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カエル味のあめ玉  作者: 大木戸いずみ
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「さゆり、ビッグニュース聞きたい?」

 沙知は目を輝かせている。こういう時の彼女の話は大体ゴシップだ。女の子は皆噂が大好き。特に悪い噂はすぐに回ってくる。

 一体どこからそんな情報を仕入れるのかと思うような情報を持っていたりする。

 沙知は、順子に「サークルの友達」と紹介してもらった女の子だ。沙知とは馬が合い、二人で会うぐらいの仲になった。

「昨日、クフ王のピラミッドに新しい空間が発見されたことか沙知のニュースどっちの方がビッグ?」

「まって、それは激アツじゃない? 世紀の大発見じゃん」

「エジプトはロマンが詰まってるからね」

「まぁ、それに勝るぐらい私のもビッグニュースだよ」

「どんとこい」

「私、別れました!」

 勢いよく明るい声でそう言った沙知に私は固まってしまう。彼女はニコッと笑みを浮かべる。

 なんて言えばいいのか分からない。沙知は後藤清一という男に惚れこんでいた。

 それなのに、どうしてこんなに元気なのだろう。

 彼女は肩にかからないぐらい髪を耳にかけて、顔より大きなパフェにスプーンを突っ込む。甘いものが食べたい、と彼女に突然誘われた。

 その意味が分かった。

 彼女の目元をよく見れば、赤い。メイクで上手く隠しているが、涙の痕がある。それに、少しやつれたような気がする。

 私は生クリームを口に運ぶ沙知を見つめながら、後藤清一を思い出す。琴と一緒にいた男だ。

 誰とでも気兼ねなく話せる人、特に悪い印象はなかった。

「私から振ったんだ」

「沙知から?」

「嫉妬するのも疲れちゃったよ~」

「そっか……。とりあえず、沢山糖分摂取しなさい」

「うん、そうする」

  沙知はパフェの上に乗っていたブラウニーを口の中に放り込む。なかなかな速さでパフェを食べている。

 もっとゆっくり食べた方が良い、と言おうと思ったが、やめておいた。しばらく何も食べていなかったのだろう。今は思うままに沢山食べればいい。

「あ~~あ、早く清ちゃんのこと忘れたいよ~~」

「忘れたい、ね」

「……なんかさゆりって時々何考えているか分からない表情するよね」

「そう?」

 私は誤魔化すように微笑む。

「うん、ミステリアス。良い女って感じがする! 私もさゆりになりたい~」

 後藤清一と別れたことで相当荒ぶっている。

 沙知はスプーンを白いアイスの方へと向ける。このアイス、メニューに練乳アイスっと記載されていた。珍しいね、なんて話していたのに、彼女は練乳を堪能することなく、アイスを口の中に放り込む。

「大丈夫、男なんて星の数ほどいるから」

「……そういえば、星で思い出したけど、順子の好きなおひつじ座の星を手の甲に持っている沖原くん」

 琴の名前が出て、ドキッとしてしまう。

 私は「うん」と相槌を打つ。


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