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1.『生首は考える』

「あーあ、メハジキのせいで本買い忘れちゃったし」


 アオケシは、少し不服そうな顔で『BAR肉欲』に近づくと鼻についた焦げ臭い香り。

落果ならいつものことだと思い、家に帰るアオケシ。

目の前には、炎上する『BAR肉欲』……アオケシの家が燃えていた。


「あ、アオケシ逃げろ……憲兵だ……」


燃え盛る店舗から這いずって逃げる店長は、全身が血だらけで、最後の力を振り絞りアオケシに忠告をするのだが……。


「ああ! 私の本が! 待っていて私の知識こども達!」

「ぐ、ぐへ!」


アオケシは、目の前の光景に愕然とし、部屋の本を助け出そうと駆け出し、何かを踏んだアオケシは、足元を見るとそこには店長であった焼けた肉を踏んでいた。


「あ、店長……それよりも本! 私のほ……」


店長には目もくれずアオケシは、炎上した自宅に走ろうとした時、アオケシの首は体と離れていった。


「あ、あれ?」


転がるアオケシの首。様々なマスクを着た男たち、落果の機能しなくなった自警団である憲兵は、アオケシの首を槍の穂先に差し掲げて喜ぶ。


「俺達から、金を巻き上げた魔女を打ち取った! 市民の皆様! ご安心ください! 魔女は消えました!」


アオケシは、首だけのはずなのに意識が残り続けており、不思議と痛みも感じなかったが声は出ない。

穂先から見下ろした光景。アオケシが客として相手をした憲兵たち。金がなくなり、出禁になった腹いせだろう。


「(くだらない)」


承認欲求だけで動く獣を首だけのアオケシは見降ろしていたのであった。

この世界は、やっぱり腐っていた。

鼻につくにおいは、最悪の気分だった。


***********************************************************************************


「「魔女狩り! 完了! 魔女狩り! 完了!」」

「(ああ、本が読みたい)」


 アオケシは、穂先に揺られながら退屈そうに世界を見下ろす。

くだらない。原始的な武器で市中に首を晒して歩く憲兵。この腐った町の象徴。

アオケシを見る市井は、顔をゆがめ恐怖たり、同情したり、様々な反応であったが、アオケシの興味をそそるものはなかった。

それ以上に彼女は、自分の体に興味があった。


「(うーん、どうにも私は死んでないけど、どうすれば死ぬのだろうか……そもそも体は生えるのかな。首だけで意識があるということは魂の在りかは、脳だと証明されたが)」


めぐらす思考を書き留めたい欲求に襲われるが、アオケシにはそれを書き留めるための体はなく、体はないが、胸に穴が開いたようであった。

そんなアオケシの感情をある一つの者行動がアオケシの胸をすいたのであった。


「オイ! うるせえぞ! 無能ども……ってクソビッチ!」

「……君は、本屋か。IDを出せ」

「(おーい! メハジキ! すごいだろ! 私生きてるぞー!)」

「……嘘だろう。あいつ」


メハジキは憲兵の行動がうるさいものだけだと指示に従おうとしたが、メハジキの目には、アオケシの口が動き笑顔で笑っている姿見え、状況は変わった。


「おいIでぃ……グボヘ!」


メハジキは、想像を絶する速さで憲兵を殴り飛ばすと、憲兵の首は吹き飛び、周囲が大騒ぎになる。

憲兵の殺害は、落果での禁忌の一つ。拷問一年ののち死刑という重罪であったが、メハジキには関係が無く、勢いよく走り、槍から、アオケシの首を奪い取り落果の町を走り出す。


「おい! 待て!」

「畜生! 畜生! こいつマジかよ! ああ! ほんとここはクソったれだよ!」

「わ、メハジキが人助けか」


アオケシの生首を抱えて走るメハジキが悪態を吐き捨てると、槍から外れたアオケシの生首は、空気が抜けるように喋ることができ、それが余計にメハジキの琴線に触れたのであった。


「テメエ! 魔女だったのかよ!」

「魔女? 何それ? 悪口は後でにしてよ~。それよりすごくないなんで私、生きているの? 心臓は? 血はめぐっているのに体はないし、体は復活するのかな? 後メハジキ、足早すぎない? 人間離れししているけど」

