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17.『カオスティックパーティー』

「さあ、今日は、皆様の歓迎も兼ねてパーティーを開きました! ぜひお楽しみください」


 カネノムシーンは、大広間に置かれた豪勢な大理石に敷き詰められる豪勢な料理と、露出度の高いシスター服を着た女性信者がせっせと給仕をしていた。


「……うーん、絵にかいたような悪者ですよ、ご主人様。ほ、本当に護衛をするんですか? 失敗したふりしてぶっ殺しましょう」

「ええ? そうかしら。別に奴隷紋もないし、あの子たちは自分の意思でああやっているんでしょう」

「いや異世界には、催眠分からせやマインドコントロールという言葉がありまして」


アオケシとマリーゴールドは、口々にお互いの意見を話し合う。

メハジキは、夜間警備のため、この会場にはいないが、メハジキは来なくてよかったとアオケシは心底思った。


「まあ、こういうのが嫌いな奴が、ここに来なくて本当に良かった」

「嫌いって……メハジキさんのことですか? それこそ間違えです。あの男、サイコ

パスですよ。自分以外は興味ないというか陰キャ特有の危険思想の様な」

「おお、御二方どうしたのですか? 早く座ってください」


上座に座るカノムシーンは、二人を促すが、座る椅子などどこにもなく、そこには、ひざまずいた裸の女性が二人いた。


「あ、あのカノムシーン様……椅子、どこにあるのですか?」

「目の前にいる信者がいるじゃないですか。今日はこの者たちが椅子なのです。ご安心ください奴隷ではないです。お金を払い自らの意思で行っているのですよ」

「……人のことは言えませんが悪趣味ですわ」


マリーゴールドは露骨な嫌悪の感情を示すがアオケシは、それと違い悩んでいるように口に人差し指を当てる。


「うーん座るのは良いけど、背もたれが無いのはどうかと」

「ああ、そうですね。少々お待ちを……今、人を呼びます」

「あー、私できれば、この教会で一番マッチョなイケメンが良い」

「分かりました。アタックを呼びなさい。さて従者様はいかがいたします?」

「ご、ご主人様!」


この悪趣味な椅子にノリノリなアオケシにマリーゴールドは驚くが、アオケシは、全裸のシスターに座り筋肉質な男の背もたれに座る。


「ほらー、マリーも今言えば好きな背もたれが選べるよ~」

「どんな願いも叶えますぞ」


マリーゴールドはどんな願いでも、その言葉につばを飲み、そしてボソッと一言。


「……ご、ご主人様のお膝の上が良いですわ」

「アオケシ、落果パン3でどうです?」

「4なら良いよー」

「ではご用意いたします」


アオケシは、カネノムシーンの後ろから出てきたメガネの神父に400万ゴルドーの入った袋を受け取るとポケットにしまう。


「よし、良いわよ、マリー、来なさい」

「……やっほおぉぉぉぉ!」


「ぐえ!」


マリーゴールドは、それを聞いた瞬間、高く飛び上がりそのままアオケシの膝に着地をした。

その衝撃で、シスターは、カラでの骨が折れるような音がしたが、幸せマリーゴールドには関係のない事であった。


「ほほ、従者の方に好かれていますね。アオケシ」

「いやいや、カネノムシーン、私とマリーは、友達だから。ねーマリー」

「ねー。ご主人様」

「いいご関係ですね。ほほほ」


二人は満面の笑みで笑いあうとカネノムシーンも幸せそうに笑っていた。



「お、おもい……イタイ……我慢」



しかし、アオケシたちが座っていた女性は辛そうに、うめき声を出した瞬間、場の空気が凍り、マリーゴールドとカネノムシーンは、椅子の女性を睨みつける。アオケシは、無視してごちそうを綺麗に食べ始めるが、辺りにいたシスターの表情は、明らかに表情が固まった。


