18.『新フォーム。そして接触』
「各員、配置についたか?」
「……いつでも」
阿久津は、教会の周りにある高い建物の上で黒装束の男と話すと、自信満々な顔になり教会を見下ろした。
「ふん……転生して最初の仕事。ニャミ、安心しろ。お前を売った教会は、僕が全部壊して借金もチャラにしてあげるから」
「ご、ご主人様無理はしないでニャミも手伝うから」
ニャミの家族は、エデン教会に難民として逃げ込んだ獣人族であったが、金が物言う教会内で彼女たち家族は金が払えず、気が付けば奴隷として身を売るほかなくなっていた。
そんなニャミを買った阿久津。
見た目が好みであったのは事実であるが、ニャミの境遇に同情したのも事実であった。
「ニャミは、僕を守ってくれるだけで良いから」
「あ、ありがとうございます! けど、ご主人様なら、私を買った時のようにお金で教会を乗っ取ることもできたと思うのですが」
「ニャミ、お金は湧いてこない。いきなり大金をはたいて教会を買い取っても怪しまれるだけ、それにあまりお金を生成するとお金の価値は、なくなってしまうからね。たまには嫌だけど全力を出さないといけないんだよ」
「ご、ご主人様は、頭がよくてニャミ何を言っているか分からないけど、凄い!」
「はは、褒めすぎだって、それより……敵も抜け目はない。牢屋には捕虜、司祭の近くには例の用心棒……うーん」
阿久津は、カネノムシーンたちの配置を考える。捕虜の奪還、そしてカネノムシーンを暗殺すること、それが今回の目的。
捕虜の解放は最悪失敗してもいいが、話の展開を考えれば、カネノムシーンと用心棒の打倒は必須になっていく。
「捕虜奪還には、3割の団員を7割は、カネノムシーンを打倒。僕は、絶対に用心棒を殺すから、君たちは絶対司祭を殺してね」
「ご武運を」
黒装束の男は、そう言うとどこかへ消えていく。それを見て、阿久津は笑いがこらえられなくなってしまっていた。
「あーははは! 最初の敵が悪徳司祭か! ここから僕の世直し義賊物語が始まるって訳だ! 最高じゃないか!」
「ご、ご主人様、私も、ひろいん? として頑張るね!」
「ありがとうニャミ! 期待しているよ!」
生成のチート……生成の魔法は、まさになろう系などよくある異世界ボーナスその物。
半径一メートル以内であれば、どんなものでも生成できる。
それは、敵の体内に剣や爆弾を生成すれば一撃必中の必殺技にすらなる。
「さーて、では、始まりののろしは何が良い?」
「にゃ、ニャミ、分かんない。けどね、みんなあそこにいる人は悪い人。パパとママも言っていたの悪いことした人は、悪いことをされる覚悟があるって」
「うーん、何か聞いたことのあるようなセリフ……まあいいか」
阿久津のポケットに入ったスマホが鳴りだす。
オペラ楽曲……シューベルト作曲の魔王がスマホからなりだした。
「さあ! 粛清の時間だ! ニャミを悲しめた奴らを一人残らず制裁に行くぞおぉぉぉ!」
「はい!」
まさに阿久津は、転生モノの主人公気分であった。中二病な音楽をスマホから奏でて、夜の教会に乗り込んでいったのであった。
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「あぁぁぁぁ。あのクソ司祭! 絶対殺しますわ!」
「マリー、あまり変なことを大きな声で叫ばない。どこで聞かれているか分からないのよ」
マリーゴールドは、用意されたカネノムシーンの隣の部屋で体から出した枕をベッドに投げつけるが、アオケシは冷静であった。
「ですがご主人様……」
「ほら、一緒にシャワーでも浴びましょう」
「あ、嬉しくて、さっきまでの怒りが吹き飛びました……で、ですが、こう……恥ずかしいというか……」
