21.『不死殺し月に焦がれて』
「やあ、カネノムシーン様。初めまして……阿久津世界。申し訳ございませんが、僕の正義のため、死んでいただきます」
「何が正義だ! おぬしは何が欲しいのか? 金か! だが残念だ、ワシには、護衛がいっぱいるんじゃよ」
月夜のこぼれるカネノムシーンの寝室。
赤い髪を靡かせた阿久津、そして阿久津の後ろでおどおどと隠れるニャミと寝間着姿のカネノムシーンの後ろには、お互いの信者が、守るように二人を囲みにらみ合っていた。
「まあ、そんな、金で集めた集団に僕の集団が負ける訳ないよね」
「ふん、それならおぬしだって、なぜ自分の仲間全員の体内に爆弾を付けておる」
「へえ分かるんだ。流石司祭様」
エデン教の司祭カネノムシーンは、金だけでなり上がったわけではない、その目の観察眼は、生まれ持っての才能。隠し事、奥の手は彼には効かない。
阿久津は、その才能純粋に称賛するが、カネノムシーンは、吐き捨てた。
「ぺ……そんなの長年大人をやっていれば朝飯前だよ。恐怖での支配は楽しいか小僧」
「お金での支配は楽ですか? 司祭様!」
二人はにらみ合い次の瞬間お互いの兵は、銃を構え打ち合いが始まる。
阿久津は、自分のスキルで身を守りカネノムシーンも大盾を持った戦士に守られながら決着の行方を見ていた時であった。
不用心に扉が開けられ、そこから鉈を構えたアオケシがマイペースに入ってくる。
「
もー、カネノムシーン! 夜なのに激しすぎだよ~。あ、あははは! 良いのがやっぱいるじゃ~ん。ねえねえ、あの赤髪、カネノムシーンの命を狙っている奴らのボスでしょ。転生者じゃない? ……お、しかも、獣人まではっけーん!」
『やりましたね。ご主人様! 獣人は生け捕りですか? 他の奴らなら私でも……』
「ひ、ひぃ」
ニャミは突然指を指されて怯えると、阿久津とカネノムシーンがアオケシの方に目を向ける。
「あ、あの人たち怖い。私たちにすごい悪意」
「何を言って、あれは一人……いや、魔導書か。つまりあれが『落果の知識狂人』。ニャミ、僕を手伝って」
「うん……」
阿久津は、ニャミを後ろに隠すと、生成のスキルで自分の周囲に物質を生成しだす。それを見てカネノムシーンは、怯えてアオケシに叫ぶ。
「あ、アオケシ! そ、そいつが今回の首謀者! 転生者の男じゃ!」
「フーン。なるほど、転生者の能力は空間に物質を生成か。……ねえ、マリー、あなたみたいに無限の性質付与で、不死身にならないならすぐ殺せそう……」
『ご、ご主人様!』
アオケシは余裕をもって阿久津を見るがその刹那、阿久津の生成により作られた剣がアオケシの首を吹き飛ばし、ニャミも一緒に飛んできてその体当たりで胴体を粉々にする。
「あちゃー。生成した物質飛ばせるのは聞いていないよ。てか、あんたら名前は? 私はアオケシ、私の服になっている子は私の友達のマリー」
『痛い! すごく痛いです! そんなの言っている場合じゃないです!わ、私もあの女に粉々にされましたよ! 早く復活を!』
アオケシは体が再生成され、服の形をしたマリーゴールドも一緒に復活する。
「がるるるる! 敵だ。ご主人様の敵は倒す!」
「僕は阿久津世界、この子はニャミ。てか生首が喋るのは気持ちが悪いね……全くしかも不死のチート持ちか。うーん、宇宙空間に幽閉……生姜焼きは違うよな。うん、やっぱこれだな」
阿久津は、余裕をもって自己紹介をすると現代での漫画知識を総動員して、不死殺しの秘策である種子のつまった銃を構えアオケシに発砲する。
「やだぁ獣人ってオオカミ人間になれるのね。文献では読んだことあったけど、生変身は燃えるわ!」
ニャミの体は二足歩行の獰猛なオオカミになっており、その姿はまさに悪魔と慶応するのが正しいものであった。
『ご、ご主人様そんなこと言っている場合じゃないです! 『収集』! 『簒奪使用』……成分抽出、吐き出し』
慌ててマリーゴールドは、収集を発動して、放たれた種子を収集し、簒奪使用で、何かを吸収して服の一部から、顔を出し、謎の液体を吐き出した。
「がるるるる!」
「きゃあ! ちょっと! マリーいきなりキモい登場やめてよ!」
アオケシは、一瞬驚いたのかニャミの爪攻撃を避けるのが遅くなってしまったがどうにか寄ると阿久津は面白そうに笑いだした。
「あーははは、なるほどね。君の服は、転生者の魔導書だからこの種が何なのか推測できるんだね!」
『ええ! 漫画での不死殺しは、宇宙へ飛ばすか、条件を守ったうえでルールすれすれの殺人での不死効果発動不可。そして、生きている限り生気を吸い続ける寄生植物的な奴! 漫画の知識ですが、まんまその種子は、殺さず永遠に生気を吸い続ける植物種を生成しましたね!』
