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弱そうに見えて本当に弱い俺が魔王を倒すまで  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第36話 美しいものにはトゲがある!

「マルさん、ご無事で良かったです」

「お、リザリスさん。だから大丈夫だって言ったろ?」

「……どうやって魔物のリーダーを倒したんですか?」

まあみんな気になるよな。


「成り行きってやつかな?」

「な、成り行きですか……」

納得できていない表情を浮かべるリザリスさんだったが、これ以上何を言えばいいか分からなかったから許してくれ。


「その……マルさんに情報を教えたのは間違いだったかもしれないと後悔していたんです」

「ああ、俺が弱いからだろ?」

言いにくそうにしているが、そういうことだろう。

この街でも特段弱い俺が突然魔物のリーダーを倒してくるとか言い捨ててその場を去ったら自殺志願者かと思うよな。


「なので……本当に無事で良かったです……」

「言ったろ?俺は絶対死なないさ。少なくともそうだな……チートを使えるようになるまでは」

「ちーと?その、ちーととはなんでしょうか?」

おっと、口が滑った。

この世界の人にチートだなんて言っても分かるわけがない。


「あー気にしなくていい。言葉の綾ってやつだ。そうだな、少なくともこの世界で俺が生きていた証を作るまでは死ぬつもりはない」

「証を作る、ですか。なかなか難しそうです……」

歴史に残るような偉業を成し遂げたい。

せっかく異世界に来たんだ。

ただただ平和に生きて死んでいくなんてまっぴらごめんだぜ。


というか俺がこの世界に来たのもなにか理由があるはずだ。

ただ神の気まぐれってのもあながち有り得ない話じゃないけど。


宴もそろそろ終盤に近づいてきたからか目につく人の数が少しずつ減っていく。



「マル。ここにいたのか」

隅の方のベンチでチビチビとビールもといエールを飲んでいるとディーナさんが近づいたきた。


「どうも」

「横いいか?」

俺は無言で頷き、ディーナさんがベンチへと腰掛けた。


「魔物の襲撃は今に始まった事ではない。数年おきに起こることだ。ただ、今回の襲撃はあまりに数が多かった」

「魔王が復活したとかそういうのありそうじゃないですか?」

俺がそう言うとディーナさんの顔つきが変わった。気がする。

鉄仮面越しだけどなんとなくそう感じた。


「どうしてそう思った?」

「魔物が活発化するってことは、トップに立つ魔物の王、魔王が指示しているんじゃないかなと」

「ふむ……そうだ。まだこれは外部に漏らすなよ。……魔王は復活している」

おいおい、そんな極秘情報俺に言っていいのか?

完全に部外者だけど俺。


「国からお触れが出るまでは誰にも言うな。憶測程度なら構わないが」

「ディーナさんはなぜそんな情報を持ってるんですか?」

「……秘密だ」

ディーナさんは相変わらず秘密が多い。

本名もいつまで経っても教えてくれないし、顔は見せてくれないし。



今回俺の活躍は目を見張るものがあった。

そしてディーナさんは俺の事を弟子だと言っていた。

ということはだ、何かご褒美があってもいいんじゃないだろうか。


「あのーつかぬことをお聞きしますが」

「なんだ。勿体ぶらずに言え」

「俺って今回めっちゃ頑張りましたよね?ほら、魔族のリーダーを倒して大量の魔物は逃げ帰りました。そのーご褒美の一つくらいあっても良いんじゃないかなぁ、みたいな……」

無駄に早口になってしまった。

ディーナさんの反応を待つこの数秒が滅茶苦茶長く感じる。


「ふむ。なるほど。何が欲しいんだ」

「物ではなく……えっと、そのー」

「なんだ。さっさと言え」

俺が言い淀んでいるとディーナさんは少し苛ついた反応をする。


「顔が見たいなぁ……」

意を決してそう言うとディーナさんは黙った。


それなりに信頼関係は構築できたと思っていたが、やはり顔を見せて欲しいというのは突っ込みすぎたか。

そう思っているとディーナさんが小さくボソッと呟いた。



「……そんなに見たいのか」

「まあそりゃあ見たいですよ。透き通った声ですし綺麗な人なんだろうなと想像する毎日です」

なんかキモいなこの言い方。

言葉選びを間違えた気がする。


「……ご褒美で顔が見たい、と」

「おっしゃる通りです」

「ふむ……」

ディーナさんはまた少し黙り込む。


しばらくするとため息を一つついて立ち上がった。


「来い。ここでは誰かに見られてしまう」

「え!いいんですか!」

「声がでかいぞ。いいから黙ってついてこい」

いちいち台詞がカッコいい。


俺にとってディーナさんは憧れの人だ。

声も綺麗し実力も申し分ない。

冒険者としての格も違う。

誰からも羨望の眼差しを送られる。


俺もいつかそうなれたらなって思う。


ディーナさんに連れられ、薄暗い路地裏へと足を運ぶと人気がないのを確認し更に奥へと進む。


裏道とかって怖いイメージがあるから俺は一切足を踏み入れた事のない場所だ。



「ここならいいか……」

ディーナさんが立ち止まると俺の足も止まる。

いよいよ素顔が見られるのか?