マリーゴールドはもじもじしていると、アオケシは、一瞬でスーツと下着を脱ぐと、そのままシャワー室に歩いていく。
マリーゴールドは迷いのないアオケシの行動に呆然としているとアオケシは、不思議とどこか機嫌が悪そうであった。
「いや、別に一緒にお風呂入るだけなんだから恥ずかしがる必要なくない?」
「で、ですが、裸なんて負いそれ簡単に見せるモノでは……」
「ねえそれ、前職とか、今も戦う度に服が破けて駄目になる私への当てつけ?」
「ちが……そう言う訳じゃ」
マリーゴールドは、慌てて否定すると、アオケシは、何か思いついたようにその場で座り考え出した。
「ねえねえ、クロちゃんの魔法をメハジキが使う時ってクロちゃん、メハジキの体の中に入っているよね。あれって私にもできる?」
「まあ、ご主人様は私の所有者ですので可能ですが」
「じゃあさ、マリーを体に入れるんじゃなくとして服として纏うことはできるの?」
マリーゴールドは、ふと自分のスペックについて改めて考えてみた。
今まで魔導書として所有者を持たなかった彼女にとっては、アオケシ同様、契約初心者なのだ。考えても答えなどでるはずもなかった。
「分かりません……」
「ならやってみる? 結構いけると思うのよね! こう言う時はえっと……へんしーん!」
「な、なんと安直なあぁぁぁぁぁぁぁ!」
アオケシが変身と言った瞬間、マリーゴールドは、アオケシに吸い込まれるように薄く布のようになり出した。
「おお、これは! 行ける!」
「し、視界がぐるぐる回って……」
「めーくあっぷ!」
布のように薄く広がったマリーゴールドは、アオケシの体にまとわりつきだし、その服は、黒いワンピースとローブと手袋を付けたの姿になり、アオケシの黒い髪も相まって黒魔女のような格好になっていた。
「おお! 成功! マリー、ちょっと無限の性質を付けた鉈子2号出して」
『ぐ、ぐへへ、ご主人様の素肌に密着……と、そうですね』
興奮気味に喜ぶアオケシは、別の意味で興奮気味喜ぶマリーゴールドに指示を出すと、黒い手袋からは、鉈子2号、マリーゴールドが昨日の休みに買っておいた無限の性質付きの鉈が手元に現れる。
「よし! 良いね! 成功よ!」
『良いですね。ぐへへ……ぎゃああああ! ご、ご主人様イタイイタイ!』
アオケシは、現れた鉈で自分の手首を思いっきり切り落とし血しぶきが部屋をシャワーのように拭きだすが、アオケシは嬉しさのあまり踊ってしまった。
しかし、服とは言え、マリーゴールドの体の一部、マリーゴールドは、切断の痛みに絶叫するが、無限の魔法で、手袋は回復、アオケシの新しく生えた腕にすっぽりとハマった。
「あははは! 最高! 手首が戻ったら、ちゃんと手袋も復活しているし! これで衣装問題も解決じゃない!」
『ご、ご主人様! スパッとやるなら言ってくださいませ! 死ぬかと思いましたわ』
「えー、だってマリー、痛い事するって言ったら、嫌がるじゃん」
『どこの世界に体を聞きとして鉈で真っ二つにされて喜ぶ人がいるのですか』
マリーゴールドは、アオケシが、体を切られても喜んでいることに驚愕していると遠くで爆発音が聞こえた。
「何!」
アオケシたちが驚いて窓際を見るとそこには数人の銃や剣を持った黒装束の集団がアオケシたちに武器を構えていた。
「マリー……いい実験台が来たわよ」
『はあぁ……結局、一緒にシャワーはお預けですのね』
マリーゴールドは、アオケシが愛用している緑色の仮面を出すとアオケシはそれを被り、仮面の内側で、笑っていた。
「さあ、色々やってみましょうか」
『ご主人様すごい、いい顔で笑いますね』
アオケシと同化しているマリーゴールドは、仮面越しに笑う、アオケシを見て怖くて震えあがってしまった。
その顔はどこまでも純粋で邪悪な笑顔だった。