「おお! そりゃ、不死が逆にあだになるね! つまり、私の体に直接当たったら終わりだね! 多分切り落として無駄と考えれば、当たれば一撃負け」
『ええ、逆に相手は不死ではなく確実に死にます! こっちの攻撃も一撃必殺!』
アオケシは、ニャミの攻撃を避けながら状況の危うさに気が付く二人。
しかしニャミの猛攻と種子飛ばしがやむことは無く、アオケシたちは、避けることに懸命になっていた。
「うーん、ネタバレされてもやることは変わんないよ! 僕は、君と違って普通に死ぬし!」
「おあいにく様! 私もそれにあたるのはまずいんでね!」
アオケシは、ニャミに鉈を振り下ろすが爪と鉈での唾競り合い、しかも阿久津の打ち出す不死殺しの種子を避けようとして、アオケシの体はニャミの爪により少しずつ削ら、再生の状況が続く。
「ああ! もう!」
「ご主人様守る!」
負けることは無いが、勝つことができない無限ループのような時間。
アオケシは、ニャミの存在が無ければすでに勝てている計算であったが、獣人の爪は重く鋭い。
『ご、ご主人様これじゃまるで千日手ですよ! 後先ほど煮たいですが……か、体の中に爆弾が埋め込まれて!』
「せんにちて……同じことの繰り返し! ってこと! なら! しかも、私の収集した死体に爆弾……なら『簒奪使用』」
『ご、ご主人様まって……ぎゃあああああ! 痛い!』
アオケシは、高く飛び上がり右足を犠牲にもう片方の足を菫三色の黒装束の方向に向け爆破してその勢いで、敵陣の真ん中に突っ込む。
「全部爆発させればいいじゃない! 『収集』『簒奪使用』お家芸! あはははは!」
『やめ!』
「な、なにをして!」
「ご主人様危ない!」
「アオケシ! やめ!」
そして、菫三色の真ん中に立ったアオケシは数人の黒装束を殺して収集爆弾の性質を奪い取ると自分腕の一部を窓の外に投げ捨てる。
切れた腕の箇所からは、血の代わりに火花が舞い散った。
「レッツ! ボンバー! ぎゃああああああああああああああああああ!」
『爆発落ちナンテサイテー!』
瞬間、全てを巻き込むように教会は大爆発を起こし全員が爆風に巻き込まれ庭園まで吹き飛ばされる。
普通の人間であれば、これで死んでしまうが、不死身と無限は、別であった。
「あたたた……し、死んだねー。今まで一番痛い死に方だったかも」
『ほ、本当に! 本当に命を大切にしてください! ああ、それに、カネノムシーンの首も吹き飛んで死んじゃっていますし……』
「まあ、全部、菫三色が悪いことにして、アイツらも滅ぼせばいいってことじゃない?」
アオケシと、マリーゴールド以外全員が死んだと思った。
しかしアオケシは、違和感を感じる。
阿久津と、ニャミの記憶だけが彼女の脳内に流れない。つまりまだ死んでいないのだった。
「いたたた……ニャミありがとう。君が教えてくれなきゃ、僕は、爆風を防ぐことができなかったよ」
「……め、めちゃくちゃです。ですがやることは変わりません……あの不死に絶対、不死殺しの種を当ててください」
「もちろん」
阿久津とニャミは、阿久津の作った衝撃吸収の物質により軽いやけどで済んでいる状態であった。
「さて……千日手再来ね。でも今なら」
『何も変わってないですよご主人様! これじゃ……』
「変わるんだなこれが……」
アオケシたちと阿久津達がにらみ合い距離を取る中、吹き飛んだ教会の中にある地下牢へ続く階段から眼鏡をかけた男が頭を抱えて出てきた。
『あ! メハジキさん!』
「たく……なんでまた爆発すんだよ……あの黒装束は、人間爆弾てか……って! アオケシ! もしかしてテメエ! カネノムシーンは!」
「よ、メハジキ。カネノムシーンは、死んだよ。けど……」
「ああああ! もう色々めちゃくちゃだよ! とにかくエデン教会の悪事について回
収できたからおとがめなしだけどよ……。本当、これ終わったら、ビール奢れ。落果産じゃない旨いやつだぞ」
メハジキは、地下牢から見て、アオケシのトンデモ発言に頭を抱えるが状況を見て、アオケシが、転生者と戦っているのを察してファイティングポーズをとる。
「はん! たかだか現地人のモブ一人増えたぐらいで」
阿久津は、笑うがアオケシは自信満々に答える。
「やだ! メハジキが来れば私たちの勝ちよ! 全員ぶっ殺して、お見事ハッピータイムと行きましょうか!」
「やってみろよ! この魔女が!」
こうして阿久津とアオケシの最後の決戦が幕を開けるのであった。




