28『愛と平和が世界を救う』
「ああああああああああ! 不死、不死さえ使ってよければ、勝てたのに! ふざけんな! こんなクソゲーやってられるか! ご、ゴホン……失礼。取り乱してしまいましたわ」
「あはは、マリー、そっちの口調で普段から話せばいのに。私は好きよ。あと、ピーマンも食べなさい」
「……どっちの口調も私ですの。今更変えられませんわ。あと、ピーマンは、前世から嫌いなのでその事実も変えられません」
「ピーマンは高いんだぞ。残すな」
メハジキの家での食卓、ピーマを残すマリーとキレイにご飯を平らげるアオケシ、メハジキはそんな二人を注意しながらも静かに自分の食事に手を付ける。
「あ、メハジキ、おかわり!」
「お前は、任務失敗にもっとへこめよ、アオケシ」
「いやね。いちいち失敗を嘆いていたらきりがないわ。それに、まだ全然、任務達成には余裕がある。ここは大人の余裕を」
「流石ご主人様! ご主人様最高! 結婚して!」
アオケシは、余裕そうにチンジャオロースとご飯をおかわりするのだが、それを見て、メハジキはため息をつく。
「オマエな大人の余裕とか言うけど、そんなにご飯を食われると食費がかさむ。これじゃ、お前の給料から引くしかねえ。まあ、特殊部隊に入隊しなきゃ封印されて本すら読めないけど」
「んな! そんなのダメ! ま、マリー今から事件を探すわよ!」
「ご、ご主人様! 今からですか! 流石に今日はもう休まないと」
「大丈夫! 私は寝なくても死なないから! 早く特殊部隊に入隊して、給料と私のまだ見ぬ知識ちゃんたちに会いに行かないと!」
「おい、大人の余裕はどこに行った」
メハジキが呆れて溜息をついた瞬間であった。
ドカン。
爆音とともに遠くの建物が爆発する。だが爆発は落果では普通に起こるもので、雨が降るのと同じ感覚なのであった。
「ああ、今日は結構近かったな……とっとと飯を食って寝るぞ」
「マリー! 大変! 私の愛する市民が傷ついちゃうわ! 助けに行かないと!」
「いや別に今日は……あああぁぁぁぁぁぁ!」
「変身完了! お給料……じゃなかった! 私の愛する市民のために、この落果の平和を守らないと!」
アオケシは、マリーと一体化して二階の窓から飛びあがると屋根を伝って事故現場に全力で走っていく。
「何が市民の為だ。欲望丸出しじゃねえか! 畜生!」
「ぎゃはは、まあ、アオケシの姉さんらしくて良いじゃねえかメハジキ」
クロノワールは、爆笑し二人の後を追うメハジキの後を付いて行った。
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「私、登場!」
『あうあう……め、目が回る』
「お前ら! もうちょっと落ち着けよ……」
爆発したのは違法建築物の一つ。
恐らく、ガス配管の強引な接続によるものなのだが、建物中には、まだ子どもが取り残されていた。
「うわあぁぁぁん! 誰か助けてえぇぇ!」
アオケシ達以外のやじ馬は、総じていつものことなのかスルーしているが、それを見てアオケシの目は、お金を求める目になっていた。
「いた! 私のお金……もとい、救助対象!」
「……だから言い方。俺は時間の停止で火が広がるのを防ぐから、お前らは、あの子供を助けてやれ……って」
「ぎゃああああああああああああ!」
メハジキが、クロノワールを出そうとした瞬間、領事館の方角から健吾が、爆発したビルに飛んできた。
「え、りょ、領主様」
健吾は爆発したビルに激突する瞬間、花の文様の刻まれた魔方陣にぶつかり、無事に子どものすぐ近くにいた。
「い、いたた……あ、アクタ。これはもっと優しくっていつも言っているじゃないか」
「だ、だあれ……」
「僕は領主の大洲健吾。君を助けに来た正義の味方だよ。『君は助かりたい?』」
「うん!」
「分かった! すぅ……『落果の市民! 人命救助をしようとしない自分を恥じ、反省してください!』」
健吾が叫ぶと、子どもの救助をせず見て見ぬふりをしていた市民は、無視しようとしていた自分の行動に各々反省を始める。
「ああ、俺はなんてことを」
「わ、私、布持っているわ!」
「よし、飛び降りてもケガしないようにみんなで領主様たちを受け止めよう」
元々助けようとしていたアオケシ達は、健吾のスキル『反省』の条件に入らず茫然と市民の動きを見ていた。
「「「行くぞー! おー!」」」
市民たちは、反省したというよりはどこか自分の意思に反する行動をとっていたが、これが魔王の書を倒した勇者のスキルと考えると違和感はなかったが、少し怖いと感じてしまった。
「みんなありがとう! ちゃんと受け止めてね!」
健吾はビルから飛び降りると住民たちは、健吾を見事に受け止め、子どもと健吾は無事に生還すると子供は、母親に向かって走り出した。
「わーん! ママ! 怖かったよ!」
「ごめんね! エルダ! アナタの死亡保険目当てにガス爆発での事故死を装うとした私は馬鹿だったわ!」
親子は二人で泣き出し抱き合う、それを見ていたアオケシは、親子たちを優しい目で見る。
「ああ、なんて素晴らしい親子愛」
『そうですねご主人様』
「あれを、そうまとめられるお前たちの脳みそが怖いわ」
二人を呆れたように見るメハジキであったが、健吾がアオケシたちに気が付き笑顔で走ってくる。
「わー! アオケシちゃんたち~怪我して……ぶへえぇぇ!」
「健吾、あなたのせいで私の計画に傷がついたじゃない」
「お、おま」
アオケシは手柄を横取りされた腹いせに健吾を殴り飛ばすが健吾はへこたれず立ち上がり、メハジキは慌てていた。
「いたた……よ、横取りって何さ」
「一週間以内に、私は10回人助けをしないの! それなのに、それなのにアナタのせいで。それに、どうして、反省スキルで空を飛んだの!」
「ご、ごめんね。知らなくて。あと、飛んだんじゃなくて、僕は投げられたの、アクタに」
「あ、アクタが? あの子字は活発だけど、そんな力……」
「いや、実はアクタって、信仰のグリモワールで、身体強化からの、ケガ知らずの祈りで、僕を投げたんだ。さ、最速移動」
「あー、アクタらしい。結構無茶するのよ。あの子」
アオケシは、アクタの名前を聞いて合点がいった。
アクタは、ゴミ山で一緒に暮らしていた時から、おとなしい性格なのに度胸と無茶苦茶な理由をつけては、アオケシを強引に論破していたためかついアオケシは、そのセリフを聞いて納得してしまう。
「でしょう! あの子結構無茶苦茶で!」
健吾とアオケシは、アクタの話で盛り上がるがそれをはたで見ていたメハジキは、クロノワールにつぶやいた。
「ああ、領主様も結構苦労人なんだな……だが……うーん」
「どうしたよメハジキ。うかねえ顔だな」
「いやなんでもない」
クロノワールは、メハジキのうかない顔に疑問を持ったようだが、メハジキは確信が持てず、吐いた言葉を飲み込んでしまったのであった。




