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弱そうに見えて本当に弱い俺が魔王を倒すまで  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第一章 エピローグ

マルが路地裏から去ったのを見届けてディーナは深いため息をついた。


「私の素性に気づいた様子はないな……」

小さく呟いたディーナの背後に音もなくメイド姿の女性が現れる。


「殿下、素顔を見せても良かったのですか?」

「おい。ここでその呼び方は止めろ」

「失礼しました。ディーナ様」

メイド姿ではあるが、立ち居振る舞いに隙はない。

服の下に暗器が隠れていそうなそんな雰囲気もあった。


「あの男は何者なのでしょうか?」

「別の世界から来た、と本人は言っていた。まあその言葉も今となってはでまかせではなさそうだ」

「別の世界……異世界から来たとでも?」

「初めて出会った時にマルはそう言っていた。実際にアイツはこの世界のことを何も知らなかった」

「ド田舎から出てきたのでは?」

「そんな奴が武器も持たず幻惑の大草原に来るか?少なくとも荷物は多少持っていてもおかしくはない。武器じゃなくともな」

「確かに……」

「それより何か用があったのだろう?わざわざ私の前に現れたということは」

メイドはディーナの言葉を受けて懐から一枚の手紙を取り出した。


「これは?」

「あの方から預かったものです」

あの方と聞いてディーナはピタリと動きを止める。


手紙を受け取るとその場で読む。

最後まで読むとディーナはその手紙をその場で燃やした。


「何が書かれていたのですか?」

ディーナの態度は明らかに怒気を含んでいた。

あまり見ない姿にメイドは問いかける。


「……魔王が復活したそうだ」

「そんな……魔王の復活はまだ十年先と言われていたのでは」

「何があったかは知らんがここ最近の魔族の動きといい、魔王が復活しているかもしれないとは考えていた。兄上からすぐに戻るように、とのことだ。このまま城に戻る」

「畏まりました。馬車は裏に用意しておりますので中で着替えて頂ければと思います」

魔王の復活、という信じ難い内容に仮面の下のディーナは渋い表情だ。

もう冒険者の真似事はほとんどできないと言っていいだろう。


「欲を言えばもう少しマルと冒険したかったが……仕方あるまい」

「なにか言われましたか?」

「いや、気にするな。それよりもお前のその姿、誰にも見られていないだろうな」

「ご安心を。影に潜むのは得意ですから」

メイドがカーテシーをすると、馬車まで先導する。

真っ白なドレスを身に纏っている彼女こそ、ディーナの専属侍従兼護衛だ。

服の下にはいくつもの暗器が隠れている。

ディーナのような手練れでなければ、初見でメイドの攻撃を躱すことはできないほどに身体能力が高い。


しかしそんなメイドの素性を知っているのはごく一部の者のみ。


「こちらへどうぞ」

馬車の扉が開くと周りを確認してディーナは乗り込んだ。

貴族の紋章すらもついていない適当に見繕った馬車だ。

ディーナの素性がバレないようにと細心の注意が払われている。




王都まで数日。

人目につかない道中で王家の紋があしらわれた馬車に乗り換えるとそのまま王都へと進む。


城の警護を担う者達にとっては見慣れた光景だ。

王族の誰かが乗っているのは即座に理解できる王家専用の馬車。

白と金の装飾、馬に装着されている鎧はオリハルコンを使った最高級の物。



馬車の中で着替えを終えたディーナは、降りたその足で謁見の間へと急いだ。


扉を守る衛兵がディーナの姿を見ると、そっと開く。



赤い絨毯の上を真っ直ぐ歩き玉座から数十歩ほど離れた場所で、片膝を突いた。


「クリステル・リア・ディーナ、ただいま帰還致しました」

灰色のドレスを身に纏ったディーナの姿は恐ろしく美しい。

衛兵など見惚れてしまうほどに。


「待っていたぞディーナよ。また冒険者の真似事をしていたか?」

「父上、何の話か分かりませんが」

「フッ。まあよい。もうじきアヤツも来る。おお、噂すればだな」

玉座に腰掛ける国王が先ほどディーナが入ってきた扉へと目を向けると、真っ直ぐ歩いてきた男がディーナの真横で片膝を突いた。


「クリステル・リア・レオニス、ただいま参上致しました」

金髪で整った顔立ち。

第二王子の人気は言わずもがな。