「おや、椅子が喋っています。すみません不良品でしょうか」

「ひ! あつい! アツイ!」

「……ご主人様~スープ下さい……あ、ヤダ、すみません、スープ、椅子にこぼしてしまいましたわ。この椅子なんか変なんですもーん」


マリーゴールドは、ぐつぐつに煮えたぎったシチューを椅子になっている女性にかける。

明らかなワザとだと周りの人は、ぞわっとするが騒げば自分もこうなると思うと無視をするしかなかった。


「もー、マリー、私の膝の上に座るからだよ。気を付けてね」

「はーい」


「た、助けてぇ……もう懲罰房の方がまし……助けてください。椅子を変えてぇ」


女性は、唯一まともそうなアオケシに助けを求める。しかしそれを遮るようにカネノムシーンが、アオケシに聞いてきた。


「すみません、もしよければ椅子を変えますか?」

「んー、この椅子すわり心地良いからこのままで」

「な、なんで……」

「わーい、ご主人さまのお膝の上。まさか、椅子が喋りませんよね」

「まあそうだろうね」


それは、椅子役にとっては絶望であった。

大金欲しさに応募した仕事。少しの屈辱で手に入る大量のお金、だがこの世界に甘い話などない。世界はどこまでも狂人によりおかしく狂っていく。


「そうですか、では一緒に食事を進めましょう」

「だね~」


凶悪な狂人しかいない食卓。緊張の糸が三人以外に走る。

失敗すれば、大掛かりな借金を抱えさせられ一生奴隷、しかし、務めきれば大量のお金が手に入る。教会は、金により支配された空間。

しかし、そんな空間で普通に食事をする3人が、周りからはあまりに異質なものであった。

それから少し時間が経ち、アオケシとマリーゴールドはデザートを食べているとカネノムシーンが、二人に思い出したように声をかける。



「ああそう言えば、メハジキさんは、私のことを嗅ぎまわっていたので、懲罰房で監禁しているよ」



アオケシの目が一瞬、演技を忘れるが、冷静な演技を続けた。


「な! メハジキを人質ですか! ……まあ、別にそこまで人質の価値は……」

「マリー、喋るな」

「はい……目、こわ」


いきなりの衝撃発言にマリーは少し動揺をするが、アオケシは殺意の籠った目でマリーゴールドを黙らせる。

あまり動揺をしている様子はない様であった。


「ええ、ですが、メハジキさんが死んだら、教会は、アオケシたちが、混乱に乗じて同僚を殺したと報告させていただきます」

「そう……で、要求は?」

「うーん、私の安全が保障されるまでは、文字通り命を懸けて私を守りなさい」


命令的な話し方にマリーゴールドは激怒しそうになるが、アオケシの言う事は絶対マリーゴールドは、何も言わずにしゃべらなかった。


「分かった。ただ、任務達成までは、メハジキの安全を保障して頂戴。これが、今私が暴れない条件」

「おほほ、良いでしょう。『落果の知識狂人』に暴れられたら、私だって大変ですので」


アオケシの表情は、変わらない。いつものようにマイペース、怒ることもない知識以外に興味のない狂人、カネノムシーンは、彼女が知識の狂人だからこそこの条件を飲むと知っていた。


「……」


だがマリーゴールドは違った。

恐怖、怒り。アオケシは、顔に出さないだけで、その動きは、そんな感情が漏れ出すようであり、今余計なことをしゃべれば殺される。

冷や汗を隠しマリーゴールドは平静を保った。


「じゃあ、約束は守りなさい……ごちそうさま。マリー行くわよ」

「は、はい」

「ほほ、そうですか……では契約成立、頼みましたよ」


アオケシは、マリーゴールドを降ろし立ち上がると部屋を出ていき、マリーゴールドは、その後を追っていったのであった。


「侮れませんね」


アオケシの食べ残した食べ物は、毒の入った物だけが残り、それを見て、カネノムシーンは、どうにか安全圏に置いた自分の駒を見てつぶやいた。

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