32.「もっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかい」
「敵襲よ」
「ヤダわ……。困ったわ」
「「ぎゃあああああ!」」
無尽蔵に沸き上がるアクタ達が落果の領事館を完全に支配していた。
そんなアクタを容赦なくロケットランチャーで吹き飛ばす『罰』、フキは『罰』の弾薬の争点などサポートに回っていた。
「なはははは、殺しても、殺しても一杯だぞ、フキ!「すごいですー。どんどんやっちゃいましょー」」
中央監査機構特殊部隊の紅一点であったフキは、笑顔で肉塊を見て喜ぶ。
「おい! フキさん!『罰』を制御してくださいよ! これじゃ作戦がめちゃくちゃです!」
「僕は止まらないぞ!「そうですよ、こんなに楽しいのにやめろなんて私は『罰』くんに残酷なことは言えません~」」
フキは、まるで兄妹とおもちゃで遊ぶ感覚で建物を破壊していく。
その姿は、どっからどう見てもヴィランそのものであった。
「あちゃ~だめやな。先輩方、完全にスイッチが入ってもうてるわ」
「……そ、そう言うお前はもっとやる気を出せドラセナ」
ドラセナは構えることもなく剣を一本持ちあくびをする。
メハジキは、この温度差に嫌気がさしていたが実際遊びを出した『フキ』を止めようとするには、トリカブトがいなくては、絶対に収まることは無い。
「まあ、諜報の達人は、かなり疲れるんや……許してくれへん? ホレ」
「たく! こうなる前に調べておけって言っただろう!」
メハジキは爆風がやまない領事館でメハジキから受け取ったデータ端末を確認した。
『信仰』のグリモワール。
黒薔薇の表紙を調本されたグリモワール。
司る魔法は、信仰。
宗教関係者により秘匿され受け継がれていた。契約者は、肉体を侵食され人格が『信仰』のグリモワールに完全支配される。
能力は信仰による無尽蔵なエネルギーの発生。
教団はこのエネルギーを糧に教義の拡散をしていくが、『信仰』のグリモワールを多用した宗教団体は軒並みぷつりとある瞬間から存在を消してしまう。
「無尽蔵なエネルギーって使い方がこんなキモい自己増殖なのかよ」
「知らんわ。エネルギーが未知のものなのかもしれへんし、違うかもしれへん。そんなんグリモワールに常識を聞いたところで、俺達が理解できるわけあらへんやろ」
「まあ、目下俺たちの先輩であるグリモワールのことすら理解できないんだ。とにかく俺たちは、アクタ大司教の殲滅、それと今回の事件を引き起こした容疑者である勇者、大洲健吾の確保……生け捕りが目標だからな」
「分かっとるけどあれどうするん?」
「あーははははは「ゴーゴー罰君」」
罰のグリモワール。
性格、見た目は、所有者の鏡となり、所有者と一心同体になる。
所有者が温厚であればあるほど保有、管理がしやすい。
「……フキ先輩、あの勇者嫌いらしいし、結構張り切っとるな」
「史上最悪のグリモワール所有者……せめて、任務ぐらいは覚えていてほしかった」
罰のグリモワール所有者フキ。
見た目は、はかなげな少女であるが、その正体は、史上最悪のグリモワール所有者。
暗殺稼業の一家に生まれ、殺しを遊びやゲームと同じ系列で見ている異常者。
あまりに危険な思想から家元から殺処分される予定になっていたが、ガラスの破片一枚で家族を皆殺しにしあげく封印されていた『罰』のグリモワールを奪取。
トリカブトの活躍が無ければ今頃地図から国が一つ消えていたとまで言われるサイコパス。
「痛!「『罰君!』」」
「ちょっと怪我を……ふ、フキ。ちょっと落ち着いて「一体化」」
フキは、罪の顔に傷がついたのを確認すると『罪』が逃げようとするのを無理やり掴み自分の身体の中に取り込む。
「あ、あかん! に、逃げるで! メハジキ!」
「ああああ、ちくしょう! なんで俺の知り合う女はみんなこうもおかしいんだよおぉぉぉ」
メハジキとドラセナは、フキが起こったのを確認すると大慌てで、大広間から二階に向かって全力で走り出す。
『罰』が特殊部隊で一番強いと言われる所以は攻撃に対する完全カウンターではなく、フキによる一体化が原因である。
フキは片手に小さな木槌を持ち瞳孔が完全に開いていた。
「私の罰に……よくも……いいなああああいいいな。あたまわるなってきた」
どがん!
あまりに鈍い破壊音と同時に地面がえぐれ、一人目のアクタの前で木槌を振りかぶる。
そして降り下ろした瞬間アクタは、血塵に変わっていた。
「魔女裁判『石打』。たのし~。もっと、もっと」
「こいつはイカレ……ぎゃ!」
「わ、私が……ぎゃあああ」
カウンターは、罪に対する罰。
しかし罰は、過去何度も罪のないものを罰してきた。
一方的な断罪裁判を人は、魔女裁判と揶揄し歴史から消そうとした。
「たのしいぃ。たのしい」
だが歴史は繰り返す。
『罰』が公正な裁きであるなら、フキは理不尽な裁き。
一体化により完全カウンターは、一方的な理不尽な破壊に変わる。
「やめ! 俺は、アクタ様になってな……」
「もっとあそぼ『象足』あとねぇ『火刑』」
「ぎゃあああああああ!」
刹那、銃を構えた事務員の男性は、頭から何かに踏みつぶされるように潰れてしまう。
理不尽な刑罰を与える『罰』、今まで完全カウンター、防御系の極致と言われていた罰のグリモワールは、フキにより、一部が変質してしまい、理不尽な物理攻撃を無制限に打ち込むあまりに勝ちようのない悪夢となっていた。
「あは、おねーちゃん。あーそぼ」
「ひ! わ、私たち逃げ……ぐげえぇぇぇぇ」
「わんわん! たのちい」
「な、なに……あ、アナタ。正義の味方じゃないの! こ、こんなことして」
「あは」
フキを中心に縄がばらまかれ、アクタ達の首に巻き付くとその縄は限界まで引っ張られる。
「もういっかい、もういっかい」
「しょうがないですね。私たち、いまこの場にいる私たちは集合! 一つになって倒しましょう! こんなの、猛獣の折に入れられているようなものです! 猛獣には私たちも」
「おいしそ。ぱく」
「は……いや、まって、まって! それはぎゃああああああああ!」
フキは、アクタに噛みつくと肉を食らいだす。
他のアクタが、フキに襲い掛かろうとするが、そこに残るのは、肉片のみありとあらゆる理不尽が、アクタたちを襲う。
「もっかい、もっかい」
「やめ」
「もっかい」
「痛いの。私たちは確かに主人核に作られた存在だけど意思もあるし痛むの。ね、だから。やああああああああ」
「もっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかいもっかい」
無数に存在するアクタは、増えては死にを繰り返し、綺麗な一階のフロアは、気が付けば臓物土地にあふれた地獄に変わっていた。
「今更だが、隊長は良く、あのフキ先輩を手名付けられたよな」
「ま、まあ、いっぱいいる大司教は、フキ先輩に任して僕らはいきましょか」
アオケシと言いフキと言い悪夢や理不尽を押さえつけているトリカブトには絶対に逆らえないと思うメハジキとドラセナは、健吾の部屋へ一直線に走っていった。
「もういっかい。もういっかい!」
木槌の音は、次第に油や肉片をミンチにする音に変わってきていた。
そして、気が付くとそこは無音。
「……おミンチですわ」
「ドラセナ、マリーみたいなこと言うな」




