全のアクタを生み出すことができる個体。ほら、元居た人間を侵食するだけじゃアクタを増やすには効率が悪いからね。そう言う意味じゃ、他のアクタよりも強いよ」
吐き気を催した。
人間の行動原理の一つ、種の繁栄。それをアクタと健吾は平然と犯していた。
生み出された個体には、この意思はなく、全のアクタの一部として増えていく。
まるで働きバチのような社会性のある生き物の生存戦略の様であった。
「おい、健吾さんは、人をなんだと思っている?」
「うん? 僕とそれ以外だけど、それ以外が多すぎるんだ。だから僕は、アクタと協力して、僕以外を全部アクタに帰るんだ。そうすれば、管理もしやすい。そうだろう、それ以外」
「そうだな。自分と、それ以外それはそうだろう。だけどそこから先は同意できない」
メハジキは、クロノワールの開かなかったページを自然と開く。
「だから、死ね! 俺はお前に興味が無い!」
自然に出た同居人のような言葉にメハジキは呆れながら時間のグリモワールの新しいページを開いた。
「『スキップ』」
「痛いな! なんで君は僕の反省が効かないんだい?」
刹那、メハジキは、健吾の後ろに瞬間移動をして、回し蹴りを入れる。
明らかに入った一発だが、健吾は、少し顔をゆがめる。折れた首から、小さなアクタの様な姿の虫が這いあがり、健吾の首を元の形に戻す。
「ちょい待ち。なんや、アオケシちゃんみたいな力もっとるやん、勇者はん」
「ちぃ……仕留めそこなった」
「まあ、僕は、個のアクタであり健吾だから、僕が死にそうになると全のアクタが一人減って、僕を復活させる。つまり君は、無制限の僕たちに勝たないといけないんだよ」
目の前にいる化け物にメハジキは、一言毒を吐いた。
「胸糞わりい」
空気がよどむ執務室。
健吾は、反省もせずつらつらと自分の考えを話し出す。
「胸糞悪いのは君たちだよ。僕たちの愛のカタチすら否定するんだ。男が女になって僕と愛をはぐくむ。それを何の理念もない君たちは、言葉で否定するけど、中身が無い。それこそ胸糞は悪いし、虫唾が走る。君たち反省して僕の下に付かない?」
「……そら、俺達には、信念なんてまともなものはないわ。魔王の書を消すためだけに集まったはぐれもの。俺とメハジキは同郷で色々見たけどな。人間は、なんもない。それでええやん。思ったことを口にして喧嘩する。それが人間なんやで」
「ドラセナ」
メハジキと、ドラセナは、お互いの産まれを思い出し、嫌悪感を口にする。
なにがあったかは話したくもない、クソみたいな幼少時代を思い出し、怒りを沸々と沸騰させる。
「君は、僕とそれ以外の愛を否定した。君たちは愛し合えなかったんだね」
「うぇ! 俺とメハジキがそんな関係とか無いわキモいな。それは愛なんかないで、感情も行動も管理されて、それのどこが人間なん? 俺はお前が嫌いや」
「じゃあ交渉相は決裂だ」
こうして執務室には大きな音が響き、お互いの信念を拳と剣に込めた四人の攻防は激化していったのだ。
「もっかい言ってやるわ。きょいねん! 男同士!」
「おまえは……」




