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カエル味のあめ玉  作者: 大木戸いずみ
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 これ以上は聞かないでおこう。ただ、もし飴玉の呪いを解く方法があるのなら知りたい。

 目的なく歩いていると、よく小学生の頃に隠れていた公園に辿り着いた。警察に見つからないようにこの場所の端っこで数時間過ごしていた。そして、明け方に家に帰る。その繰り返し。

 けど、何故か寂しくなかった。小学生の時の嫌な記憶のはずなのに、寂しかったという記憶がない。

「それで、呪いを解く方法は成功した?」

 僕は深夜の誰もいない公園に足を踏み入れる。

 ……ここに来たのは久しぶりだ。

『いや、全く』

「具体的に何したの?」

『カエルのエキスを搾り取った』

「うわ、一匹のカエルが犠牲になったわけか……」

『まず、匂いがやばくて人体に入れていいものじゃない。だから、そのまま捨てたんだよ』

「それをわざわざ入学式に?」

『入学式ぐらいしか会えないから』

 その声はどこか悲しみに覆われていて、清一のいつもの元気がなかった。

 清一も誰かの最愛の人だったのか……。そうなると、沙知は?

「沙知とはうまくやってる?」

 僕は話を変えた。沙知の話も、清一から話さない限り、僕は何も聞かないようにしている。 

『沖原からそんなこと聞くなんて珍しいじゃん』

「なんとなく」

『沙知はね~~、いい子だよ。俺には勿体ないぐらい』

 清一は自分の恋愛を他人事のように話す。

『俺のことより、島崎とはどうなった?』

「どうなったもなにも、あれきり。連絡先知らないし」

『は?』

 また携帯電話を耳から離す。

 清一の大きな声に思わず顔を顰めてしまった。

『なんで連絡先交換してねえんだよ』

 なんで、と言われても、あの時に交換する余地などなかった。唐突に告白されて、そのまま彼女たちは去っていたのだから。

『俺が教えてやろうか?』

「いや、大丈夫」

『なんで?』

「いつかまた会った時に自分から聞くよ」

『沖原が自ら連絡を聞きにいくとは思えないけど』

「携帯電話で連絡をとることが全てじゃないし……。簡単に関係が繋がったり、切れてしまう媒体に頼らなくてもいいかなって。特に恋愛に関しては」

『お前は平安時代に生まれたのか?』

 清一の心底呆れた声に僕は「光源氏になれるかな」と返す。

 光源氏ほどのプレイボーイにはなりたくないが、幅広い女性と恋愛するのは少し楽しそうだと思う。

『余裕あるふりしてると、島崎が離れていってしまうぞ』

「今、彼女に離れられたら、それだけの愛だったんだって思うかも」

『お前ってめんどくせ~~~』

 愛に飢えているわけじゃないが、浅い愛は要らない。おとぎ話に出てくるような真実の愛を求めているのかもしれない。

 僕にも白馬の王子様が表れたらいいのに……。いや、白馬のプリンセスか。

 そんなことを口に出そうものなら、気持ち悪がられるだろう。ただ、こんな最悪な日常をぶっ壊してくれるような爆弾がほしかった。

 母から逃れられるような空間がほしかった。……それが、さゆりだった。


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