表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カエル味のあめ玉  作者: 大木戸いずみ
43/78

43

「てめぇ、私、ゴミを出しとけって言ったよな?」

 母は僕のことを「てめぇ」とか「お前」と呼ぶ。「琴」と呼ばれた記憶など、もはやない。

母は家に帰ってきて早々、僕を怒鳴る。僕は「すみません」と小さな声で謝る。謝罪に気持ちは込めていない。ただ、そう言わなければ母の機嫌が更に悪くなるから、そう言っているだけだ。

「ったく、使えねえな」

 舌打ちをしながら、彼女は自室へと向かった。僕は軽く息を吐いて、冷静になる。母の悪態に対応するには体力がいる。

 僕は家のパソコンの電源を入れた。久しぶりに使う。パソコンが起動するまで少し時間がかかる。

 僕はスマホの画面を見る。島崎順子という名前が目に入る。

 付き合ってから、彼女と連絡先を交換した。僕は元々あまり連絡を取らないから、何を話せばいいのか分からない。

 業務連絡みたいにならないように気を付けないと、と思いながらやり取りをしている。

 何してるの、に対して、くつろいでいる、と返す。

 島崎にそう送ったのと同時に、パソコンが立ち上がった。

 僕はキーボードに手を置いて、「カエル味の飴玉」と検索する。

 ……何も出てこない。情報が何一つない。

 僕は別のワードを入れる。「記憶を失くす」と「飴玉」の二つのキーワードを打ち込む。

 検索結果をスクロールして、順番に念入りに確認していく。

 あの時、僕はどうやってカエル味の飴玉を手に入れたのだろう。当時のことを良く思い出してみる。

 飴玉を欲しいと思ったのは………………。


 僕は死のうと思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