10.『不死×無限』
「『簒奪使用』無限! マシンガン!」
「おっと!」
マリーゴールドは、宙に浮いた状態でマシンガンを取り出し、アオケシに乱発を始める。
アオケシは、数発の弾丸を受けながら割れたポッドの中に隠れる。
「……さんだつしよう。奪って、使うか。うーん厄介というか」
アオケシは、無限に降り注ぐ銃弾の雨から隠れてつぶやくが、自分の腕を見て、今までの不死とは明確に違う現象が起きていた。
「……うーん、今の銃弾で3回は死んだけど、あれ私もしかして」
「あーははは! 口だけで隠れてばっかりじゃないですか! 正々堂々戦いましょう!」
「……」
アオケシは、気になったら実証あるのみ。そして知識に蓄える。
それは自分がどんな苦痛になろうとも、死のうと同じであった。
「あーもう……ぶ……分かったって……ぎゃ! せいせいどうど……! 戦いますよお!」
「あーはは! 浮遊バグからの一方的な惨殺……さいこぉ……ですわぁ」
「ああ! 喋ってるときに殺さないでよ!」
アオケシは、不用心に割れたポッドの中から出てくると何度もマリーゴールドに銃で打ち抜かれ、喋っている間に3回は死んでいたが即時に生き返り、研究所の中を走り出す。
マリーゴールドもそれを追い、なくならない銃弾でアオケシを撃ち続ける。
そして、その弾丸は、キメラと戦っているメハジキもかすめていく。
「あ、おま! ふざけんな! 停止! 肉体!」
「ごっめーん!」
軽快に謝るアオケシであったがその右手には自分の二倍はある大きさにも上る一つ目の巨人軽々と引きづり、思いっきりマリーゴールドに投げつける。
「な! 人間が、そんな力強い……きゃあ! 『収集』ふう……あぶな……え?」
「ストラーイク。落果で投げ技は重要ってこういう事だよね」
巨人を収集したマリーゴールドの額をアオケシの投げた手斧が割っていて、マリーゴールドは、一瞬の絶命。
空中から落ち、鈍い音を立てて全身が砕けた。
『お母さん! 見て! ゲームの大会で優勝したの!』
『あらすごい! 琴子! 好きなことを頑張れる女の子は言い子に育つわよ!』
『うん!』
アオケシの中に流れる記憶は、異世界……日本にいた頃のマリーゴールド。
琴子という黒髪の快活な少女の笑顔と、それを喜ぶ理想的な親子の光景。
「あは! やっぱり、本当の生き物を殺すと流れるこの記憶の感覚……最高! あば! ……痛いな……なんで生きているの? ……たぶん、メハジキと同じ魔法よね。無限……なるほど、それより不意打ちはひどいんじゃない」
「お、お前! 私から何を奪った!」
この異世界に来て初めての死に動揺したマリーゴールド。
大切な何かが欠けたことに動揺し、宙に浮くのも忘れ、マシンガンを向け、アオケシに乱射するマリーゴールド。
「あら転生者なのだから、死ぬのは初めてじゃないでしょうに!」
「きゃうん!」
アオケシは、顔が人になっているライオネルベアーの子どもの足を掴み勢いよくマリーゴールドに投げつける。
子どものライオネルベアーとは言え大きさは3メートルの巨体。
車のように思い熊を軽々と飛ばすアオケシにマリーゴールドは動揺して、『収集』ではなく避けることを選択した。
「あ、アナタ! 何! 私を殺したら、私は生き返る……なのに何かが抜け落ちて! それに貴女、不死以外は普通の人間でしょう! なにその腕力! ゴリラかよ!」
「あーはは、私は普通の不死じゃないみたいでね! 殺した生き物の記憶を自分のものにできるみたい! それと気が付いたんだけど! 私、死ぬたびに強くなっているみたいなの!」
「はあ、なんだよそのチート……きゃあ!」
そう言い何匹もの巨体キメラをマリーゴールドに投げ飛ばすアオケシ。
アオケシの不死。
不死、死なない、体は、何度も復活する。
その際にアオケシの筋繊維などは、次は壊れないように以前より繊維を太くし復活する。
それは、死ぬたびに体の力が物理的に強くなる。
さらに、また人は、自分の体を守るために、脳に身体利用のリミッターをかけるが、不死になった瞬間そのリミッターは外れ、もはやアオケシの身体能力は、人外の域に達していた。
「やめ! もう死にたくな……」
マリーゴールドは、大きな魔物や物質が銃弾の様な速度飛んでくるのを必死にかわしていたが、その刹那アオケシへの意識が途切れた瞬間。
アオケシは鉄パイプに持ち替え、全力でマリーゴールドを殴り飛ばし、マリーゴールドの頭は、砲弾を食らったように吹き飛んだ。
そして、アオケシの中に記憶が入ってくる。
『優勝は……ことこ選手だー!』
『みんなありがとう! ありがとう!』
FPSゲームの大会で優勝したマリーゴールドは歓声を浴びるが内心はドキドキしていた。
どうしても負けられない大会、事前に、世界大会のサーバーをハッキングして、自分に有利なアイテムのポップをするチートコードなどを入れており、それがバレずに済んだ。
そのやってはいけないドキドキと勝利の愉悦はマリーゴールドをおかしくした。
「あー、いいわ! なんて最高な本なの! このズルがバレないかのドキドキ、そして、バレずに称えられる感情! あーたまんない!」
「痛い! 痛い! 痛い! やだ、返してください! それは私で!」
