表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエル味のあめ玉  作者: 大木戸いずみ
75/78

75

 音響のところで横並びに座っていた二人はビクッと体を震わし、驚いた表情で僕の方を振り向く。

 一人のふくよかな男が「な、なに」と声を出す。どうやら音声はオフになっている。

 声的にふくよかな男が西田で、眼鏡をかけたパーマの男が河本だろう。僕は放送室の扉を閉める。

「頼みがあるんだけど……」

「な、んでしょう、か」

 西田は戸惑ったまま、答える。河本の方はまだ状況を上手く把握できていないようだった。放送室から流れている曲は二回目のサビへと入った。

 あと少しで曲が終わる。

「少しだけ放送時間を僕にくれませんか」

 僕はそう言って頭を下げた。沈黙が続く。心臓が壊れてしまうかと思うぐらい緊張している。これで断られたら、どうしよう、と違うプランを頭で練り始める。

「いいよ」

 やっぱり、ダメか…………、え?

 僕は思わず頭を上げる。河本が僕の方を楽しそうに見つめながら「どうぞ、いくらでも使って」と言ってくれた。

 まさか承諾してくれるとは思わず、僕の方が困惑してしまう。

「面白そうだし」

 河本はそう付け足した。西田も目を輝かせながら口を開く。

「大学はそういう青春をしにくる場所でしょ」

「そうそう。それに、最近同じ内容ばっかりでつまらなかったし、刺激を求めていたところだよ」

「やばい内容だったら、こっちでいくらでも放送切れるしさ」

 西田はニコッと誇らしげに笑みを浮かべる。

ラジオ部のパワー凄い。これからはしっかりと放送を聞いておこう。

「恩に着る」

「おう。それで、用途は?」

 河本は興味津々に僕にそう聞いた。

「……最愛の人へ送るラブレター」

「ダサくて最高だ」

 河本はニカッと歯を見せて笑った。彼の隣で西田もニヤニヤと「熱いねぇ」と呟く。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