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31.「大物取」

「はい、おかえりー。どうよ、道徳の授業の成果は」

「まあ、道徳も捨てたもんじゃないですわ」


 廃ラブホテルの一室、マリーは、収集したアオケシを異空間中から取り出すとトリカブトの前に丁寧に置く。


「さてと、アオケシを助けたことで事件解決は9。だがあと一個解決前に、このくそったれた新人は、あのグリモワールのおかげで死んだほうがましな末路になる訳だが……」

「うぐ……ぐ……」


アオケシは、アクタの一部を飲み込み、意識を失っていた。

肉体の一部は、謎の肉片に入れ替わりはじめ、手差しの先は、すでに人とは思えない何かに置き換わっていた。


「冷静ですね。つまり、ここからご主人様を助けられると」

「……マリー。アオケシの首を切り落として殺せ」

「つまり、入隊試験はまたやり直しと」

「いやいや、ウチの組織、仲間殺しはご法度だよ。入隊試験中のお前らが殺せば二人そろって封印が行われる。当たり前だよね」

「……」


マリーは、一瞬思考が止まる。

アオケシを殺して助ければ、封印。だが助けなければアオケシは、アオケシでない何かに変わってしまう。

マリーは、ごくりと生唾を飲む。


「ど、どうすれば。たすけて……」


自分だけ封印されるなら構わない、だが、ようやく見つけた小さな幸せ。

これを捨ててまで何かを救う決断がマリーにはまだできなかった。

マリーには。


「な、ならこうよ……へんしん……」

「へ?」


マリーは、刹那自分の体がアオケシの服となる懐かしい感覚を覚えるとアオケシは、意識がもうろうとして今にも違う自分が表に出てきそうな状態で無理やりたちあがる。


「おいおい新人。どういう要件だ、物騒な武器まで構えて、おじさん死んじゃうぞ」

「やだな……とーちゃん。私は……二日間も監禁されていた、カワイソーなマリーを助けただけ。マリー監禁罪! マリー監禁罪でとーちゃんは確保よ! 無駄な抵抗をするなら容赦しないわよ!」


トリカブトは、茫然とする。

だが、事情を理解して、何もすることなく両手を上げる。


「……よくやった。アオケシ」

「ぎゃあああああああああ!」


そして次の瞬間、アオケシの全身から、手術用のメスがおびただしい量湧き上がりだす。

それは彼女の心臓や血管、内臓を全て強引に突き破る。


『ご、ご主人様! グハ! 何やって……せっかくあとちょっとだったのに……グハ』


そして穴という穴からアオケシは、血を吐き出し、胃の内容物なども垂れ流し苦悶の表情に満ちて、アオケシとマリーはその命を終える。


「……合格だ。ようこそ中央監査機構特殊部隊へ」


トリカブトのその言葉を聞いたアオケシの死体。

脳みそを起点に全身が生き物のように蠢きだし、失った臓器や肉体を元の形に戻していく。

そして魔女の格好をしたアオケシとアオケシの服であったマリーは完全に蘇り、アオケシは立ち上がり勝利宣言をかました。


「あーはははははは! やった私は、自由を手に入れたぞおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

『ひゃあ! い、いきなり大きな声で叫ばないでください! ていうかなんでですか! 私たち最後の最後に死にましたよ! 何なら上司に刃を向けて死にましたけど!』

「……いや、マリー、お前、アオケシに助けてって言ったろう。でもってアオケシはお前を助けた。あら不思議、死ぬ前に10個の事件解決。晴れて節もカイキーン……なんだが。……カイキーン。おい笑う所だぞ」


子どもの様な理論。

助けてと言ったから助けた。それで依頼は達成して、不死が解禁……あまりにも突飛な発想にマリーは唖然としていた。


『え、えと……ど、どうしましょうこれから、あのやべえ女は倒すとして……健吾さんと組んでいますよね。この街の領主と戦っていいんでしょうか』

「……転生者としてやってはいけない事。チートスキルを過度なこの世界への干渉。反省……と言ってももうとっくにあの圧倒的多数の個人であるクソシスターに取り込まれているだろうしな。十分確保、封印の対象だ」

『つまり……』


マリーは正直逃げたかった。

アオケシさえ無事なら最悪、この街は捨てて逃げればいいとまで思っていた。

正直、無限に増え続けるアクタたちをいくら相手をしたとしても引き分けたとしても勝てる見込みはない。

だが、アオケシは違った。


「あんなつまらないこと言う子は全員皆殺しだよねえぇぇぇぇ! あーははははは!」


完全にハイになっていた。

親友が化け物になり、落ち込むどころか、見たことのない道に触れ心が躍っているまである。


『あー、はい。もうわかりましたー。地獄まで付いて行きますよーご主人様』

「マリー! 行くわよ! 全部ぶち壊しちゃいましょう!」


アオケシは、廃ラブホテルの窓を突き破り、走って、アクタの元に走って行ってしまった。

その刹那、落果領事館から爆炎が舞い上がる。


「あー、やだやだ。若いって血の気が多いんだから。……おーい、メハジキ聞こえるか」

『……げほ! 『罰』いきなりロケットランチャーを撃つなよ! ゲホゲホ! た、隊長……すみません、合図の前に『罰』の奴撃ちやがりました!』

『あはははは! 私はやっぱりこっちのほうがいいです!『そうだね、『罰』である僕を差し置いて、反省させるとか。反省すればいいってものじゃないんだよこの世の中!』』

『なははは~しゃーないわ。メハジキ、久しぶりの大型作戦やここで勝負と行こうや』

『お、お前ら! マジでふざけんな!』

「あーごめん、ちょっと悪いが頑張れメハジキ」

『ああ、もう知りませんよ! クロノワール全開!』


トリカブトはやれやれと頭を掻き、煙草を吸いだす。


「ふぅ~。大物取りは若者に任せて、僕は、無事そうな人たちでも救っちゃいますかね~」


トリカブトは、煙草をくわえたまま武器の魔導書を

開くとまだ誰にも見せたことのない姿に変わり、アクタたちがうごめく中央外から逃げる人間を助けるためにその場を飛び出していった。

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