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24.『さでぃすてぃっくな上司と再会と』

「ポピー! なんで行っちゃうの!」

「ローズ、世界は、こんなにも血が流れている。私は、私の持つ力でみんなを救わないと」


 街に走る軍用車が並ぶ荒野。軍服を着たポピーは、シスター服を着た少女、ローズに引き留められるが、覚悟の決まった表情は、その引き留めを冷たく拒む。

グリモワール戦争、魔法使いや魔女と言った魔力を持って生まれた人間と突如現れた意思を持った人型魔導書の戦争は、ポピーたちの故郷を焼き数年。

終わることのない戦争。


戦禍の中、唯一故郷で生き残った二人は、帝国で手を取り合い、ローズはシスターとして、ポピーは、治癒魔法の魔女として従事てきたが、激化する戦争は、民間の魔女や魔法使いも総動員する事態に陥っていた。


「ポピー軍医、まもなく出発でございます! ご家族とのお別れはそろそろ済ませてくださいませ!」

「了解いたしました。ほら、ローズ泣かないの……別に死に行く訳じゃない。帰ってくるから……ね。アナタは、この街を守って」

「でも……でも。アナタは私を助けてくれて。手を取ってくれた! だから生きてこれたのにこんなのはあんまりだよ!」


いつも気丈にふるまうシスターローズの涙に軍の魔法使いも困ってしまう。

しかし治癒魔法持ちの魔法使いは、数えるほどしかいない為、この終わりなき戦争にポピーは、必須、現実はどこまでも残酷だった。


「まあ、私は生きて帰ってくるから」

「嘘だよ! 最前線のグリモワールは、魔王の書。全部を滅ぼし滅亡を願う冷徹な魔導書だって聞いたもん! そこから生きて帰って来た人なんて見たことない!」

「私は死なないよ……」


嘘だ。

ポピーは、故郷と家族を焼かれた際に見た魔王の書は、死その物。

治癒の魔法を全力で使いどうにか逃げ延びたローズとポピーは、魔王の書に、他のグリモワールと同じ感情のようなものは一切ないことを知っている。

あれに勝てる者がいるとすれば神しかいない。


「ポピー! わ、私は好き。あなたのことが……」

「うん、私もだよ。ローズ」


違う。

ポピーの言う好きだよは、ローズとは違う。

愛と、信愛同じようで意味が違うパンジーには分からないローズの心の靄は、いくら彼女と抱き合っても晴れない。

それが愛ではないというのを知っているから。


「じゃあ、ローズ。バイバイ」

「うん、またねポピー」


ポピーは、再会の約束をしない。それは、彼女にとっての呪いにしかならないから。

軍用車に乗るパンジーをローズは、地平線の果てまで見送った。




「……うーん。いきなり時間が飛んだ。分かるマリー?」

「ご主人様が分からないのに私が分かる訳ないじゃないですか」


 阿久津を殺して手に入れた記憶はどうしてか少し飛んだ記憶の映像。

アオケシとマリーゴールドはその映像を見て少し戸惑いながらも、アオケシの前世を追体験していくのであった。


***********************************************************************************


「うーん、綺麗な朝日、誰にも邪魔をされない読書タイム。うーんこれが私の求めた世界」


 石の壁と天井、鉄条網でできた扉に囲まれアオケシは、木のベッドに寝転がり本を読んでいた。本人は、求めていた生活をしていたようだがマリーゴールドは、アオケシの膝の上で頬を膨らませていた

「……納得いきません。私たちは、悪い奴らをみんな倒したのに拘束なんて」

「いやー、正しいと思うよ。悪い奴らは死んだけど結果として全部壊しちゃったのは私たちだし……。まあ、中央監査の人がそろそろ来て解放してくれるって言うし、私は、それまでゆっくり本でも読んでいるよ」


三日前、エデン教会の崩壊、菫三色の失踪は、治安の悪い落果ですら、大ニュースになり街は混乱しており、中央監査機構が来るまで、この事件の元凶であるアオケシは、重要参考人として、この牢屋に収監されていた。


「……うぅ。ご主人様が外に出てくれないと私だって外に出れないのに」

「まあ、この機会に本を読んでみなさいな。いい本あるよ」


そして、マリーゴールドは、アオケシの従者ということで同じく拘束。

この牢屋にある娯楽と言えば、メハジキ、差し入れに持ってきた分厚い本。

アオケシは、大喜びで読書に明け暮れるが、普段からあまり本を読まないマリーゴールドはアオケシに甘える以外やることが無い状態であった。


「ねね、ご主人様。そう言えば私とシャワー浴びる約束……その、い、一緒に寝て欲しいのですが!」

「いつも一緒に寝ているでしょう……」

「あーんご主人様、分かっている癖に……」


アオケシは、自分の体に絡みつくマリーゴールドを無視して、本を読み続けているとコツコツと牢屋に近づく足音が聞こえ、アオケシは、足音の方補見るとそこには、スーツを着た初老の男性を先頭に、小さなズボンを履いた男の子とスカートを履いたそっくりな顔の女の子、いかにもチャラそうな男とメハジキが並んで自分の所に向かってきた。