「うるせえ! 逃げ切るまで喋るな!」


走って必死に逃げるメハジキ能天気なアオケシは、思った質問を永遠とぶつけるのでメハジキは、アオケシの首を捨てていきたかったが、彼の使命がそれを許すことが無かった。

驚く速度で逃げるメハジキは、怒りでいっぱいなのを我慢したのであった。


 落果の奥にある不可侵の森にポツンと広がる広場。

周りは鳥の鳴き声など物騒な場所であったが、そこにつくと、メハジキはアオケシの生首を大地に投げ捨てる。


「いった! ちょい! 乱暴に扱うな! けが人だぞ!」

「生首が何か喋ったか。良いから、とっとと体を元に戻せ、魔女だろう」

「体を戻すって私はトカゲじゃないんだから……って! きゃ!」


アオケシは、土屋空気に触れた状態で、自分の体がトカゲじゃないといった瞬間、元の体が生えてきて、一糸まとわないからだとして元通りになったのを見て驚いていた。


「良し……。なら封印だ」

「ちょい待ち! 私やメハジキが人間じゃないのは理解したから待って! ……生娘チェーック。おお、すごい! 綺麗な体! 流石、私。それに胸のホクロも元の位置に」


拳と殺意をアオケシに向けるメハジキであったが、アオケシは、メハジキに待ったをかけ、自分の全身をチェックする。

体は元に戻り、異常はない。全く持って元の体であった。


「お前は、最後まで下品だな」

「のんのん。封印的なのをされるなら今のうちに体を調べないとでしょう。封印中、不自由がないとも限らないし。で、あなたは誰? 私は誰?」


アオケシは、完全に敵意が無いのか両手を上げ降参のポーズをする。

メハジキは、アオケシの裸から目を逸らすと、メハジキの体から一冊の本が出てきて宙に浮き喋り出した。


「ぎゃははは、この女は、イカレている。言っただろうメハジキぃ! 俺の記録じゃ、記録しきれねぜ! ぎゃはは、どうするよ!」

「……うるせいぞ、クロノワール」

「……」


喋る魔導書。

つまり生きたグリモワール、それは、アオケシが欲しがっていたものの一つ。

それが手の届く……あまり好きでない男の体内から物理法則を無視して出てくる。

そしてクロノワールは下品に笑いアオケシを見るが、アオケシは、顔を真っ赤に染め上げクロノワールを見つめていた。


「ま、魔導書! それも生きたグリモワール! きゃああああ! かっこいい! 可愛い! 欲しい! 抱いて! お名前は、クロノワール! クロちゃん! あクロちゃん可愛い! 好き! 結婚して!」

「ちょ、ちょいちょい! アオケシ! 俺は、美女に抱かれるのは嬉しいが! 落ち着け! 俺は、ここのメハジキって人間と契約しているから、メハジキ以外読めねえんだよ!」

「おま! 余計なことを!」


アオケシは、初恋をした少女のようにクロノワールに抱き着き、クロノワールのまんざらではないが、自分状況を説明すると、アオケシは飢えた獣のようにメハジキを見つめる。


「抱いていいから! クロちゃん頂戴」

「無理だクソビッチ!」

「生娘になってましたから、は、じ、め、て」

「死ねクソ野郎! こうなるから余計なことを言うなって言ったんだクロノワール!」

「お、俺しらね」


クロノワールは、面倒くさいことに巻き込まれないようにメハジキの体の中に戻っていく。

しかしアオケシの興奮は止まらない。


「なら殺して! 奪う!」

「蛮族か! たく、クロノワール! 記録!」

「あいよ……できる限りだから、怒るなよ」


今にも襲い掛かってきそうなアオケシにメハジキは手をかざす。

刹那メハジキの周りに青い魔方陣が展開され、クロノワールの声がアオケシの脳内に響く。


『記録……可能な制約提示。互いの殺傷行為の禁止……対価なし。アオケシの無意味な殺戮は禁止……対価、メハジキは、アオケシを中央監査員として保護。アオケシ……監査官としてメハジキの部下になる……対価、望むものを月一で支給……メハジキが死んだ場合、魔導書クロノワールの所有権はアオケシに委譲される……以上。これ以上は、時間の魔導書のキャパシティ負荷があるため実行が不可』


そして、魔方陣が消えると、アオケシは理解する。

脳に情報が流れる。

メハジキは、意思を持つ時間の魔導書クロノワールと契約を結んだ人間で、落果の外から人間。

中央監査官として、世界に危害を加える異世界の人間や、魔導書……グリモワールを回収し、世界の維持をする存在であった。そして、アオケシ自身は、人間ではなく魔女という異世界の存在で、不死の魔導書により外傷によるしがなくなった不死性を手に入れたという事。


「どうだいアオケシ! 俺様の記録は。記録は、相手に約束を強制する魔法。俺のキャパ次第だが結構、魔女の封印には役立つんだよな!」

「クロちゃん……いきなり、入れるのはマナー違反だよ、もう!」

「悪かったって! ぎゃはは」

「……ああ、マジかよ。……マジかよ。コイツが……俺の部下」


頭を抱えるメハジキに対して、アオケシは、目を輝かせる。


「おお、私は、魔女という異世界人で、不死の魔女に覚醒! うんうん、いい感じに理解はしたけど実体験がワンキルじゃな……」

「おお、言ってれば、異世界の魔導書に操られた憲兵が追い付いたぜ!」

「ちぃ! クロノワール! 構えろ!」


うーんと考えるアオケシをよそにメハジキは、目の色のおかしい憲兵に向かって拳を構えるが、アオケシは、思いついたようにクロノワールに声をかける。


「クロちゃん! なんだか良く分かんないけど、記録の中にある報酬頂戴!」

「いいが、物は? 対価は?」

「私の手に合う鉈と制服。対価は、この戦いは、私だけで納める!」

「おま、馬鹿何を言って!」


メハジキは、イカれた対価を求めたアオケシを止めようとするが、記録は絶対。

契約が実行される。


「ありがとうクロちゃん! さあ実験するぞー!」


うきうきした目で憲兵たちを眺めるアオケシは、服を着て鉈を構える。契約に乗っ取り、クロノワールに透明な結界で守られたメハジキが何かを叫ぶが、アオケシの耳には何も入っていなかった。

アオケシは、まるで新しいおもちゃを与えら子供のような目で憲兵を見つめた。


「それじゃあ……やっちゃおう!」


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