「えー、嫌よ。だってこの知識はもう私のだもの!」
無限の魔法により、疑似的な不死を得たマリーゴールド。
不死同士の戦い、それは精神の削りあい。
何度も相手を殺し心を折り、くじけさせる。初めての経験にマリーゴールドは半狂乱になり、マシンガンを乱射するが、アオケシは死にながらも、一歩一歩マリーゴールドに歩み寄る。
「ああははは……ぶへ……あーははははははは……ぎゃ……あはははははは」
「なんで、なんで、死んでもなにも動揺もしないの。痛くないの? なんでなんでなんで」
不死。
それは死なないだけで確実に苦痛は、ある。
アオケシも痛みを感じるがそれ以上に目の前にある知識への渇望、識欲が上回った。
マリーゴルドには、目の前にいるアオケシが、破壊不可能な敵、抗うことのできない恐怖の擬人化が近づき、マリーゴールドは逃げるように無限の魔法で空を飛び逃げようとする。
「来るな! 来るな! 来るな!」
そして、銃を乱射するが、アオケシは何度も死にながら、キメラの死体を持ち上げる。
死ぬたびに強くなる魔女。
変革にして、不変。その理不尽を頭で理解してもそれを否定したいマリーゴールドは、銃を乱射する。
「あはははは! バイバイ!」
キメラを投げつけ、その上に乗りマリーゴールドに急接近するアオケシ。
マリーゴールドは、それを収集せずまともにキメラが直撃し落下。
キメラの上でアオケシは、マリーゴールドの記憶を啜る。
『プロゲーマーことこ、チートにより追放』
数年前のネットニュースが映り続ける古くなったパソコン。家で引きこもるマリーゴールドもその記事を観ながら、イライラした。
『琴子……お母さんは、琴子の味方だから、お部屋から』
『うるさいなあ! 今、ゲームの練習中って言っているじゃん!』
ゴキブリや害虫がそこら中に沸き、ゴミにまみれた部屋でマリーゴールドは、扉越しの母親に切れるという記憶。
アオケシは、その醜悪な姿に全身がビクンと反応し疼いてしまう。
「あは、最高に気持ちいい……あん!」
「こんの化け物があぁぁぁぁぁ!」
復活したマリーゴールドは、キメラの下から這い上がりアオケシの足を掴む。
「あ、マリー?」
「『収集』」
マリーゴールドは勝利を確信した。
キメラを収集しなかったのは、同時に収集できる限度が一つであったたため。
アオケシもそれに気づいており、キメラや廃材をマリーゴールドに収集させてから殺していたが、彼女の弱点。
それは、読書への集中力があまりにも高いことであった。
そして、アオケシにとっては、生きた相手を殺すことも読書の一環。
そこの隙をマリーゴールドは、この戦いで気が付き、アオケシに収集を行おうとした。
「あ、ああああ!」
「あーははは! これで……これで全部取り返せる。あなたの負けよ! 『不死』の魔女! アナタも大切に私が使って……」
マリーゴールドの手に引きずられるようにアオケシは体が収縮していった。
『記録により、メハジキの行動を強制する。停止……』
「な! 急に体が!」
その刹那、メハジキは、キメラの処理をしていたら、急に停止のページで、自分以外のすべての時間が止まり動揺する。
本来自分が使うことができないはずの魔導書クロノワールの全力。
機械的なクロノワールの音声と共に止まった世界で、メハジキは動揺してクロノワールに声を荒げて訴える。
「お前! ふざけんな! こんな大幅な停止! 代償がどんだけになるんだよ! 最悪、時間が動き出した瞬間、俺が死んじまうぞ!」
「ぎゃははは、安心しろ。こりゃ、アオケシの姉さんが記録した条項、大証はアオケシの姉さんだ!」
「記録って……あの時の。内容はなんだ!」
アオケシが、この洋館に入った時に、クロノワールに自分とメハジキの記録に一つ新しい記録を追加していた。
メハジキは、慌てて聞くと、止まった世界でクロノワールは、笑いながら答える。
「ぎゃははは! 内容はな、『アオケシがマリーゴールドの『収集』により、生命の危険が生じた際、メハジキはクロノワールを使い全力で収集される前に、アオケシを、両断し殺すこと。その際の代償は、アオケシが負うものとする』アオケシの姉さんは最初からこの展開を読んでいたってことだな!」
「アイツは何て自分勝手な!」
本来停止のページは、止める物の大きさにより払う代償が変わる魔法。
身体の一部であれば、寿命数秒。だが、ここまで大規模な時間停止は、明らかに死を代償にした規模の魔法。
メハジキもこれを使うくらいなら、アオケシを見捨てようとしていたが、記録の契約により、その死は、アオケシが代価を払うことで成立する。
「そう言う事! メハジキ、お前も記録に従い、責任もってアオケシの姉さんを殺すまで、止まった時間は動き出さねえよ」
「アイツは本当にどこまでも……」
もちろん記録を無視して逃げる手もメハジキにはあったが、逃げたしても記録により、アオケシを殺すまで時間は動かず永遠の孤独を味わうことになる。
メハジキは、アオケシに行動を強制されていた。
「アイツマジで……あとで絶対ぶっ殺してやる」
そう言い、メハジキは、吸収されそうになっていたアオケシの上半身と首を手套で切り落とした。そして、記録事項は遂行され時間は動き出した。