そう思うと俺の心臓が跳ねた。


この世界に来て最初に出会って助けてくれたディーナさんの素顔を遂に拝める。

心臓が高鳴るのは仕方ないだろう。


絶対美人なのは分かってる。

だから余計に緊張するってものだ。



「少しだけだぞ。誰にも言うなよ?」

「もちろんです。誰にも言いません」

声を落として言葉を交わす。


ディーナさんは両手を鉄仮面を添えるとゆっくり持ち上げていく。


顎から口元、そして鼻。

徐々にディーナさんの素顔が露わになるにつれて俺の鼓動は早くなっていった。


なんだか悪いことをしているようだが、別に何も悪い事なんてない。

ただ素顔を見せてもらうだけ。


噂によると超絶美人ですり寄ってくる男が鬱陶しいから、なんて言われていたけど多分それだけの理由ではない気がする。

そういえばこんな噂もあった。


どこかの王族、なんてものだ。

流石に王族が冒険者の真似事なんてしないはずだ。

というよりさせてもらえないだろう。


冒険者なんて死と隣り合わせの世界だ。

王族のような高貴な血筋の人間をいつ死ぬかも分からない冒険者などさせるわけがない。


確実に誰かが止める。

少なくとも俺なら止めるぞ。



鉄仮面が目元まで持ち上げられると俺の心臓は高速で跳ねていた。


「ふう……」

鉄仮面を脱いだディーナさんは、とんでもなく美人だった。


透き通るような金色の髪。

風に揺られて靡く姿はまるで絵画を見ているようだ。


キリッとした眉に吸い込まれそうな瞳。

整った顔立ちというのはまさにディーナさんのような人のことを言うのだろう。



「な、なんだ……せめて感想くらい言ったらどうだ」

俺が黙り込んでいるとディーナさんは戸惑った表情を浮かべた。


あまりの美しさに言葉を失っていたというのは内緒だ。


「やっぱり美人じゃないですか。そんなに美しいのに隠すなんて勿体ないですよ」

「む……面と向かって言われると恥ずかしいな……」

若干照れて頬が朱に染まる、そんなディーナさんもいい。


「モデルさんでもここまで美しい人はいませんよ」

「もでる?というのはなんだ?マルのいた世界で何かの職業か?」

「ああ、分かりませんよね。モデルさんっていうのは俺のいた世界で美しい人だけがなれる仕事です。そんなモデルさんですら霞んでしまいそうな美しさですよ」

「あ、ありがとう。……も、もういいか?誰かに見られると不味い」

「え?もう終わりですか!じゃあ今のうちに目に焼き付けておきます!」

ディーナさんは恥ずかしいからか鉄仮面を被り直そうとしたので、俺は目をかっ開きディーナさんを見つめる。



素早く鉄仮面を被り直したディーナさんはまた一つため息をついた。


「ふう……いいか?絶対に……絶対に誰にも言うんじゃないぞ」

「言うというのは?超絶美人ってことをですか?」

「ん?……あ、そうか。マルはこの世界の人間ではなかったな」

どういう意味だろう?

美人なのがバレたら厄介事に巻き込まれるからじゃないのかな。


「いや、気にしなくていい。とにかく私の顔を見たというのは内緒にしといてくれ」

「もちろんです。俺だけの特権ですね」

「まあ……そういうことでいい。……そうか、マルには見せても問題はなかったな。忘れていた……」

なんだなんだ。

俺に見せても問題なかったって。


「どういう意味ですか?」

「気にするな。それよりさっさと戻れ。お前も一応今回の戦いにおいては立役者だろう?」

「なんか俺を遠ざけようとしてません?も、もしかして!素顔を見せたから恥ずかしいとか」

「いいからさっさと行け!」

ディーナさんにケツを蹴られ俺は数メートル吹っ飛んだ。


「いてぇ!もっと力加減気を付けてくださいよ!俺弱いんですから!」

「す、すまない……」

自分で言ってて悲しくなるだろ。



まあディーナさんの素顔も見られたし、気分はいいから許す。


俺はそのまま路地裏を出てみんなが集まっているところへと戻った。


いやぁそれにしても美しかったなぁ。

その後飲み食いしていたが、いつまでもディーナさんの素顔が忘れられなかった。

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