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喰らう

 ゼ=アウルクにしか扱う事の出来ない暗黒魔法・・・・は、五大属性ーー火・風・水・土・雷、そのどれにも属さない。


 唯一無二であり、この世界(アトラス)に愛された者の一人である事の証明だった。


「安心しろ。お主らの魂は世界樹(セフィロト)により循環し、再び生を成すじゃろて」


 不穏を感じ、ニヒルを餌として見ていた時の獰猛さを忘れた魔獣達は淀んだ瞳に恐れを宿す。


 それはまさに、ゼ=アウルクがこの空間を掌握した瞬間だった。魔王の限られた再誕は今、静かに成就する。


「では、終わらすとしよう」


 片手を天に翳し、言葉を紡ぐ。


「ハワ・アドラシオン」


 ニヒルが授かった聖女の固有スキル・無詠唱が本来三十文字以上は必要とするゼ=アウルクの魔法詠唱の省略を可能とし、一秒足らずで魔法は発動。


 最初から出来ると確信していた訳ではない。ただ、もしかしたら。そんな軽い気持ちで無詠唱を試みた。


 唱えてから数秒。辺りには見慣れた異変が起こり始める。ゼ=アウルクの魔法に呼応したのは、後退した魔獣でもなければ、ニヒルの体でもない。


 ハワ・アドラシオンの呼び声に応えたのは、辺りに散らばる死屍累々。その骸から滲み出る黒い魔力が翳した手に収束し、やがてゼ=アウルクの糧となってゆく。


「こんなもので充分じゃろ。さて、有言実行と行くかのう」


 以前、ニヒルに遺体を投げつけた赤鬼ーーハイ・オーガに掌を向ける。


 ーー喰らい尽くすがよい。


闇を貪り喰らう竜(ノクス・ドラグシオン)


 辺りに刹那の闇が生まれ、荒々しくも冷ややかな風と共に黒き竜はハイ・オーガを喰らう。

 抵抗すら許されない圧倒的なまでの力、闇を貪り喰らう竜(ノクス・ドラグシオン)に飲み込まれたハイ・オーガは酷く痩せ細った屍と化していた。

 暗黒魔法は他の属性魔法と違い、外傷を与える魔法は殆ど存在しない。暗黒魔法の殆どが与える(・・・)のでは無く奪う(・・)事に突出しているのだ。

 相手の生命力で体力を回復する事も、魔力を補填する事も可能。命が幾万と有る限り、暗黒魔法に果はない。


 ここら一帯に沈黙が生まれたのは、ゼ=アウルクが再びこの地に立って二分程度の出来事。所詮はハイ・オーガ。恐れる相手ではない。


 だが、彼等の生命力はニヒルの体を治癒するには十分過ぎるものだ。黒い魔力に包まれた体は徐々に傷を癒してゆく。


 同時にゼ=アウルクの顕現も限界が近づいてきていた。


「あとはニヒル、うぬしだいじゃ」

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