「俺たちが来るまでにずいぶん暴れたな新人」

「おかげで、上司が来るまで軟禁です、先輩」


初老の男は、冷たい目つきと片目は潰れているのか眼帯が付けられ、がっしりとした体で一歩前に出てアオケシを見る。


「噂通り、生意気な新人だ。俺は中央監査機構特殊部隊、部隊長のトリカブト……俺のことは……とーちゃんと呼んでいいからな」

「「……」」


アオケシとマリーゴールドは、ポカンとしてしまう。

明らかに冷徹で任務優先の仕事人間の様な厳つい男がいきなり冗談を言い二人は茫然としてしまっていたがトリカブトは、表情を変えず頭を掻く。


「ありゃ、うけなかったか。じゃあ……『槍』」

「ぎゃああああああ!」

「ご、ごしゅ……ごふ!」


トリカブトが、そうつぶやいた瞬間、アオケシとマリーゴールドの全身は、槍が貫通しており、二人は、死んでしまったが、アオケシは不死、マリーは無限により蘇るとトリカブトを睨むマリーゴールド。それをアオケシは、マリーゴールドと自分を毛布で体くるみ、ため息をつく。


「ふう……これで合格? あと服、破けたから、新しい服を要求するわ。経費で落としてね」

「いらないだろう。まずは、そこの極悪グリモワールと一体化も見せろ。経費で服を買ってやるかは、それからだ」

「……はいはい」

『ご主人様! あいつサイコ上司ですよ! 労基! 労基はどこですか!』


アオケシは、マリーゴールドを服に変え、牢屋の前に立つ。


「……これでいい? とーちゃん」

「うん。いいだろう。『不死』『一体化』ともに確認した。ようこそ、最悪の職場、中央監査機関特殊部隊へ。おじさんマジ歓喜感涙、雨あられ」


トリカブトの抑揚のない冗談は、怖いだけのものであったが、それを聞いて小さな子供二人が牢屋の扉を開けるとアオケシは、二人の頭を牢屋から撫でようとする。


「ありがとうね、僕たち」

「おい、後輩「侮るな、私たちはもう40歳だぞ」」

「へ、変な喋り方するな。えっと……知っていると思うけど私はアオケシ、この子の名前はマリーゴールド」


双子の少年少女は、息もぴったりに挨拶をしてくる。


「私の名前は、フキ「僕は、『罰』のグリモワール」」

「「よろしくね!」」

「……へー女の子が、本体で、男の子はグリモワール。つまり転生者」

「やめておけアオケシ。フキたちは、この部隊で一番強い。喧嘩相手は考えろ」

「ええい! 私だって、仲間を殺す趣味はないやい、この裏切りメハジキ」


メハジキは、『罰』のグリモワールをじっくりと見ているとメハジキに注意され少し怒ったように反抗する。


「……裏切ってねえ。お前に本を届けたのは俺だぞ」

「まーま、めはっちゃん。そんなんいったらあかんで」


糸目チャラ男がメハジキに絡むと、メハジキは鬱陶しそうに糸目チャラ男払うがその容姿を見て、ついマリーゴールドは、声を大きくしてしまう。


『糸目関西弁の美形! こ、こいつ絶対裏切者ですよ』

「なんで、罰はんと同じことを言うねん。異世界はどういう場所やねん。……えっと、僕は、ドラセナ『達人』の魔導書を読み『達人』の魔法が使えんで。ほんで、アオケシはんを貫いた親父は『武器』の魔導書を読んどるから、武器の魔法が使えるで」


魔導書を読み、魔法が使える男、アオケシが不死の魔法を使える魔女、それなら……さながら彼らは魔法使いとでもいうのが正しいだろうと思ったマリーゴールド。


「そ、お前たちの入隊は、歓迎だ。ようこそ不死と収集。そして地獄の入隊訓練と行く前に合わせたいやつがいる」

『まって下さい、く、訓練なんて! 私たちは十分強い!』

「俺に殺されたからな。それに入退院は必ずこの訓練を受けてもらう。詳細は、この後話す。それより、会わせたいのはこいつだ」


そう言うと、シスター服を着たアオケシと同い年くらいの金髪の女性が階段を下りてくる。そして、アオケシはそのシスターを見た瞬間、牢屋を物理破壊してシスターに飛びかかった。


「アクタ! い、生きていたの! 本当にアクタなの!」

「アオちゃん! 久しぶり! 久しぶりです!」


抱き合う二人。

アクタ……アオケシとゴミだめで暮らしていた孤児の親友。死んだと思っていた親友が目の間に現れ、アオケシの目には涙がたまっていた。


「……」


特殊部隊の面々は、事前に話を聞いていたからか、驚きはしなかったが、マリーは一人、状況が読めず慌てていた。


『え、え! ご、ご主人様の目に涙が! てか、いきなり現れたこの爆乳は! え、ちょ、メハジキさんも目を逸らさないで何か言って下さーい!』


騒がしいマリーゴールドの声など、アオケシとアクタの耳には届くことが無かった。


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