年齢はディーナより三つ上だが、年下に見えるほど童顔な男である。


「うむ。ディーナ、話は聞いているな?」

「はい。兄上から手紙を頂きましたので。魔王が復活したと」

「我が国だけではなく、バルト共和国でも魔族が確認された。まもなく魔族が人類に牙を剥くだろう」

「何か手は打っておられるのですか?」

「いや。お前たちを呼んだのはその為だ」

国王は二人に魔王への対策を練らせようと考えていた。

これから国の未来を担っていく子供達に任せ、最善の策を打ち出し見事魔王打倒に多大な貢献をした者に王の責務を継がせるつもりであった。


「他の兄妹が来ておりませんが」

「お前たち、余に言わせるつもりか?……他の二人には王を継がせるつもりなどない」

「なぜですか?兄さんであれば僕よりも優秀です」

ディーナは無言を貫いていたがレオニスが待ったをかけた。

第一王子であるクリステル・リア・ロイドは自他共に認める天才である。

何を学んでもすぐに習得し、何をやらせても卒なくこなす。

努力などした事もなく生まれ持った才能だけで生きてきた。

唯一の欠点は他者の苦しみが理解できない事だった。


できない者、努力しても結果に表れない者がロイドにとっては意味がわからない存在なのだ。


「ロイドが優秀なのは余も理解しておる。だからこそだ。アイツは優秀すぎるのだ。……王は他者の痛みが分かる者でなければ務まらん」

「確かに兄さんは少し歪かもしれませんが、魔王が相手となれば国を挙げて立ち向かう脅威です。知略に優れた兄さんなら凡人の思いつかない突飛な考えが出てくるかもしれません」

「レオニス、お前が兄を慕っているのはよく知っておる。これはお前のためでもあるのだ。いいかげん他者に頼ろうとするのをやめよ」


レオニスの欠点は自己評価が低いことにある。

ロイドほどではないとはいえ、同じ血が流れているのだから十分優秀といえる。

しかし、レオニスは自分などまだまだ凡才に過ぎないなどと過小評価が酷いのだ。


「魔王打倒の為の策、兄上の方が確実な勝利をもたらすかと思いますが」

ディーナはそんな二人に口を挟んだ。


「兄上、ロイドは確かに天才です。ですがアイツの策はいつも犠牲を厭わないものばかり。魔王などという脅威を前にしてアイツがまともな策を練るとは思えません」

ディーナはロイドの事を呼び捨てにする。

レオニスに対しては兄上と呼ぶのにも関わらずだ。


理由は簡単だ。

ディーナはロイドが嫌いなのである。


ロイドならば魔王を倒す為に大多数を犠牲にするだろう。

ディーナはそんな事が許されるわけがないと憤っていた。


「ディーナ、兄さんは文武両道だよ。前に一度、戦争を模した戦いをやった事があるけど戦略においても僕は勝てたことがない。だから今回兄さんにも頼った方が――」

「兄上。私からみれば貴方こそ優れた王子です。そう卑下する必要はありません。それとも競いますか?私と兄上が手を組み、ロイドに勝てるかどうか」

ディーナの思いつきの提案が国王を刺激した。


ロイドに王位は譲りたくないとは言いつつも彼は第一王子。

当然ながら王位継承権を持っている。

適当な理由をつけて落としたい所だが、そう簡単ではない。

しかし、ディーナが言ったように競ったのちに負ければロイドも納得するだろう。


「ふむ。良いぞディーナ。その案を採用しよう。魔王を討伐した者に王位を譲る。これならばロイドも納得して王位継承権を捨てざるを得ない。ディーナとレオニス、お前たちには期待しているぞ」

「父上!本気ですか?万が一、いえ我々が負ければロイドが次代の王となるのですよ?」

「受け入れよう。余が期待するお前たちが負けるのならばロイドに国の未来を託すしかあるまい」

思いつきだったのに、とは言えずにディーナは口を噤む。


「魔王の討伐は人類の悲願。今度は封印ではなく完全に消滅させるのだ。ディーナにレオニス、それとここにはおらんがロイド、魔王を倒した陣営には王位を継がせる。これは王命である!」


ディーナの放った、たった一つの言葉で負けられない戦いが始まってしまった。

ようやく第一章が終わりました♪\(^ω^\)

次の章は少しばかり書き溜めしてから投稿するか、今まで通り都度投稿するかは未定ですが、まだまだヨワマルの冒険は続きますので、引き続きよろしくお願いします\(゜ー゜\)


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