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カエル味のあめ玉  作者: 大木戸いずみ
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7

「私、これから先、学ぶことをやめることはない気がする」

「うん……?」

 私は彼女の決意に曖昧な返事をしてしまう。私も学ぶことをやめることはない。

 だけど、改めて私に宣言するようなこと?

 彼女は「そうしたらさ」と言葉を紡ぐ。

「まつりに寄り添える?」

 私は馬鹿じゃない。その瞳に友情だけの愛があることは理解出来た。加奈子が私に向けているその感情を知らないふりをする。

「どうなんだろう」

「……もう自分を責めるの、やめたら?」

 加奈子のその言葉が、私の中の何かに触れた。無性に怒りが湧いてくる。

 何も知らないくせに、と。

 私の奥深くに眠っている怪獣がゆっくりと目を覚ます。加奈子には攻撃的になりたくないのに、私は気付けば顔を歪めていた。

「まつりは自分に寄り添ってない。ちゃんと向き合いなよ」

 向き合えば、立ち直れなくなる。……このまま平気なふりをして日常生活を送っている方が楽だ。

 それの何がいけない?

 傷口に貼っている何重にもなっているガムテープを今更剥がすことなどできない。ガムテープで治らないことは分かっているけれど、ずっと応急処置をしたまま生きていく。

「向き合ったら、何か変わるの?」

 私は加奈子を睨んだ。加奈子とは喧嘩したくないのに……。そう思っているのに、自分の感情を上手くコントロールできない。

 この喫茶店で険悪な雰囲気になったのは初めてだ。ほとんど飲みきったクリームソーダも気まずいに違いない。

 加奈子は冷静に淡々と話し始めた。

「人生上手くいっている人なんていないんだよ。道を間違えたって分かっているのなら、違う道をもう一度歩めばいい。修正できないってまつりが勝手に思い込んでるだけ」

 それ以上、喋らないで。

 そんなこと私が一番分かっている。図星だからこそ何も言い返せない。私は自分で自分の首をずっと絞め続けている。

「記憶を消せたらいいのに……」

 私は加奈子の言葉に何も返さず、静かにそう言った。

 加奈子の表情を見ることができなかった。今もなお、現実逃避しようとしている私を軽蔑の目で見られたらと思うと、怖くて俯くことしかできなかった。

 私って、いつからこんなに弱くなってしまったのだろう。

「…………カエル味の飴玉って知ってる?」

 加奈子の声が鮮明に、はっきりと、耳の中で響いた。


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